第152話 帰還
インゼロ帝国との国境での小競り合いは、数ヶ月続いていたらしい。
が、ある1人の若い文官によって終息されたと情報をもらったのは、つい最近のことだった。
私は、ウィルが遠征から帰ってきたら、連絡をもらうようにウィルの従属のエリックにお願いしていたところ、今日、帰還したと連絡があった。
ジョージアによるとその若い文官とウィルは、公により早期解決に尽力したことで表彰されると聞いている。
なので、なんやかんやの式典があるので、1週間後までは、忙しいと教えてもらった。
ウィルにお疲れ様と労いの言葉もまだ言えていないし、訓練場にも顔は出していない。
待つって本当に時間が、長く感じる。
たった1週間だったのにも関わらず、とても長い期間を待っていたように思う。
戦況をたまにジョージアが公世子から聞いてくるのだが、それを聞いて精査したところ、件の文官が戦地に赴いてからは、誰一人、こちらの近衛の血は流れていないとのことだ。
いやはや、感服である。
私なら……と、戦地に思いを馳せ、頭内で戦況を思い描いていく。
いろいろと戦局を考えてシュミレーションをしてみたが、どうやっても流血は避けられなかった。
もし、その文官の代わりに指示を出していたら、多少の犠牲は出ていたのではないか……と思えてくる。
何せ猪突猛進型で、力でねじ伏せる方が、私は得意なのだ。
力でどうこうならなければ、それなりに考えるけど……
考えるより、まずは、やはり先頭で戦っている自分の姿が予想できた。
さらに、それを見た、ジョージアを始めいろんな人が、呆れて、めちゃくちゃ叱られる……そんな姿が容易に思い浮かべてしまい苦笑いする。
うん。だから、今回の年若い文官は、ローズディアにとって大手柄と言ってもいい。
相手の将軍は、連戦連勝の将だと聞いている。
そんな相手に、いわゆる口八丁手八丁で勝ってしまったのらしい。
一体どんなことで、決着がついたのか、ぜひ聞いてみたい!
凱旋から1週間が経ったころ、私は、城の訓練場へ向かうことにした。
「ジョージア様!」
「ダメったら、ダメ!
この前も、敷地内で襲われたばかりだろ!」
でも、おでかけの許可は、一向にジョージアによっておりることはなかった。
何故か……
アンバー公爵家の敷地内を運動不足とヨハンに判断されたため、私とデリアとヨハンの3人で散歩をしていたのだ。
そこに現れたのが、刺客であった。
こんな屋敷の中に?と驚いたものだ。
狙われているのは、もちろん私だ。
第一夫人になりたいそうだ。
この屋敷に住みたいそうだ。
私を屈服させたいそうだ。
そんなことで、命を狙われるのは、割に合わないと思うのは、私だけだろうか?
そろそろ私のお腹も大きくなってきたので、ソフィア側にもバレているのだろう。
もともと間者がいるのだから、もっと早くにバレていたのであろうが、たまたま、敷地内の散歩を狙われてしまったのだ……
幸い、ディルによって手配されていた者たちによって捕まったのだが、その報告を受けてからは、さらにおでかけの許可も厳しくなった。
ちなみに、刺客たちは、捕らえた時点で、自決してしまったらしい。
そんなに、雇い主は、恩に着る人物なのだろうか?
それとも、闇の組織は、徹底されているのだろうか?
まず、ディルに捕まって逃げられるとは思えないけど……なんて、考えている。
「ウィルに迎えに来てもらってもダメですか?」
「ダメだ!
アンナ……1人の体じゃないんだ。
気を付けた上で気をつけても不足の事態は、起こるんだ。
屋敷から、出ないように!」
そう言われてしまっては、仕方がない。
元はと言えば、あなたの第二夫人からの刺客なんですけどね!
なんて、心の中で声を大にして言い放っていた。
外に行けないのが、苦痛で、仕方がない……
どこにでも思いのままま、出歩いていたのだから、制限をかけられると辛い。
しかも、ディルの手の内のものも、なかなかの手練れ揃いなので、私くらいでは相手にならないのだ。
目を盗んで出かけるということは、難しい。
「わかりました。
では、屋敷に呼んでもいいですか?」
そういうと、どういうわけか、ジョージアは不服そうにしている。
「それも、ダメですか?」
「いや、それなら許可しよう!
くれぐれも、屋敷からでないように!」
はーいと返事をし、早速、ウィル宛に手紙を書く。
デリアにお願いすると、すぐ送ってくれた。
「いつにしたの?」
「明日です!」
皆が驚く。
普通、1週間くらい時間を置くものだ。
明日って……と、その場にいた皆がウィルに同情をしているようだが、明日は、非番だとも聞いていたからこそ呼んだのだ。
「普通、日にちをおくものだよ?」
「えぇ、明日、非番って聞いているので、呼んだまでです!
ウィルのスケジュールなら、エリックが押さえているのですぐにつかめますよ!」
にっこり笑うと、3人が同時にため息をつくのであった。
「ウィルも、かわいそうにな……
アンナに振り回されて……」
ディルとデリアが、ジョージアの言葉に深く頷くのであった。
それって、ちょっと、変な話ね。
私振り回したことは、ないもの!
ウィルは、いつも私と遊んでくれる悪友なのだから!
「ジョージア様って、私のことなんだと思ってます?
これでも、ウィルに気を使って非番の日の午後の都合がつく時間に
屋敷に来てってお手紙送っただけなんですけど!」
「それって、休んでないで、アンナと遊びなさい!ってことだろ?」
「そうですよ?」
「それ、ウィルにとって休みになってないんじゃないの?」
「あ……」
ディルとデリアが頷くかと思ったが、二人して今度は、呆れている。
「うーん。でも、イロイロ、聞きたいですしね!
私に好かれたことが、もう、仕方ないと思ってもらうしかないですよ!」
「それで、ウィルが納得してくれてるなら……
いいけどね……」
ジョージアも、ウィルに対して申し訳なさが滲み出ている。
しかし、そんな3人の『ウィルがかわいそう』という予想は外れ、次の日にウィルとセバスが、予定より早く昼前から来てくれた。
「姫さんに土産がある!」
二人そろってご機嫌で屋敷を訪ねてきた。
私は、二人を大歓迎し、ジョージアを始めディルとデリアに得意顔で偉そうぶるのであった。
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