第31話 スキルも秘密で一杯です!

「パーティーステータスオープン」


 英雄ヒーロー  

 HP 105/115

 MP 75/75

 

 リーシア 

 HP 450/450

 MP 230/230


 ヒロはナターシャに言われ、パーティーステータスを開くと、二人のHPとMPが視界の端に表示された。視界を動かすとステータスバーも動き、常に一定の位置に保たれている。


 ナターシャの話だと、遠くにまで離れなければ、常にパーティーメンバーの状態をリアルタイムで把握できるそうだ。


 ヒロにとっては、RPGの戦闘画面見みたいに、馴染み深いものに思え、何気なく自分の名前を指で触れて見ると、ステータス画面が表示された。



 名前 本上もとがみ 英雄ヒーロー

 性別 男

 年齢 6才(27歳)

 職業 プログラマー


 レベル :5


 HP:105/115(+45)

 MP:75/75(+40)


 筋力:62(+40)

 体力:82(+40)

 敏捷:62(+40)

 知力:62(+40)

 器用:72(+40)

 幸運:57(+40)


 固有スキル デバッグ LV 1

       言語習得 LV 1

       Bダッシュ LV 2

       2段ジャンプ LV 1


 所持スキル 女神の絆 LV 1  

       女神の祝福 【呪い】LV 10

       身体操作 LV 3 (New)



 自分がいつも開くステータス画面と同じ画面が表示され、試しにヒロはスキルを押してみる。



【二段ジャンプ】 LV 1

 異世界のスキル

 MPを消費して空中に力場を作りだし、再度ジャンプするスキル

 レベルが上昇でジャンプの高さ・飛距離が伸びる


【身体操作】 LV 3

 イメージ通りに身体を動かすスキル

 レベルにより動かせる範囲と効果が広がる

 LV 1 筋力操作

 LV 2 血流操作

 LV 3 脳内微電流操作



 ランナーバード戦で覚えた二段ジャンプと、マナの流れからの自力蘇生で会得した身体操作スキルの詳細が表示されていた。


『これは後で検証だなあ』と考えながら、とりあえずスキル表示を消して視界を確保する。


 ヒロはふと、パーティーメンバーのステータスも見られるのかと思い、リーシアの名前を押してみるが……。



【パーティーメンバーの許可がなければ閲覧できません】



 ……と、システムメッセージが表示された。



「ヒロ? 私のステータスが見たいのですか? いいですよ。いま許可します」


「良いんですか? 他人にステータスを見られたら困るのでは?」


「他の人は分かりませんが、私はステータスを見られても困りませんよ。それに私のステータスを見ても訳が分からないと思いますし……」



 そう語るリーシアの手が動き許可を出してくれた。



【リーシアのステータス閲覧が許可されました】



 ヒロはリーシアの言っている意味を確認するため、名前を押してステータスを表示してみる。




 名前 リーシア

 性別 女

 年齢 15才

 職業 バトルシスター


 レベル:20


 HP:450/450

 MP:230/230


 筋力:320

 体力:380

 敏捷:260

 知力:75

 器用:120

 幸運:45


 固有スキル 谿コの繝ゥ繧、繧サ繝ウ繧ケ

       天賦の才


 所持スキル 近接格闘術 LV 8

       発勁 LV 7

       震脚 LV 7

       蝗槫セゥ魔法(貊)LV 10




 リーシアのステータスを見て、ヒロは目を見張った。

 それは自分より高いステータスもそうだが、固有スキルと所持スキルにある文字化したみたいな箇所が目についたからだった。

 


「これは?」


「初めてステータスを見た時からこんな感じでした。まあ、害はなさそうなので気にはしてないです」



 ヒロは何となくパソコンで表示される文字化けに似ている事に気づき、スキルの詳細を見てみると……。



【エラー・・・・デバッグスキルを使用してステータスを修復しますか? YES /NO】



「え?……」


 まるでパソコンのエラー画面の様に、警告が表示され修復するかを聞いてきた。

 


