あした晴れたら

LiNdeN

第1話

湿った土の匂い。強い日差しは沢山の緑で遮られ、真昼でもランタンが必要だ。

風に吹かれて鳴る木々の葉音。足元から聴こえてくるのは、数えたら気が遠くなりそうな程ここに住んでいる樹々の根が吸い取る水の音。


-ああ、今日も生きてる。-


ひと仕事終え疲れた身体に染み込む"息吹"を感じると、漸く肩の力が抜ける。

1歩で住家に着きたいところだが、今日は無理だと枝が訴えている。出掛ける前に溜めておいた風呂桶へ小さな友人を飛ばすと、枝は掌に吸い込まれていった。森から力を分けて貰いながら半刻歩いて行くと、愛しい住家に辿り着いた。


台所の甕から水を掬い、蜂蜜をひと匙溶かし入れ一気に飲み干す。一つ大きな溜め息。

脱衣所に入ると、小さな友人は満面の笑みで腕組みをして待ち構えていた。その笑みにつられて笑うと、懐から欠片を出し小さな友人へ渡す。嬉しそうに欠片を抱き締め、綺麗な鱗粉を撒きながら小窓から出ていった。


「ありがとう」


風呂場へ入ると、風呂桶には綺麗な華が浮かんでいた。小さな友人が運ぶには大変な量だ。

爪先からゆっくりと身体を沈ませていく。華の香りを楽しみながら深呼吸。思わず笑みが零れる。


「ありがとう。フランム。」

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