第7話 閑話~イギリスラーメン事情~

 牡蠣ラーメンを食べに行ったその夜。ふと、思ったことがあった。


(イギリスのラーメン事情って今はどうなってるんだろ)


 元々、セシリーたち一家はロンドンに住んでいて、日本のラーメンが好きで日本に来たくらいの一家だけど、その頃はあまりおいしいラーメン屋さんがないと言っていた。


【セシリー、ちょっといいかい?】


 HowAppsアプリを立ち上げて、セシリーにメッセージを送る。HowAppsは、世界中で使われているメッセージアプリだ。日本だとラインが主流だけど、今も昔の友達と連絡を取るために、彼女はこっちを好んで使うのだ。


【どうしたの?私に会いたくなった?】


 例によって、別れ際、寂しげな顔をしていた彼女を思い出す。


【それもあるけど、ちょっと聞きたいことがあって】

【なんでもどうぞ?】


 しかし、僕と話すときはすっかり日本語だ。昔は、お互いに合わせて英語と日本語を混ぜこぜにしたやりとりをしていたものだけど。


【ロンドンのラーメン事情って、今、どうなってるの?】


 日本に腰を据えたセシリーたちだけど、年末年始は毎年、ロンドンにあるお祖母さんの家に帰っているのだ。そんな彼女なら、今どきのラーメン事情を知っているかもしれない。


【だいぶ美味しいのが増えたわよ。日本の有名ラーメン屋もあるし】


 僕も知っている有名ラーメン屋がいくつか挙げられる。


【へー。そんななんだ。でも、全部豚骨系だね?】

【そうなのよ。あっちで人気なのって、ほとんど豚骨系なの!】


 「あっち」なんて書く辺り、彼女にとっての故郷は、もう日本なのだろう。


【でも、なんでだろ?】

【味が濃くてわかりやすいのが大きいみたい。豚骨以外にもいっぱいあるのに】

【でも、Ramen Walkersだと、豚骨以外でも結構好評なのあるよね】

【たぶん、海外のラーメンマニアの人だと思う。そういう人たちは一杯居るし】

【そっか。ありがと。参考になったよ】

【どういたしまして】


 そうして、メッセージのやり取りを終える。


 豚骨ラーメンの人気があるというのは意外だった。しかし、こうして日本に根付いたラーメンが、海外の人に受け入れられて、海外から日本に移り住む人まで居る彼女の一家みたいなのが居るのは、不思議な気分だ。

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