夏の思い出。
七瀬モカᕱ⑅ᕱ
楽しみなこと
毎年ホタルの季節になると、なんだか懐かしい気持ちになる。
「あれは.....本当に夢だったのかな.....。」
✱✱✱
これは私が小学生くらいの時に体験した話。
夏休みも残り一週間、私は両親と一緒に祖母の家へ帰省していた。
祖母の家は、私たちの住む家からかなり距離の離れた田舎町だ。
田舎町と言うだけあって昼間の人通りもまばらで夜なんかは
外を歩いていても人に会うことはほとんどない。
『あおい〜、テレビばっかり見てないでこっち手伝ってよ〜』
祖母の家に来ると、日頃一人暮らしの祖母が大変だからと家事の大半を母が手伝っている。
母だけでは手が足りない時は私も呼ばれたりするけれど、せっかくの休みなんだからゆっくりしたいとテレビのある部屋からほとんど動かずにいた。
『これ終わらなかったら夜にホタル見に行けないんだけど〜?いいの?』
『え?やだっ!』
祖母の家に遊びに来て一番楽しみにしていること、それはホタルを見に行くこと。ホタルというワードだけでスイッチが入るんだから子どもって本当に単純だななんて思う。まぁ、全部自分のことなんだけど。
それから私は母と家事を分担して大急ぎで終わらせた。
母にも、驚かれるような速さだったらしい、それくらい当時の私にとってホタルは特別な存在だった。
『ねぇお母さん、まだかなぁ』
なんて聞くと、母はいつも苦笑いして窓の外を指さしながら、まだだと言う。こんなやり取りを毎年していた。
✱✱✱
あたりの日がすっかり落ちた午後八時、私達はホタルを見るために近くの河原へ出発した。
この町の夜はとても静かだ、時々私達のようにホタルを見るために河原へ向かう人に会うくらいで、それ以外はほど人に会うことがなくただただカエルの鳴き声が聞こえるだけだった。
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