聞こえるもの 目に見えるもの




外が薄明けると いろんな鳥が挨拶をし始めて

まだ鳴き止まない虫たちめがけて動き出し

そのうちに 明らかに目的を持った車も乾いたエンジン音をさせて走り出し

どこかの家の玄関先でバケツが転がる音なんかがして

朝の挨拶を交わす老婆の声がして

そうこうしているうちに 外世界全体が明るくなって

目的を持った車のエンジン音が重なり合うようになり

その隙間で 何がうれしいのか学校へ向かう子どもの甲高い声がしているけれど

しばらくすると 車通りも子どもの声もなくなって静寂が訪れ

否 正確に言うと 風の音と風鈴の音だけがしていて

あとは 時計を見ないと何時だかわからない時間が随分あって

その間は 目的を持った車のエンジン音が申し訳ない程度にしていて

日暮れとともにまた虫達が鳴き始め

やがて 日中の蝉の声のような大合唱が大音量になって

その隙間で 目的を果たしたあとの車のエンジン音が時折して

いつもの窓からはいつもの家のいつもの部屋の電灯が点いているのが見えて

それでも テレビからは全国共通の番組が流れていて

そうこうしているうちに 今日という日が終わり

また 同じような明日を迎えようというのだから

各々の家の中のみなさんはお幸せに


おやすみなさい

また明日






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