ランドセル革命~ランドセルの代わりに革命軍を背負うことになりました~
まとめなな
1.エイトリア国編
1.革命軍とオジサン革命家(in 小学生)
<エイトリア皇歴1484年 4月11日>
「ワールド……何で死んじまったんだよ……頭を強く打っちまうなんて……」
「ドゥッガーニさん。悲しいですが、天に召された命は元に戻りません。そろそろ、土をかけましょう」
丘の上、土葬場に新しく掘られた長方形の穴の中に、一人の男が横たわっている。冷たくなった両手は腹の上で組まれている。
「ヴァ―さんの言う通りだな。リーダーがいなくなった今、俺たち革命軍がどうしていくかも、今後考えていくしかないよな」
アルド・ドゥッガーニとヴァレリア・オーギャスタが長いスコップを手に取り、穴の中の男の足元から、少しずつ土をかけていく。
ざっ。ざっ。どんどん男の体が、土の中に埋もれていく。
そうして最後、アルドが男の顔に土をかけようとしたその瞬間、なんと男はむくりと上半身を起こした。
「なっ!?」
驚きのあまり、言葉が出ないアルド。
「ま、まさか……心臓は確かに止まっていたはず。」
冷や汗をかくヴァレリア。
「あ~……よく寝た」
「ワールド! お前、生き返ったのか! 奇跡が起こったんだ……神は俺たちを見捨てなかった!」
アルドが穴の中の男、ワールドを抱きしめる。ワールズは何のことか全く分かっていない様子で、アルドに体を揺すられる。
「ワールドって……もしかしてボク……ゲームの中のワールドになってるの!?」
ボクは訳も分からぬまま、ゲームで見たアルドとヴァレリアに従い、屋敷の中に入った。
「ゲームって……一体どういうことだよ。ここが現実だよ」
緑の軍服を着て、短い髪を後ろになでおろしオールバックにしている、豪快な笑顔が似合う気さくな男の人。間違いなく彼はアルドだ。
「そんな厳しい言い方はしないでください、ドゥッガーニさん。ワールドさんは頭を強く打ったのですから、頭がおかしくなっていても仕方ありません」
穏やかな笑顔で細目のふわりとした髪の、青い服の女性が割って入る。この女の人は、きっとヴァレリア・オーギャスタ。たしか年齢はお母さんよりも若かったはず。
「本当なんだよ。ボクは2024年の世界でタブレットを拾って、エイトリア共和国のゲームをしていたんだ。そしたら操作していたワールドが突然、何者かに頭を殴られて死んじゃって……それで……」
「うん。ヴァ―さんの言う通り、こいつは相当頭がおかしくなってるな」
「そうでしょう。とにかくいつも通り生活して、少しずつ頭を直してもらいましょう」
「いやいや、二人とも言い方ひどいな!」
結局二人ともボクが言うことは信じてくれなかったので、仕方なく二人と日常を過ごすことになってしまった。
ひとまず、土の中に埋められそうになっていたボクは、ヴァレリアに顔を拭いてもらうことになった。そういえばゲームの中で、ワールドはいつも、女性の人に顔を拭いてもらっていた。
ボクは顔なんて自分で洗える。でも、ヴァレリアのにこやかな笑顔を見ていると、思わず甘えたくなってしまう。
「あらあら。急におとなしくなりましたね。いつもは『そんなのいらない』って突っぱねてしまうのに」
「そういう様子を見ていても、なんか子ども帰りしてるみたいだよな、ワールド。」
キュッキュッ
少し力強く顔を拭いてくれる。力が強くて、少しだけ頬の肉が擦れて痛い。
「そういえばドゥッガーニさん。前から言っていますが、ヴァーさんって呼ぶのやめてくれないでしょうか?」
ヴァレリアがにこやかに、ドゥッガーニに話しかける。
「なんだよヴァーさん。ワールドの野郎と同じ呼び方をしただけだぜ」
ドッカーニさんはぶっきらぼうに答える。
「すみませんねぇ。ちょっと顔の皺が気になってきたもので」
ヴァレリアは、ドゥッガーニとそんな他愛のないやり取りしながら、ボクの顔を触る。眼帯を取り外してボクの顔を拭いてくれる。なんだかお母さんみたいだ。
キュッキュッ。顔を拭いてくれるの、気持ちいいなぁ。
「ったく。若ぇのにお母さんじゃねぇんだからそんなに」
ギュッギュッ!!”お母さん”という言葉に反応するように、ヴァレリアの拭く力が更に強くなった。
「痛っ!」
「あら。ごめんなさい。思わず力が」
「はい。いつもの眼帯ね」
そう言って、ヴァレリアは眼帯を差し出してくれた。
「うん……でも、今はやめておくよ。暑いし」
ボクは眼帯を受け取らなかった。
「え?!『これがないと落ち着かない』っていっつも言ってたじゃねぇか。そんなところまで変わっちまったのか……。ヴァーさんはどうなんだ?そんな厚着で暑くねぇのか?」
また『ヴァーさん』って言っちゃってるよドゥッカーニさん。
「ふぅ……」
ヴァーさん発言に反応しないよう、ヴァレリアがため息をつく。
「私は、喪に服しておりますから……」
ヴァースさんは遠くを見るような目でそう呟いた。
「そうだった。無神経だった。正直すまんかった」
「そういえばワールドさん。あなたの背中に、このようなものが落ちていたのですが、ご存じでしょうか」
ヴァレリアが手に持っていたのは、ボクが帰り道に拾ったものとそっくりのタブレットだった。
「それ! タブレットだよ! そのタブレットでゲームをしていて、それで……」
「またゲームの話ですか。よく分かりませんが、ワールドさんのものということなのであれば、お渡ししておきますね」
「ありがとう」
そうして久しぶりに触れたタブレットの電源を入れようとしたその時、いきなりドゥッガーニが叫び始めた。
「話は変わるが、ワールドが復活したんだ! もう行くぞ。いつもどおり、暴動で暴れまわってやろうぜっ!!」
えっ!? 暴動?! 無血革命じゃないの?!
「何をキョトンとしてんだ?いつもどおり、あの”妖精教皇”の鼻を明かしてやろうぜ。つってもいつもどおりぶん殴るだけだがよ」
妖精教皇。ゲームの解説によると、演説を行う堂々とした佇まいから熱狂的な信徒が多いとのことだった。妖精教皇さんを否定的に言う人は少ないけど、国の税金が多いとかの不満が溜まっているらしい。
今日はその演説に突撃するという。
「演説を聴いてると心を揺さぶられるって人が多いらしいからな。いつもどおり、お出ましたときに広場の衛兵殴ってずらかる、って寸法で行く、だろ?」
「いや……その……」
「さて、と」
ベランダに出ると、すでに並んでいた市民人たちが、さながらすし詰め状態になって革命旗を掲げて気勢を上げていた。
「じゃあ野郎ども、出発!!」
「オォォォーーーーーっ!!!」
「じゃ、いってらっしゃい。よく覚えていないこともあるみたいですけど、きっとすぐに思い出しますわ。いつもみたいにカレー用意して待っていますからね」
ヴァレリアも穏やかな顔で手を降って見送る。
え? え? いきなり!?
ちょっとは人の話を聞こうとしてーーーーーっ!!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます