後輩はかわいいインキュバスくん
午後のミズ
インキュバスくん
最近俺には悩みがある。
大学2年生にもなると大学生活にも慣れて、サークルやバイト、恋愛に
俺もそのうちの一人として、サークルやバイトに力を入れていた。
「せんぱーい、どうしたんですか? 練習行きましょうよー」
夕方、一通りの授業が終わり、部室で友人たちと駄弁っていると俺の悩みの種である夕が来た。
夕は俺の所属するソフトテニスサークルの一つ下の一年生の後輩だ。
そしてこいつは入部して早々、俺にベタベタしてきたのだ。
「おい、おい、愛しの夕ちゃんが相馬のこと呼んでるぞ。行ってやれよ」
さっきまで駄弁っていた友達が茶化す。夕が俺にベタベタするのはサークルでもちょっとしたネタにされていた。当の夕は気にしていない、どちらかというとそれに乗っかる形だ。
俺は非常に困っている。何故なら夕は“男”であるからだ。
低身長で少し茶色のショートヘアで身体は細く、肌も白くて顔も整っていてすごく可愛い。が、男だ。
女の子であれば俺も願ってもないことなのでもちろん受け止めるが、俺は男と付き合うつもりはない。
「うるせー! 分かった、分かった。すぐ行くぞー」
茶化す友人に何度目かの常套句を言い、ラケットを掴み、部室の入り口に立っている夕の方を向く。
夕は練習着のショートパンツとウェアに着替えている。女子かよ。
俺は適当なジャージにTシャツという出立だ。
外に出ると夏の日差しは夕方になって幾分かマシになってはいたが、西日がかなり暑い。いくつかあるテニスコートの空いている一つに行き夕と乱打をはじめる。
お互いに軽くテニスボールを打ち合う練習というか、ウォームアップだ。
夕は入部してから、俺とばかり練習のペアとして選んでいる。人当たりはよく誰にでも可愛さと柔らかい雰囲気で仲よくなり、女子部員からも男子部員からもアイドルのような扱いだ。なぜ、特にカッコよくもない平凡な俺なんかを選ぶのだろうか。
カッ
何度も考えていることをまた上の空で乱打中にしてしまった。
軟式のゴムボールはラケットのフレームに当たり、見当違いの方向に飛んでいってしまった。
「もー! せんぱい! ちゃんとしてくださいよ」
夕は俺の飛ばしてしまったボールを拾いに行く。
「すまん、すまん。ちょっとボーッとしてたわ」
最近は、練習にも身が入らずにこんなことが時々ある。
「練習中にボーッとするのやめて下さいよー」
まぁ、こんな感じだ。
その後、部員全員で集まり、サーブ練習やレシーブ練習を軽くやって練習は終わった。
うちのサークルは大会に出たりすることもなく、楽しくやる程度のサークルなので練習も軽いのだ。
夕は女の子と化粧品の話やアイドルやらの話をしている。
俺は荷物をまとめて帰る準備をはじめる。もう時刻は6時過ぎだ。まだまだ夕日は沈む様子はない。ひぐらしの悲しげな音が鳴り響く。
「あっ、せんぱい! 待ってくださいよ。ボクも帰ります」
やっぱり見つかった。今日はいそいそと帰ってゲームにでも明け暮れようと思っていたのに……。
パタパタと軽い足音を響かせながら出入り口まで走ってきて、夕は俺のTシャツの裾を握った。そして、上目遣いに、
「捕まえた!」
すごく接近されて、上目遣い、それに胸元が夕より身長の高い俺の位置からだと少し見えてしまう。いかん、これは……。
「みんなバイバイー」
夕は部室のみんなに手を振って俺と歩き出す。
女子は手を振り返していた。
二人が部室を去った後、いつもみんな可愛い小動物(夕)を見た時の癒しと甘酸っぱい二人の青春の様子を見てニヤニヤしてしまうのであった。
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