第784話 報告会

 みなが集まったところで報告をする。一同に会することはなかなか難しくなってきたので、ウィル以外が集まったのは久しぶりであった。もっとも、私が、公に呼び出されて行っていたので仕方がないのだが……



「私からの報告は、南での感染病の件ね。ヨハンのおかげで、病もおさまりつつあるわ!まだしばらくは、続くでしょうけど……近いうちに終息する予定」

「それは、どれくらいですか?」

「私がいたところであと1ヶ月といったところかしら?もっと南となると、もう少しかかるかもしれないから、3ヶ月くらいを見ておきましょう」

「では、それまでは、領地に入るにも規制をかけておいてもいいですか?」

「いいわ!お願いできるかしら?アデルとリリーに」

「任せておいてくれ!」



 頷くと、二人がニッと笑う。私とウィル、ノクトがいない間、他領からの警備について、二人がしっかりと纏めてくれていたらしい。頼もしくなったアデルと、元々できるリリーのコンビはいいのかもしれない。



「あと、アンナ様」

「どうかして?リリー」

「工事の方なんだけど」

「石畳の?どう?進んでいる?」

「だいぶ進んでいます。もうすぐ、この屋敷の街道に繋がるんですよ。北回りの方は、もう少しかかるだろうけど、それでも、予定より早いと思っています」

「ありがとう。下水が流れる地下をわざわざ彫ってもらっているもの、私が考えているより、ずっと早いと思う!あとで、視察に向かいます!」

「ありがとうございます」



 立ち上がって礼をするアデルとリリーに頷いた。



「私からの報告を続けるけど、いいかな?」



 みなが頷いたので、私はジニーとヒーナの話をすることにした。



「病の原因となっていた人物なんだけど、ヨハンの妹でジニーという娘が流行らせていたの。特殊な体のようで、今後はヨハンの監視下に置くことになったわ!最南端での治療がすんだら、ヨハンとともに帰ってくることになっているわ。あの、それでね?」

「迫害や差別がないようにということですか?」

「……そうなの。たくさんの人が苦しんだり、亡くなったりしている。アンバーでもコーコナでも不便をかけていることも知っているけど……このまま放置している方が危ないの。人間兵器と言っても過言ではないわ。管理できるのは、ヨハンだけと判断しました。アンバーで囲うことになるから、心配も多いだろうけど……」

「そこは、噂のたたないようにしましょう。みなもそのつもりで。あと、私たちも監視する側に回ってもかまいませんか?」

「えぇ、多くの人が見てくれている方がいいと思うわ!あと、もう一人、南から連れ帰ってきたわ!」

「背中に聖女がいる女性ですよね?アンナリーゼ様!」

「さすが、ニコライ。情報はどこから?」

「公都から帰ってきたばかりなので。公都では、その話で持ちきりです!」

「そう。それは、よかった!わざと噂が広がるように、ヒーナを連れまわしたの」

「それは、何かお考えがあるのですか?」

「ビルは商人だから、聞いたことないから?インゼロ帝国の戦争請負を生業にしている組織のことを」



 ビルは、どうだったかな?と考え込む。他も考えているようだが、イチアとセバスはさすがにわかったようだ。



「アンナリーゼ様、その者たちが動いているのですか?」

「えぇ、今回は、たまたま幹部候補を捕まえることが出来ました。それが、ヒーナ。処分することも考えましたが、ノクトの提案で、消えないシルシを背中に入れたの」

「それが、今、とても話題になっていますよ!聖女と女王蜂、あとは蜂が何匹かいるって……何か意味があるのですか?」

「ノクトから説明して!」

「あぁ、あれはな……真ん中の聖女は言わずともわかるだろ?あぁ、確か図案があったはず」



 机の上に置かれた図案を見ながら、みなに説明した。自身もその中に入っていることが嬉しいのか、ニコライが、アメジストを撫でると他のアメジストを持つ者たちまで、撫ではじめた。その様子を見て、嬉しい。



「なるほど。それで、インゼロ帝国を裏切ってアンナ様の味方になったって宣伝しているんですね?」

「そういうこと。よく考えたなって感じがするわ!」



 感心したようにノクトの方を見ると、誇らし気にしている。



「そのお嬢さんは、どこにいるのですか?こちらには来ていないのですよね?」

「ヒーナについては、ディルに任せてきたの。こちらでは特に用事がないから、そっちで使ってって。教育も含めてね」

「なるほど……背中のそれがあっても、首輪は必要ですからね?」

「そういうこと。ディルという鈴は、取れないわよ!」



 笑うと、わかっているものたちは笑う。わからない者たちは、お互いを見ていた。公爵家筆頭執事は……いろいろな顔を持っているので、会ったことがあったとしてもなかなか掴みにく人物ではある。



「私からの報告は以上かな?あっ、香水の話は公にしてきたわ。今年の流行りとして、香水を使うって。なかなか反応がよかったけど……これは、始まりの夜会直前で、何かしないといけないかなって思っているところ。ニコライ、お願いしてもいいかしら?」

「それに関しては、私の方も考えていました。香りを売るとなると、アンナリーゼ様が仕掛けた小瓶のセット売りの話も貴族の屋敷を回っているときに少しずつ広げていっています!」

「なかなかね!ものが出来上がるのは来月ね!楽しみにしているわ!」

「お任せください!できれば、売り子に少しだけでもご提供していただけると助かります」

「売るためね!あまりたくさんつけないのであれば、その分は譲るわ!みんなバラバラにつけてちょうだいね!」



 かしこまりましたというニコライに春を楽しみにしていると締めくくる。私からの報告はあと一つあったというところで、少し休憩をしようと声がかかった。

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