第68話 長宗我部元親の土佐統一?
(永禄4年 (1561年)10月中旬)
兄上 (信長)が畿内を平定した後も四国や中国で暴れていた馬鹿者が多くいた。
四国は三好家が織田家と睨みあった為であり、中国は兵力の空白地の空き巣泥棒のような者が徘徊した為であった。
しかし、摂津で幕府と対峙した
阿波の
兄上 (信長)が畿内への援軍を拒んだ事もある。
次に畿内では次期将軍へと政争が移った。
俺は
義輝のもう一人の弟である
織田家が何を言おうと、次期将軍の後見人は三好家から出せると考えていた。
足利幕府再興の切り札を持って
三好家からすれば、『
電撃的な決定であり、兄上(信長)も帝に呼び出されるまで知らなかった。
あっさりと朝廷が、帝が、摂関家が足利家を切り捨てるとは思っていなかったのだ。
もちろん、朝廷側からすれば足利家を切り捨てたのではなく、俺と輝ノ介をセットと見立てて征夷大将軍職を送って来たのだろう。
俺と輝ノ介を野放しにできないと言うのが本音だ。
何も知らない
こんなハズではない。
「
やっと京に上洛した
執権の兄上(信長)が
兄上(信長)は援助物資を送り、『切り取り自由』の書状を届けた。
それを武器に
織田家の同盟国となった
「伊予への援軍もご苦労」
「言われた儘に兵を移動したのみでございます」
伊予は道後方面を支配する
さらに土佐の一条氏、豊後の大友氏、安芸の毛利氏を挟んで家臣が分裂するドロドロの戦いを行っていた。
村上水軍と繋がっていた河野家が毛利家と通じて織田方と思えば、
しかし、
伊予はすべて朝廷派かと言えば、そうではない。
すべての家が大友家と通じており、ちゃっかり幕府派にも与してした。
三家とも斑模様であり、1つに纏まらなかった。
家臣を駒に見立てるとリバーシの陣取り合戦を楽しんでいるのではないかと思うような展開がしばらく続いた。
誰が勝っているのかまったく判らない。
姻戚関係も複雑過ぎて、誰が味方で敵か判らない。
伊予の国はカオスにどっぷり浸かっていた。
最後に毛利家と土佐一条家に兵を挙げさせて、威圧のみで戦いに終止符を打った。
大きな戦いも多数の死者もなく、伊予に勝者も敗者もなかった。
三好家が畿内に目を向けていなければ、讃岐の三好家を中心に毛利家と組んで伊予を一蹴できただろう。
それ所か、三好家は土佐にも介入して四国を統一するチャンスだったのだ。
「三好家を介入させなかった事を褒めて遣わす」
「ありがとうございます」
「約束通り、手に入れた土佐半国は
そもそも土佐一条家は消極的な中立であったが大友家に近い家臣ほど幕府派を主張した。
一条家は家臣同士が激しくぶつかっていた。
土佐の有力大名の一人である
元々、長岡郡を支配していた
それを破棄して幕府方に付けと書状が送られれば、停戦が終わるのも当然であった。
すでに
公方
お墨付きも貰った
だが、先手を打ったのは
3月に
長浜城では元国親の家臣だった福留右馬丞が門を開いて、
数では
周辺が動けば、形勢は逆転する。
そう思わせるほどの勇戦ぶりに
だが、そこで運命の糸が切れた。
突然に父の
これが『
父が亡くなった
そこで
これが誰より早く織田家に降った理由だった。
朝廷ではなく、兄上(信長)を頼った。
兄上(信長)にとっても渡りに船であり、三好家の背後を抑えるのに丁度良かった。
兄上(信長)は旧式の鉄砲500丁と弾薬と軍資金を
幕府方に寄っていた土佐の空気が張り直され、どちらに付くべきかを問い正したのだ。
土佐では幕府に逆らって滅ぼされた家を見ていたので幕府に逆らうのは恐ろしいが、織田家に逆らうのももっと恐ろしい。
あの熊野水軍も恐れる熱田明神の信仰が強まっていたのだ。
兵力は再び
だがしかし、戦が始まると
50騎を率いて70余の首を上げた
こうして、『
勝ち組に乗るのは世の常である。
その頃、幕府の敗退を聞いた
丁度、劣勢だった
それ所か、
同じ朝廷方同士が睨み合う。
交渉は難航し、
兄上(信長)は上機嫌だが、俺は違う。
「上洛が随分と遅かったな」
「仔細は先程も申し上げました通りでございます」
「俺は騙す事をよくするが、騙されるのは嫌いだ。それだけは覚えておけ」
「
「そうか」
睨み合いは時間稼ぎだ。
皆、生き残る為に新幕府や朝廷に媚びを売って道を模索する。
そこに
新公方暗殺の書状などが見つかれば、その家は取り潰しだ。
暗殺を目論んだ下手人が一条家の家臣の手紙を所持していたのだ。
すぐに処理しなければお家が危ない。
まったく違う意味で書かれた芋づるの連署が別の意味が生まれてくる。
結束の固さが自滅を招いた。
結束を固める連署が暗殺に同意した連署に変わった。
一条家の家中は荒れた。
新幕府に申し開きに行こうとする一派と全員の首を持って潔白を証明すべしという一派に割れて戦った。
お家騒動が起こり、血を血で洗う内紛が起こった。
実に小狡い。
土佐一国を治められるのは
「
「どうも致しません。織田家の指示に従うのみでございます」
「そうか、それを聞いて安心した」
隠していたハズの書状が目の前にある事に焦った。
決定的な証拠であるが、それを
詰めが甘い。
証拠など始末しておくに限る。
「
「少し借りていた物です。兄上(信長)が見る必要もございません」
「そうか」
そんな危ない橋を渡っていると思っていなかったのだろう。
焦っているのが可愛いモノだ。
これで
そうだ。
裏で仕掛けていたのも
躍らせているつもりが、
最後にこの書状を盗ませたのは
つまり、俺に対して叛意がない事を示して来た訳だ。
相変わらず、やる事が老獪だ。
赦してやるさ。
尻尾を残すなど青臭い。
腹黒さも
「
「ありがとうございます」
「土佐の大将としての働きを期待しておるぞ」
「必ず、ご期待に沿えるように頑張らせて頂きます」
松浦川の上流に貯水池を建造し、上松浦郡全体に水道網も引かせる。
この辺りを大穀倉地帯にする。
海岸部にはライムやオレンジの畑を一面に広げる。
色々と準備が忙しい。
織田家の力を見せ付け、九州の民の心を鷲掴みにする。
だが、南海に進出する前の繋ぎ事業だ。
「大義であった」
こうして
彼らの出発は来月だ。
来年の御成りは公方に相応しい大船団が畿内から出航する。
出迎えが大丈夫なように大友家などとも段取りを進めている。
何故か、御成りは宇佐神社や大宰府などを巡る。
公家らもノリノリだ。
その為に街道の整備・宿泊なども確保する必要が出て来た。
もちろん、水の確保も重要だ。
その銭は大友家などから搾り取る。
公家があの手この手で大友家から引き出したのだ。
付き合わされる博多の商人も大変だ。
俺は今度こそ来年の夏には出発できるように段取りを進める。
だが、その前に。
妻の腹が大きくなってきた。
そろそろ生まれるのだろうか?
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