ちょっとだけ霊話
舘川 ハナミ
抱っこをせがむ夜泣き石と娘
私は余瀬楽 晴美 よぜら はるみ(仮名)。
私は、気晴らしに○○県の○○旅館に寝泊まりしていた。
最近夫がよそよそしいので☆
いつも口数少なく、インドアで真面目で頭固くて賢い。
私はその真逆。
告白も私から。
でも、これと言ってなーんにもありません。
キスすら無し。
……どうして結婚したかって?
一目惚れだったから。
ただそれだけの理由です。
でも、最近よそよそしくはあるんですが、なんだかモジモジしています。
おまけに何故か私を無表情に眼光鋭く私を見つめます。
………解せぬ
っちゅー事で、
黙ってプチ?家出気分で一泊旅行をしてます。
そこの旅館の名物は、毎夜毎夜泣く、夜泣き石だそうだ。
試しに夜泣き石が泣いたら見に行こうと張り切って夜更かしです。
昼間見に行くと、サッカーボール大のゴツゴツ石がショーケースの中に。
そして──その時は来た。
「えぇえええええええぇっ……」
悲しそうで、寂しい泣き声。
幼くも可愛らしい声。
私の泊まる部屋まで響き渡るその声は幼女のような声。
私はさっさと階段を下りすぐさま夜泣き石のもとへ向かった。
─スタタタタタ
「えぇええええ~っ……」
やはり、夜泣き石は泣いていた。
そこで、私に気付いたのか、泣き声が一旦止まり、次の瞬間……
─ビュン!!
「わっ!?」
夜泣き石から、小さな少女が飛び出してきたのだ。
その容姿は、顔の元はいい筈なのに、顔の大半が火傷しており、
頭は落武者のようにてっぺんだけハゲでワンピースには大量の返り?血。
常人であれば……叫ぶ、気絶、逃げるのどれかだが、
グロテスクホラーには超絶に絶対的な耐性があった為無反応。
少女は私の目の前に立って、上目遣いに見て言った。
少女
「抱っこしてえぇぇぇぇ~っ………お願ぁああああいぃ~~……」
晴美
「うん。わかった。」
─ヒョイッ
少女
「わあぁぁぁぁい、ありがとおぉぉぉ~」
少女は私の肩口に顔を埋めて微笑んだ。
すると少女は話しだした。過去を。
少女
「みゆき ねえ、ひ でもえちゃったんだ~。あつくって いき できなかったよぉ」
晴美
「そっか、よしよし」
やはり、この子は火事で死んだらしい。
頭が落武者なのは、てっぺんだけが火で焼け焦げたからかな。
少女
「あたま ねぇ、そられた のぉ、
つるつる に なったのぉ。がっこー
のみんなぁ みゆき へんだ~ って いってた のぉ ぱぱとまま ねぇ、これでいいってぇ いってたのにねぇ」
晴美
「…………そっか。」
私は少女を強く抱き締めた。
いくらなんでも、そんな虐待が許されて良いわけない。
怒りが
頭は火で焼け焦げた訳ではなく、親に刈られた為だった。
そして、抱き締めて約1時間(感覚では)経ったぐらいになると…
少女
「あいがとぉ これで いけるよぉ」
晴美
「……うん。良かったね、ちゃんと1人で逝くんだよ?」
少女
「うん。おねえちゃん ほかの ひと はねぇ にげて いっちゃったけどねぇ おねえちゃん にげずに ”あいら” だっこして くえたから もう まんぞく」
晴美
「そっか、あいらちゃんか。来世は優しい家族に恵まれるといいね。」
あいら
「うん。 やさしそうな ひと ちゃんと えらぶのぉ。 だいじょーぶだよぉ」
晴美
「じゃあ、バイバイね。」
あいら
「うん。 バイバイねぇ。 おねえちゃん」
最後にぎゅっと抱き締めたら、あいらちゃんの体が光り、
最後に見えたのは、とても優しくて幸せそうな顔だった。
─翌日
フロント
「どうでした?夜泣き石は」
晴美
「いやぁ~、それがですね」
私は、昨晩あった出来事をフロントの受付さんに話した。
旅館にフロントは珍しいとは思ったけど受け流した。
フロント
「成る程~。やっぱりですか。」
晴美
「え?」
フロント
「前泊まられたお客様に聞いた話ですけどね、夜泣き石が泣いた時向かうと、落武者のような少女が石から飛び出てくるって皆さん言っていたんですよね。」
晴美
「確かに、私の言ってた女の子と同じような感じですね……」
フロント
「はい。 でもともかく、 女の子が成仏して良かったですね。」
晴美
「 はい。本当に。」
フロント
「 夜泣き石が泣いていたのも、きっとその女の子が原因だったんでしょうね。じゃあ、 これからはもう、夜泣き石が泣くことは二度とないんでしょうね…」
晴美
「……はい。」
フロント
「…… やっぱり虐待っていうのは許せないですね ……自分たちが授かった命なのに それを簡単に奪ってしまうだなんて 親としてどうなんでしょうかね……」
晴美
「……全くですね…」
私とフロントさんは 少ししんみりとしてしまった。
晴美
「 じゃあ、またいつか泊まりに来ますね。」
フロント
「 またいつでもお待ちしております。」
晴美
「ふう…… 気晴らしの旅行だってのに ちょっと疲れちゃったなあ……にしてもあの 女の子 ちゃんと一人で逝けたといいぁ…」
私は自宅を目前に、しんみりとしながらとぼとぼと歩いていた。
─ガチャ
晴美
「ただいま~……あれ?
