第208話 いい具合
翌日になり、仕事がある、ウィルとセバスは公都に帰した。
入れ替わりにデリアとエマ、そしてナタリーの囲っている子たちがこちらにやってきたのである。
まずナタリーにジョーを任せ、デリアにその補佐をしてもらうようにした。
この二人、競うようにジョーの世話をしてくれるのだが、私は、屋敷の方の探りもお願いしたいところである。
エマと女性たちを連れて私は、町に出てお掃除隊と合流する。
セバスの代わりに、連れてきた2人の女性が子供たちを見てくれるようだ。
昨日行った村にも2人の女性を向かわせておく。
これで、カゴバックなどを作る指南役と子供たちに勉強を教える人ができることになった。
こんな形で、2人ずつ、ナタリーのところの女性たちに仕事と私への報告をお願いしておく。
今日は違う村を2つ程、掃除していく予定である。
やはり、テクトやユービス、ビルのおかげで、お掃除隊の話は行き届いているのか、ありがたいことに村総出で、掃除をしていくことになった。
昨日、喜んでもらえたおかげもあって、手本とばかりに、お掃除隊も張り切って掃除をしてくれる。
昨日、おいしいご飯を食べられたことに満足したことと、今日連れてきた女性陣にいいところを見せようとお掃除隊の面々は、昨日よりいい動きをしてくれる。
どうせなら、もっと早くこんな姿を見たかったものだと思うと同時に、私も一応女性なんだけど……と、複雑な気持ちも湧いてくる。
正体を知っているお掃除隊は、私のことを主として見てくれているようだった。
規模も大きくないここの村もあっという間に終わってしまった。
お昼を用意している班から食事の準備ができたという合図とともに村人を囲んで食事を取る。
ここでも町の掃除に手伝いたいと言ってくれる人や私たちとともに掃除に回りたいと志願してくれる人がいた。
ありがたいことなので、厚意は受け取っておくことにし、翌日から手のかかる大きな3つの町のどこかに行ってくれるようお願いする。
あと、この村にも2人の女性が残ることになる。
彼女たちの話をして、もちろんお小遣い稼ぎの話もきちんとしていく。
やはり、昨年のお小遣い稼ぎは好評で、とても女性たちは喜んでくれる。
ただ、男性たちは、自分たちの出番はないと寂しそうだ。
休憩をはさんで、私達はもう1つの村へ向かった。
私が、受け持つ中で一番荒んでいる村である。
メルの住む村だ。
「メルおばさん!」
「あら、アンナちゃん!
この前は、凛々しい男装だったけど、今日はずいぶんと小汚い恰好だね。
お手伝いしてくれるのかい?」
「そう!私もお掃除隊の一員だよ!」
再会を喜んでいると、パルマが後ろから声をかけてくる。
「アンナリーゼ様、家の補修はどうされますか?」
「そうね……
メルおばさん、あの家と、そこの家ともう一つ奥の家って誰か住んでいるの?」
私が指を指した方をメルは確認していく。
「あぁ、あれなら、全部空き家だよ。
もう住んでないから家もボロボロで……」
「修理して使っても問題ないかしら?」
「あぁ、いいとも。
確か、隣の領地へ越していったからもう戻ってこないはずだよ!」
ありがとう!とメルに言うと、パルマに修理の指示をする。
派遣する女性たちが住む家が、この村にはどうしても見つからなかったのだ。
なので、修復してもいいものなら修復をしてそこに住まわせてもらおうと思っていた。
ちょっと大きめの家がいいので、一番奥の家にする。
大きい家なので、修復するところも多いようだ。
でも、人数がいれば、何とかなるだろう。
「大工仕事できる人いる?
あの家、直してほしいんだけど!!」
私が声をかけると7人がお掃除隊からのそのそっと出てくる。
「アンナ様……
おらにさせてくれ!大工仕事なら、大得意なんだ!」
「他の人は?」
「俺たちは、こいつの助手ってことで……」
「そう……パルマ、今日は、この人たちに指示を出してくれる?
あの家を直しましょう!
それと、手前の家も直してくれる?」
「手前の家もですか?」
ここは、結構大きな町から離れていて遠いところだった。
なので、余った家に浴場を作ってしまおうと思ったのだ。
「そこに浴場を作ってほしいの。
あぁー穴は開けちゃだめよ?
バレたら、あなたたち、首撥ねるわよ?」
「アンナ様、最近、首撥ねるが口癖になってますよ……」
「そう?
でも、浴場は、女性も使ってもらいたいもの!
安心してゆっくりお湯につかってほしいのだから、それくらい普通じゃない?」
ニコニコっとお掃除隊の方を見ると、何か企んでいたのだろうか、みんな余所余所しくなった。
「しっかりしてくれないと、困るのよね!
とりあえず、雨風しのげるように仮で大丈夫だから取り掛かって!
じゃないと、今晩、夕飯抜きにするからね!」
「「は……はい……!!」」
これだけ、釘を打っておけば、大丈夫だろうと思うけど……ね?
チラっと見ると、口笛なんて吹いてごまかしているのもいる。
首飛ぶのは怖くないのかしらね……と、なんだか情けなくなってきた。
いつものように村人も手伝ってくれたおかげで、ここも掃除の方は早々に終わる。
あとは、家の補修のみとなった。
お掃除隊も全員そちらに手伝いに向かわせる。
人数がいれば、作業も早く捗っていく。
私もそこに手伝いにいく。
もちろん、お風呂を作るところは、中からも外からも見て大丈夫だと確認する。
お水は、山から引いて沸かすことにした。
そのかまどもちゃんと作って、それっぽくなった。
手の空いてる村の人たちは、浴場用の薪拾いを手伝ってくれる。
子供もできるので、近くの森に取りに行ってくれたのだ。
大きな家もなんとか雨漏りとかしないように設えてくれ、満足のいくような村に変わる。
「アンナちゃん!
村が見違えるほど、変わったよ!!
ありがとう……ありがとう……!!
「メルおばさん!喜んでもらえてよかったわ!
そうそう、メルおばさんが言ってたカゴバックの手仕事の話ね!
あの修復した家で、夜教えることにしたから、時間があったらぜひ行ってみて!
皆さんも行ってみてね!
もっと高度なものが作れるようになると思うし、他にもいろいろと手仕事考えて
いるから、得意なのをしてくれればいいから!」
私は、手仕事の案内をする。
ちょうど、夕方にかかり日も暮れてくる。
今日は、ここでみんな泊る予定だ。
そのため、食べ物も多く持ってきている。
その晩は、この村で、楽しくすごした。
地べたに座り、作ってもらった夕食を食べる。
みんな、今日も、たくさん仕事をして疲れているはずだ。
お掃除隊の面々は、村の人たちと一緒に焚火を囲み、踊ったりおしゃべりしたりと楽しい夜を過ごすのであった。
私ももちろん楽しくすごした。
急遽作ってもらった浴場でゆっくりしたおかげで疲れも和らいだきがしたのであった。
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