「デバッグスキルは、確か固有スキルに表示されていたスキルだよな?」


 ヒロは自分のスキル欄にある、『デバッグ LV 1』の詳細を素早く開く。



【デバッグ】 LV 1

 特殊な職業に就く者しか取得できないレアスキル

 一度だけ他者のステータスを書き換える事が可能

 使用回数に制限があり……残り使用回数 1回



 やはりスキル説明欄の説明から、ステータスの書き換えと記載されている。

 とするとリーシアの文字化けしたスキルはバグと言う事になる。

 デバッグとは、プログラム中のバグや欠陥を発見し修復する事で、正常に動作させる作業を指す。

 つまりデバッグスキルを使用すれば、リーシアの文字化けしたスキルは修復され、使用できるようになる可能性が出てきた。



「どうしましたか?」


「いえ、僕のスキルでリーシアの文字化けしたスキルを、直しますかって表示されていて……」


「本当ですか⁈ ぜひお願いします!」



 リーシアは、長年の謎であったスキル表示が直ると聞くと、突然降って湧いた話に飛びついた。



「ですが初めて使うスキルなので、どんな結果になるか分かりません。スキルの説明を見ると一人につき、一度しか実行できないみたいですから……」


「やり直しが出来ないって事かしら? リーシアちゃん、少し考えた方が良いと思うわよ」



 ナターシャがリーシアを心配して声を掛けるが……。



「ヒロ、ぜひお願いします! 私はずっとこのおかしなスキルが、気になっていたんです。もし直せるなら直したいと、いつも思っていましたから……お願いします」



 リーシアは真剣な眼差しでヒロに懇願する。

 ヒロはそんなリーシアの願いを無下にはできなかった。



「分かりました。それじゃあ試してみますね」


「はい」



 リーシアの許可を得たヒロは早速『YES』を選択する。



【実行不可……信頼度が足りません】



「どうですかヒロ?」



 期待に満ちた目で聞いてくるリーシアにヒロは申し訳なさそうに答える。



「信頼度が足りなくて、修復できないみたいです。期待させておいて、すみません」


「そうですか……いえ、大丈夫です。元々あきらめていましたから、気にしないでください」

 


 互いに『ション』として肩を落とすヒロとリーシア……そんな二人を見てナターシャが元気付ける。



「まあまあ、いまは直せなくても二人の信頼度を上げればいいんでしょ? パーティーも結成したんだから。仲良くなってすぐに信頼なんて上がるわよ」


「ですね! ひろ、頑張って仲良くなりましょう」


「はい。頑張りましょう」



 そんな二人を見たナターシャは、もう十分仲が良い二人を部屋から見送ったのだった。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 時刻は夕方、留置場からの解放から、斧使いゼノンとのイザコザと事情聴取、パーティー結成と濃密な一日を過ごしたヒロとリーシア……ギルドにランナーバードとシカーンの買取を依頼して、随分と時間が経ってしまった。


 買取りカウンターでライムさんと再開したが、ヒロはできるだけ胸に視線がいかないよう頑張った甲斐があり、なんとか今回はリーシアの機嫌を損ねず済んだみたいだ。


 ライナーバードとシカーンは、腐らずに食べきれる分だけの肉を受け取り、残りは全て売却した。

 売却額が銀貨200枚と言われリーシアは大喜び、どうやらランナーバードから取れた魔石が、かなり上質で高値が付いたらしい。

 二人で話し合い、半分ずつ山分けする。


 ガイアの貨幣価値がまだ理解出来ないヒロだったが、リーシアの喜びようから、かなりの高額なのだと推測できた。換金も無事終了し冒険者ギルドを出る頃には、辺りはもうすっかり暗くなっていた。



「もう暗くなってますね。ヒロはこの後どうしますか?」


「特に決めてはないですが、宿を探さないとならないですね」



 初日に散々門前払いを受けたヒロは、今夜も宿を探す事になる。いっそ昨日と同じように留置場にと、ヒロは考えてしまう。



「ん〜、行く宛がないなら、孤児院に来ますか? ヒロが嫌でなければですけど……あと働かざる者食うべからずなので、泊まるなら何かしら働いてもらいますよ」



 徹夜には慣れているが、初めての事だらけで意外に疲れていたヒロにとって、リーシアの提案は願ったり叶ったりであった。



「ご迷惑でなければお願いします」


「はい、ビシバシ働いてください♪」



 孤児院と聞いて普通は嫌がられるものだが、以外にアッサリと笑顔でお願いをするヒロを見て、リーシアは嬉しくなる。

 上機嫌のリーシアに連れられて、ヒロは孤児院を目指すのだった。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




「ここが、私が住む孤児院と教会です」


 リーシアに案内され、町の端にある教会と孤児院にヒロはやって来た。

 教会の作りは、自分が元いた世界の教会とそう変わりがない。世界が違っても高い塔の上に鐘がある事は変わらず、類似点が多いことにヒロが疑問に思っていると、孤児院の方から誰かが走って来た。



「お帰り、リーシアお姉ちゃん!」


「リゲル、だだいまです♪」



 リゲルと呼んだ少年に、リーシアが抱き付いて挨拶する。

 


「止めてよ、リーシアお姉ちゃん恥ずかしいから!」



 リゲルは、恥かしいと言いながらもリーシアにされるがままである。そしてリゲルとヒロの視線が合わさる。


 リーシアだけだと思っていたら、知らない男の人がいることを不思議に思うリゲル……。



「あ! 忘れてました。こちらの人はヒロです。訳あって、今晩は孤児院に泊まってもらいます♪」



 上機嫌なリーシアの様子を見て、リゲル全てを悟り、思わず叫んでしまった。



「大変だよ! みんなあああぁぁぁぁ! リーシアお姉ちゃんが男を連れて帰ってきたよぉぉぉぉぉ!」




〈少女が勇者を連れ帰った時、孤児院に激震が走った!〉

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