異世界に移住することになったけど、冒険も戦闘も働くのも怖いので『ヒモ』を目指そうと思います。
黒一黒
第1章 巨樹の根元の街 オールグ
Prologue ※よくお読みください
「あぁあああぁぁぁあーーーーーーーーーーー!!!」
「イディちゃあぁああんーーーーーーーーーー!!!」
――休日。
このワードを耳にした社会人諸君の大半は、全身を駆け抜ける、痺れるような幸福感に脳髄まで浸りきって笑みを零さずにはいられないはずだ。
ただただ惰眠を貪るだけも良し、ネトゲの世界に入り浸るも良し、溜めたアニメを消化するも良しだ。
色気のない例えばかりなのは、察しの良い諸君なら言葉にせずとも、優しさに満ちた微笑みを浮かべながら肩を叩いてくれるだろう。
そう、休日デートなどという都市伝説に振り回されるほど、ワタシも幼くはないのだ。
…………何も言ってくれるな。
――しかし。しかし、だ。
そんな麗しの休日だが、必ずしも体を休めて心を豊かに満たしてくれるとは限らない。
特に契約書も読まずにおかしな契約をしてしまった、『俺』みたいな奴にとっては……。
「来るなっ来るなっ来るなっ、アッーーーーーーーーーー!!!」
「待って待って待って、待ぁってぇーーーーーーーーーー!!!」
そこそこ忙しいがブラックって言うほどでもない中流企業に勤めていた、平々凡々な元サラリーマン『大角豆翔(ささぎかける)』二十八歳。元男。
――ただいま獣っ娘姿で異世界を爆走中であります。
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