第27話彼女は、大切な人からの言葉に──

私の視界に映っているのは、ベッドに横たわる弱った親友だ。

掛け布団から出ている腕は、白く細い。触れただけで、音をたて壊れそうに感じた。

手の甲は、昔のようなつやはなくかさついていた。

頬だって昔と大分変わり、痩せこけていて、生気を感じるがほんのわずかだけだ。


私が、親友の少しの表情の変化にさえ、気付いていたら......私が私が私が──


「と、うえ......ちゃ、ん?な......かな、い......で、よ。わ、たし......は、とう......えちゃ、んの、わら......った、顔が、好きだ......よ」

儚く弱々しい、力を振り絞った親友の精一杯の声がして、目線を親友の顔に移して、紡ぎ出されるはずの続きの言葉を待つ。

「......わ、たしはと、うえち......ゃんとともだ、ちに......なれ、てよか、った......よ。かが、わを許し......てあげ、てね。みえなちゃ、んにも......よろし、く言って......東江ちゃんと、いつ......までも、一緒だと......思って、たけど無理......だった」

両手で包み込んでいた親友の細い手を今より少し力を入れて握る。

親友の肌の温もりに触れていたくなる。

「私ぃっも、奏と友達になれてよかった。あの日々が楽しかったよ、気付いてあげれなくてぇっごめん......ごめん、ごめん、ごめん、ごめんね奏。私さえっっ──」

「いい......んだ、よ。もう......私の分、まで生き......てね。生まれ変わっても......とう、えちゃんと、友達になり、たいよ、ううぅ......あああああぁぁぁ。あぁっりが、とうぅぅ......こんな、私と......友達に、なってく......れて、ぇぇ」

親友の顔は、涙と鼻水で汚れて、見るのが辛い。

私の胸がきゅうっと締め付けられ、苦しくてうまく呼吸ができない。

親友は、泣き続けた後、泣き疲れたように瞼を閉じ、眠りについた。

浅い呼吸が小さくなっていく。


私の胸にあったが音を立てて、崩れて粉々に砕け散った。


私は、奏がいない世界でどうしたらいいんだろう。私の掌からこぼれ落ちて、残っていない。


私──神前東江は、生きる意味をくした。


神前のには、

奏は、もう──のに。


何でじゃなくて、奏が──ならないの?


私はぁぁ、ああああああああああああああああああ──





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る