扉を開けて玄関に入ると 何処も真っ暗だった。
私は夫の健仁の名前呼んでみるが全く反応しない。
まさか何かあったのかと少し焦ってしまう。
晴美
「おーい!大丈夫か健仁ぃいいい!!」
何回か呼び続けると2階の階段から降りてくる音が聞こえた。
─トントン
健仁
「ああ、お帰りなさい。ずっと待っていたのに……何処に居たんですか?」
晴美
「 あーよかった無事だったんだな。それがさあ、お前があまりにも無愛想だから、ちょっと旅館に泊まってたんだよ。いわくつきのね。」
健仁
「 おや、そうだったんですか…?悪霊に取り憑かれてませんか?体調は?」
晴美
「 ははっ、 大丈夫だって。これでも霊には取り憑かれ にくい体質なんだからな。 ていうかそれより、何で降りてこないんだ?」
健仁
「ああ…今降りますよ。」
そう言って降りて来るとよく見れば 両手には驚愕の物が握られていた。
晴美
「 ちょ…おま、それ!」
健仁
「 ああ…これですか。解るでしょこれを何に使うか……ふふふ……」
晴美
「け……健…仁?な、何するつもりだ?」
健仁
「解ってるんでしょう?…ふふふ。さあ晴美、一緒に寝ましょうね…♪」
晴美
「えっ…!きゃああっ!」
健仁か握っていた物 それは…
催眠スプレーと柔らかそうなロープだったのだ。
大人なら、それを何に使用するのか、 言わずもがな解かるだろう。
ここは家なので、お持ち帰りする為なら意味は無かろうが、
拘束するならば威力は十分。
私も、男である健仁の力量には勝てる筈もなく……
そのまま無抵抗に寝室に連れ込まれた。
後に行われた行為も何をされたかは、言わずもがな大人なら解るだろう。
だが、疑問があった。
あんなにいつも無愛想で素っ気ない態度だったのに、
プチ家出?旅行?でたった一晩空けたくらいで欲情するのはいささかおかしい。
なので、行為中に聞いてみた。
晴美
「…なあ、健仁……」
健仁
「はい?何ですか晴美?」
晴美
「…………」
健仁
「………?……晴美?」
健仁いつも呼び捨てでは呼ばず、私を指示していた。
だけど、欲情してからは呼び捨てに変わっている。
晴美
「 お前、いつも無愛想で素っ気なかったのに…何で私がいきなりプチ家出?旅行?をして帰ったらいきなり襲うんだよ…」
健仁
「晴美っ……晴美は気付いていなかったでしょうけど……本当は、僕は素直に晴美を愛して居るんですよ…?……本当は、一歩踏み出せなかっただけで、
無愛想に素っ気なくしていたのは、ただの照れ隠しだったんです……それで、 昨日やっとヤる決意を固めて家に帰宅したら…晴美が居なくて……
僕の中の何かが爆発して………
本当は欲情したかったんです…!!…… ただ…その一歩が踏み出せなかっただけで……僕はヘタレですか?晴美。」
晴美
「クスッ……いいや。そんな事ないさ。私も愛してるよ健仁。」
健仁
「晴美……!!晴美ぃ!!」
晴美
「わっ!?ちょ、まっ!待て健仁!落ち着けってぇ!!」
健仁
「晴美ぃ~!晴美は一生僕の物だよぉ~~ッ!!僕の方が何百倍も愛してるからね晴美~~!」
晴美
「わっ…!!──」
結局、夫がヤンデレ気味だったのな。
はあ………
んで、避妊とかしなかったせいで、妊娠をキメてしまい、まあ…
娘もすくすく育って今や2歳。
だが……
1つ、娘が育ってめちゃくちゃ驚いた事があったんだ。
「おかーさん!だっこしてー!!」
晴美
「はいはい。─よっと。」
「わーい!」
晴美
「ふふっ、本当に”
愛良
「うん!」
そう。
名前は偶然だが、娘の愛良は、あの夜泣き石だった”あいら”の生まれ変わりだ。
顔も声も抱っこ好きも、きっと、あの子が一番良いと選んで来てくれた。
そうとしか思えなかった。
そしてやはり、前世を語るような時がある。
愛良
「あのね、わたしの まえの ぱぱたちはね、 いたかった けどね、 おかーさんが だっこのちからで あいら を おそら にもどして くえたの。」
晴美
「そうか。お母さんもよく覚えてるよ。……あの出来事のすぐ後に愛良を授かったんだからな。」
愛良
「おかーさんしか ぜったいにいない! っておもったから おかーさんたち えらんだの。」
晴美
「お父さんより私の方が抱っこの回数多いな?」
愛良
「おかーさんの おかげだもん」
晴美
「ふふ、そうだな。ありがとう愛良。」
愛良
「……?」
娘は首を傾げるだけだったが、本当、可愛い娘だ。
by作者
皆さん、お子さんがいる人は子供を一生大切にして下さいね(*^O^*)
子供はちゃんと、自分達を選んで来てくれているらしいですよ!!
虐待は犯罪で命に対する
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