第2話 変わらぬ町と引越し先

彼女は僕のことを覚えているのだろうか。

それとも、忘れてしまったのだろうか。

そんな思いがありながら僕は帰ってきた。

「この感じ…懐かしいな。」

久々に見る小川。水が透き通っていてとても綺麗だ。その沿いの方にはたくさんの桜が咲いていた。昔、ここでよく遊んだ記憶が蘇る。

僕は高校生になった。

あれから十数年間、一度も会っていない。

中学生のとき、無理を言ってここの近くの高校に行くことにした。ただし、条件も付けられた。

一人暮らしをすることと、定期的に帰ってくること。そしてそれが無理なら手紙を書くこと。

そんな約束をしてこの町に帰ってきたのだ。

前住んでいた家はもうないらしいので、古民家を買ったとか。とりあえず、メモに書いてあるとおりに道を進むと―

「おいおい、ほんとにこの道で合ってるのか…?この先山道だぞ…」

少し怖いが進むしかない。

そして、山道を歩き続けること約10分。

開けた場所に出た。そこにポツン、と一つの古民家があった。


どうやらこの古民家が新しい、僕の家らしい。予め受け取っていた鍵を使い、中に入る。ドアは年季が入っていたからか、少し軋む音がする。玄関はさすが古民家、という所か。普通の家の玄関より何倍も広い。

そして家の中に入り、真っ先に目に入ったのは、中庭の存在だった。家の中に庭があった。外にもあるのに、中にも庭があるのか、なんて思った。廊下は漢字の『口』の字状になっていて、リビング、和室、寝室、トイレがあった。ただ、一つ不自然なことがあった。

部屋が左側に集中しているのだ。

右側には縁側とトイレ以外、目立ったものがない。気になったので色々探っていると、扉がある事に気づいた。壁と同化していて中々気づくことが出来なかった。

扉を開けると階段があった。こんな所に階段があるとは…分かりにくすぎる。この扉は常に開けておこう。そう思いながら二階へ行った。

中庭があるせいか、一階と全く構造は同じだった。ただ、自分で過ごす訳だからこんなに部屋があってもあまり使わないだろう。数室は物置部屋として使うことにした。


とりあえず全体を見た訳だが、真っ先に思ったのは――

「これ一人で掃除するの鬼畜じゃん…」

そう、掃除である。

僕の荷物が届く前に出来れば終わらせたい。

ここに来て初日で少し疲れたが、今からやらないと後々後悔しそうだったので、頑張った。


その日の夜はかなり離れた位置にあるが、この町で唯一のコンビニでご飯を買い、それを食べて寝た。

翌日、筋肉痛になった。しかも荷物も届いた。しばらくは大変そうだ。

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幼なじみとイチャイチャしたいが妹たちが邪魔をする。 幻驢芭 和 @rel05

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