拝啓、季夏の候。

九川 無量

本文

……はい、冒頭はこんなもんでしょ、ネットで調べたけどいいよね?さーて,なんか書くといって見切り発車でやってみたものの,どーも書くことが浮かばない。ていうか,何書けばいいんだろうな,とりあえずなんか書いてみようとは思ってるんだけど。私のことを書けばいいの?そんなー,特に何もないと思うけどね。



じゃ,せっかくだしこれからやることのきっかけとかここに書いておくか。万が一他の人の参考になれるのならまあそれは良いことじゃないかな?



にしても、世界ってビー玉が飛び交っているものなんだね。あんまりにも速いもんだから撃ち抜かれないかって心配しちゃうね。まあ生まれてこの方20年以上経って今更心配するのも変な話だけどさ。そんなんでよくみんな生きられるねー。



ってあんま違う話してもしょうがないから、そろそろ本題を書くね。これが閑話休題、ってやつかな?



あれはK駅にあった。ホームに降り立って、普段どおり3号車のあるとこあたりまで歩いてって、電車を待ってる時だったかな。目の前に、明らかに空気に溶けてないものがあったのさ。わたあめ。



いやいや、たとえとかじゃないって。いつ何度見返してもさ,ふわふわ浮かんでるのよ,わたあめ。空気よりも白い,真っ白なわたあめ。それでさ,もこもこしてそうで面白くなってね,なんとか掴もうとするわけ。なんだけど,とったでしょと思って腕をひらくと,わたあめはないんですよ。なんつーか,虚無だね,虚無を手に入れて,身体が真横に運ばれるわけさ。あーむなしいこと。



移動してる最中も、学校にいても、家に帰っても、わたあめが頭の中に染みついてた。いつになっても、K駅にあるんだ。こんなうだるような熱気の中で、わたあめが浮いてるってのも、風流なものじゃない?だからさ、一度でいいからつかんでみたいのよ。



でもいつまで経っても手につかむことはできない。目の前にいく、とこまではできる、でも何回つかもうとしても気がつくとそこにはないわけ。それを何度も繰り返した。さすがに何回もやってると、これはおかしい、と思い始めるわけ。何かが違うだから手に触れられないんだって。



それで、夢で見たんだけどさ。



質量と速度で弾ける金平糖,それがわたあめに必要なものなんだと。気づいた時はもう電撃が走ったね。夢で見たから,これは間違いないって!やったことないけど絶対そうだって,なぜかねテンション上がりっぱなしだった。アドレナリンっていうの?セロトニンかもしれないね、あ、これもスマホで調べたの。いやーそれはぼーっと見てるだけじゃ触らないわけだよね。



それからそれから?まんじゅうみたいでよう覚えてない。もう、それに気付いてからはそれしか頭になかったかな。今こうして手紙書いてるけど、今にも飛び出しそうな感じだよ。止まれっていってもそれは無理だよー。



あーそうそう,書いてて忘れそうになってたわ。これ遺書ね。遺書。忘れたらだめなやつ。これから飛び込むんだよね。わたあめに一直線。すぐ行く。みんなもわたあめが手に入るといいね。



それじゃそろそろこの辺で。



かしこ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

拝啓、季夏の候。 九川 無量 @Rik_memo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