らうめん




頼んだわけでもないのに 目の前に

コンビニのガラス越しにしか見たことがない雑誌が数冊置かれ

拘束具みたいな白い木綿の上着を着せられ


黄緑色の髪の男の子に 髪をいじられながら

したくもないお天気の話を 言葉少なに話し


黄土色の髪の女の人に 髪をいじられながら

したくもない仕事の話を 相槌程度に話し


たしか

椅子に座ったときは2~3年前の邦楽のヒット曲が聞こえていたのに

いつのまにか

僕の年代がよく聴きそうな 昔の邦楽ロックが店内に流れていて


熱いだけの薄いコーヒーが出されて

手持ち無沙汰だから それでも数回口に運んで


白い液が 黒髪の中に突如生えた白髪のように見える我が顔から

目を逸らし

目をつぶって 瞑想を気取っていることにもとっくに飽きた僕は

女の子のような男の写真ばかりの雑誌のページの中から

それでも 中原中也の評論を見つけて

「月夜の浜辺」を何度も読んで

意外にも 幸せな気持ちになってまた目を閉じたのに

黄緑色の髪の男の子がラーメンの話しを持ち掛けてきて


それでも なぜか いらだつことなく

ましてや 昼食にラーメンが食べたい と思えたのは

黄緑色の男の子のおかげか

それとも

中原中也の詩のおかげか





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