第16話 お昼ご飯。
新学期初日の朝は一悶着あったけど、午前中は平和だった。そして今はお昼ご飯。
いつもは男子数人で食べていた。昼休みになると美希さんから『一緒に食べよ』と言われた。
するといつも一緒に食べている野郎どもが逃げ出した。まぁ、うん。遠慮してくれた。
そしてもう一人、凛子さんも一緒に食べる事に。自分から近寄ってきて『私も一緒に食べる〜』と。
教室の周りにいる生徒の視線が痛い。特に男子。羨望と嫉妬が入り混じっている。
皆の視線を感じながら食べるのはツライけど外は暑い。今いる教室はエアコンが効いて涼しい。
俺は……教室を選択した。美希さんと凛子さんは隣同士の席。なので二人の机をくっつけて三人で弁当を机に広げた。
「そう言えば美希ちゃんはお昼の時いつも教室にいなかったよね? 何処で食べていたの?」
凛子さんが美希さんに聞いた。確かに美希さんはいつも教室にいなかった。
「お昼休みは水道水飲んで図書館で時間を潰してたよ」
「ん? お昼ご飯は食べてなかったの?」
図書館は飲食禁止。学校の規則だ。
「うん。入学してから学校でお昼は食べた事ないよ。節約だね。あ、でも朝と夜は食べてたよ。たまに一日一食の時もあったけどね」
あっ、そっか。でも節約ってレベルじゃない。一日二食、たまに一食……だから痩せているのか。
「……ううっ、ごめん。私、無神経だった」
凛子さんは切ない顔になり美希さんに謝った。それを見て顔を左右にふり、美希さんは微笑む。
「ふふ、凛子ちゃんは優しいね。気にしなくていいよ」
「はうぅぅ。美希ちゃんはええ子や。素敵すぎりゅ。お姉ちゃんのオカズのお肉あげる。はい、あ〜ん」
そう言って自分お弁当箱からステーキらしき牛肉を美希さんに食べさせようとする凛子さん。それをパクリと食べる美希さん。
「モグモグ……。美味しい。ありがと。じゃあ私からも、はい、あ〜ん」
美希さんは卵焼きを自分の弁当箱から取り凛子さんに食べさせている。幸せそうな凛子さん。なんなの? 羨ましいのですが。俺にもして欲しいのですが。
「一護君は我慢してね。みんなの前では恥ずかしいからね」
美希さんが俺を見て言った。やばっ。顔に出ていたか。
「べべっ、別に『あーん』してもらいたい訳じゃないんだからな」
「一護……ちょっぴり気持ち悪い」
「へっ?」
凛子さんが俺を見てボソッと呟いた。美希さんはクスクスと笑っている。
それからは雑談をしながらそれぞれ自分の弁当を食べた。なかなか楽しい時間だった。
明日も明後日もこれからは三人で食べる事になった。周りの生徒の視線が気になるけど……まっ、すぐに慣れるか。
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