君に会いにいく





何週間前かに 日と大体の時間を決めて

前日に 着く時間を知らせて

出発する時に 短いLINEで知らせて

最寄りのインターを降りた時に さらに短いLINEで知らせる


僕の目の前には 制限時速以下で走る 白い軽トラ

すぐ下には その速度に認印を押したような黄色いセンターライン

“急がなくていいから 気をつけて来てね”

今や その短いレスだけが僕のリミッターだ


交差点で 右折信号が黄色に変わる

さっきのを最後の1本にしようと決めていたのに

再度 煙草を取り出そうとしてしまう

「さっき ペパーミントを口に入れたばかりじゃないか」


信号が青に変わる

軽トラは微動だにしないし

対向車線は窓に細かく付く水滴のように

無数のヘッドライトが絶望的な列を成している


黄色信号になって

そして

緑の矢印が点灯する

軽トラは 動かない

助手席のおばちゃんとのおしゃべりに夢中だからだ

「今度こそ」 と思って クラクションに手を当てたときに

軽トラは動き出す

どこに怒りの矛先を持って行っていいか わからない嫌な感じ


と思ってたら 右折後すぐに

軽トラは ウインカーも出すことなく左側に停車


見てないけど

タコメーターの針を4000回転くらいまであげて

軽トラを追い越す




会いにいく


今 君に会いにいく…





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