第89話 リーシアと……検証、コントローラースキル

「なるほど、素晴らしきバグ聖女……いい響きです。憧れの母様に、一歩近づいた気がします♪」



 母に近づけたことを喜ぶリーシア……真実を言えないヒロの内心は、ヒヤヒヤものだった。


 話題を変えねばと、ヒロは話を無理やりぶった切る!



「そう言えば、僕も色々とスキルを獲得したんでした」


「ヒロもですか? どんなスキルを覚えたのですか?」


「僕もまだ、確認してないので見てみましょう。『ステータスオープン』」




 名前 本上もとがみ 英雄ヒーロー

 性別 男

 年齢 6才(27才)

 職業 プログラマー


 レベル :11


 HP:220/220(+100)(アップ)

 MP:170/170(+100)(アップ)


 筋力:150(+100)(アップ)

 体力:170(+100)(アップ)

 敏捷:150(+100)(アップ)

 知力:170(+100)(アップ)

 器用:160(+100)(アップ)

 幸運:145(+100)(アップ)


 固有スキル デバック LV2 (LVアップ)

       言語習得 LV2

       Bダッシュ LV3

       2段ジャンプ LV2

       溜め攻撃 LV2

       オートマッピング LV1

       ブレイブ LV1(ロック)

       コントローラーLV1(New)

       不死鳥の魂 (New)


 所持スキル 女神の絆 LV2

       女神の祝福 【呪い】LV10

       身体操作 LV4

       剣術 LV3

       投擲術 LV2

       気配察知 LV2

       空間把握 LV2

       見切り LV1

       回避 LV1




「身体レベルは上がっていないのに、ステータスが全てアップしてますね? 新しいスキルが二つ追加されてるから、これのおかげかな?」



 【不死鳥の魂フェニックスソウル

 何度死んでも蘇る、不屈の魂に与えられるスキル

 いかなる存在も、その魂を変質させる事はできない

 蘇生確率にプラス補正

 蘇生時に、蘇生ボーナスを付与 HP・MP+20 各ステータス+10

 蘇生時に体力回復効果




「不死鳥の魂、これのおかげですね。蘇生成功時にステータス上昇のスキル効果があるようですが……あまりお世話になりたくないスキルだな」


「死なないといけないスキルですか……あまり使い道がなさそうなスキルですね」


「死んで蘇るたびに強くなるって……虎魂トラコンボールの主人公より強くなる条件が厳しいですよ!」



 残念スキルに肩を落とすヒロ、次にコントローラーのスキルの詳細を確かめ始めた。




【コントローラー】 LV 1

 異世界のスキル

 対象者と一定の信頼度がある場合のみ使用可能

 コントローラーを介して対象者とつながる事が可能になる

 プレイヤーと対象者の心がつながった際、シンクロ率により能力に大幅な上昇効果

 プレイヤーと対象者の動きがシンクロした場合、魔法、スキルのMP消費なし

 時間経過で強制解除、一定時間経過で再使用可能

 レベルアップにより、能力の上昇値アップ・コントローラーの形状変化・プレイジャンルの変更可能




「んん? これって……『コントローラー』」


 ヒロがコントローラーの言葉を口にすると、右手が眩しい光に包まれ……光が収まると手の中に、いつのにかゲームコントローラーが握られていた。



「こ、これは……この丸みを帯びたフォルムとフィット感……独特なA、B、Cの3ボタン配置……まさにこれはギガコントローラー!」



 大興奮のヒロはコントローラーを握りしめ、カチャカチャとボタンの押し具合を確認し始めてしまった。



「ヒ、ヒロ、それはなんですか?」

「リーシア! よくぞ聞いてくれました! コレこそが至高! ゲーム機というひとつの完成形! ギガドライブのコントローラーです!」



 リーシアの質問にヒロは笑顔で答える。



「そ、そうですか……」


「はい! ボタンの押し心地はマズマズです。硬すぎず、柔らかすぎず、いい感じですよ! コントローラーの善し悪しは、ゲームクリアーに直結しますからね。コントローラー選びは重要ですよ!」


「よく分からないですが……良かったですね」



 ヒロの言っている意味が理解出来ず、当たり障りのない言葉でヒロの話をリーシアは受け流す。



「ところでヒロ、それで何ができるのですか?」


「何って、もちろんゲームを……ん? 確かにコントローラーだけあっても何もできませんね?」



 コントローラーはあれど、有線の先にはギガドライブ本体がない……コントローラーから伸びる配線の先をヒロが確認する。差し込みのジョイント部分は、ヒロの知る台形の形をしたギガドラコントローラーと形状は寸分も違わない。



「対象者との一定の信頼度? デバックスキルと同じだと考えると……」



 コントローラーの先とリーシアを、交互に見るヒロの頭上に豆電球が光った!



「な、なんですかヒロ?」


「リーシア、ちょっと試したい事があるのですが……」


「試したい事?」


「はい。このコントローラーの先に触れて見てください」



 ヒロがコントローラーのコネクター部分を手に持ち、その先をリーシアが触りやすいように差し出す。



「ん〜? 良いですよ。コレに触ればいいのですか?」


「お願いします」



 リーシアが何の警戒もなく、コネクター部分を指で触れた瞬間だった!



「え? やっ……だ……め、中にあっ……まっ……」



 リーシアが弱々しく、その場にペタンと座り込んでしまった!



「リ、リーシア! 大丈夫ですか!」



 突然の事にヒロも驚き、座り込みうつむいてしまったリーシアを心配して肩に手を置こうとするが……。



「だ、駄目! さ、触らないでください!」



 リーシアが肩に触れたヒロの手を払い除け、拒絶する。


 ヒロはわけが分からず、荒い息を吐くリーシアの様子を見守っていた。



「はあ、はあ、い……んん。何でこんな気持ち……はあ、ダメですこんなの……」


「え……リ、リーシア……」


 リーシアが顔を赤らめて目を潤ませていた。その可憐な口からは切なさそうな声を漏らし、身をよじらせながら何かに我慢していた。


 そんなリーシアの様子を見て、何となくヒロは察して様子を見守る……しばらくして、ようやく落ち着きを取り戻したリーシアが声を上げる!



「ヒロのばか! なんですがアレは! あんな、あんな……もうアレは禁止です! 絶対に禁止です!」



 凄まじい剣幕で、コントローラースキルの使用禁止を連呼してきた。そんなリーシアの顔は、まだほんのり赤く上気していた。



「ですがリーシア……このコントローラースキルは、もしかしたらオークヒーローとの戦いに役立つ可能性があります。その……何となくリーシアに起こったことは分かりますが、一回だけでいいですから、試してみましょう」


「絶対にイヤです! ヒロ! それ以上近づいたら蹴り殺します! 蘇生もしません! 近づかないで!」



 完全に拒絶状態のリーシア……だがヒロも生き残るため、なりふり構ってはいられない。なぜ自分たちが生かされているのかは分からない。だが、あの強敵オークヒーローを倒さなければ、自分たちに明日はないことをヒロは感じていた。

 

「リーシア……今の僕たちでは、オークヒーローを倒して生き残れる可能性が低過ぎます。ですが……このスキルがあればオークヒーローを倒す可能性に手が届くかも知れません。だから……試させてください!」


「絶対にイヤです!」


「そこをなんとか……先っちょだけでもいいですから!」


「バカですか? 先っちょだけでもお断りです!」


「お願いします! リーシアとしか出来ないんです。やらせてください!」


変態ヒーロー! ジリジリと近づかないで! それ以上近づいたら、本当に蹴り殺します!」



 コントローラーのコネクターを手に、距離を測りつつ、にじり寄るヒロ……距離を取るため、後ろに後退するリーシア。


 だが、狭い洞窟の中、すぐにリーシアの後退は洞窟の岩肌に阻まれた。



「リーシア……」


「ヒロ……れ、冷静になりましょう。私はヒロを殺したくありませんから! 何もそのスキルがなくても、オークヒーローに勝てる方法はあるはずです。落ち着きましょう」



 必死にヒロを説得するリーシア……その言葉を聞いて、ヒロは動きを止める。



「リーシア……分かりました」


「分かってくれましたか? 良かった。大丈夫です。ヒロと私の二人なら、そんなスキルがなくても、きっとオークヒーローを倒せます!」



 ヒロが諦めてくれたと、ホッとするリーシアに油断が生まれる!



「Bダッシュ!」



 至近距離からのBダッシュに、リーシアの反応は遅れた!


 そしてヒロの持つコントローラーのコネクターが、リーシアの胸に差し込まれる!



「リーシア、ごめん! オークヒーローに勝つためならば、僕は鬼になります! 許してください!」


「ヒロのバカァッ! イヤ! 入ってこないで! ……ダメです! ダ、ダメエエエェェェェッ♡」




〈リーシアの魅惑の嬌声が洞窟内に響き渡った!〉

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