第3話 輝き
ギガンティックドライブ……通称ギガドラ
それは社会現象にもなったウラコンよりも、三ヶ月早く発売されたコアなゲーム機だった……。
高い技術で開発されたゲーム機を例えるならば、大衆自動車のウラコンに対して、F1のギガドラと言わしめた程である。
老若男女問わず、ソフトのラインナップを充実させる事で、一般向けに開発されたウラコンに対して、ついて来れるコアなファンを対象にしたギガドラはソフトのラインナップが少なかった。
だが発売したゲームの完成度はとても高く、多くの名作ゲームを発売し、一般人お断りの名ハードとして、その名を世界に轟かせた!
媚びを売らない硬派なハードとして発売後、六年以上も一線を戦い抜いた、ゲーム機業界の勇者である。
コアなファンの期待を裏切らないため、拡張パーツを増設する事で、他社の次世代ゲーム機に対抗し続け……インターネットがまだない時代に、電話回線でゲームのダウンロードまでやってのけたのだ!
いま話題の最新フィットネスコントローラーを、20年も前に開発しており、時代の最先端を超えてしまい未来にタイムトラベルしてしまった。だが、行き過ぎた技術力が、一般大衆には全く認知されず、不遇の道を辿るハード……それがキガドラだった。
数多くの拡張パーツが発売されたのだが……どれもこれも高かった。その高額な拡張パーツを買い揃えることは、ギガドラに対するファンの信仰度を表す指標となるほどに高額だった。
最終形態である通称ギガドラタワーに至っては、ゲームの歴史に名を残すほどの総額と背の高さを誇る偉業であり、生きる伝説とまで言わしめたゲーム機……それがギガドラである!
「え? ぎ……ギガドライブってなんですか?」
「名ハードです!」
男は、寝起きではっきりしない意識の中で、耳元に届いた、『ギガドライブとは何ですか?』の問いに、瞬時に目を見開き条件反射で答えていた。
『キャッ!』と、一向に目を覚さない男の突然の覚醒に、女性は顔を上げながら驚きの声を上げた。
「ビックリしました。ああ……やっと目を覚ましてくださいましたね。良かった……いくら起こしても中々、目を覚ましていただけないので、どうしようと思っていたところです」
女性は優しい手つきで、男の頭に手を添え、微笑んでいた。
男は女性に
とりあえず
男は顔を赤くしながら、女性の
男は状況を確認しようと周りを見渡す。そこは見知らぬ部屋の中だった。白い壁が四方を囲んでおり、大きな扉が部屋の外と内を閉ざしていた。
壁に描かれた
入り口の扉から、赤い絨毯が奥にある
視線を目の前に戻すと、先ほど膝枕をしてくれていた女性と視線が合う。女性を一目見て、尋常でない美しい姿に男は思わず見惚れてしまった。
年の頃は十代後半だろうか……少し幼さが残る顔立ちで、腰まである青い髪を、後ろでひとまとめにしていた。いわゆるポニーテールと言われる髪型だった。
少し垂れ目ガチな瞳が、優しい印象を抱かせる。背は160cmくらい、胸は普通よりやや大きめだった。均整が取れたプロポーションを、白と青が基調となった服でその身を包みこんでいた。
その姿は人に安心感を与え、柔和な笑顔は見る者全てを優しい気持ちにさせる。つまり美少女がそこにいたのだ。
「まるで女神様みたいだ……」
「えっと、みたいではなくて……女神です」
はにかみながら、女神を名乗る女性は話を続ける。
「ちょっと失礼しますね。ステータスオープン」
女神は、手を自分の前で横に振ると、突然目の前にステータス画面が現れた。
名前 本上 英雄
性別 男
年齢 6才
職業 プログラマー
レベル 1
HP:50/50
MP:10/10
筋力:10
体力:30
敏捷:10
知力:10
器用:20
幸運: 5
所持スキル なし
「おおっ」と思わず声を上げてしまった。まるでRPGみたいに自分のステータスが空中に表示され、男は驚いていた。
「なんだこれ? まるでゲームのステータス画面みたいだけど……これはまさか僕のステータス? 自分のステータスが数値で見れるとは思わなかったな。なぜか体力と器用さが高いですね。プログラマーは体力が必須だから、一番数値が高いのかな? 器用さはキーボードを絶えず打ち続けていたからか?」
男は自分のステータス画面が空中に表示されたことに、あまり驚いていなかった。そればかりか、自分のステータス数値を考察する始末……筋金入りのゲーマー魂が、非現実的な事象を難なく受け入れてしまう。
そんな男の姿を見ながら、女神も男のステータス確認を始めるが……。
「え? 年齢が……6才? どう見ても20才はこえてますよね?」
コテンと首を傾げ、考え込み始めた女神。
出逢ってから、まだ時は立っていないのに、女神の頭上にはハテナマークが一杯で首を傾げていた……その仕草が可愛く、男は思わず笑顔になってしまう。
「
「閏年?」
「ズレた時間と月日を合わすための、調整日がある年の事です」
「ああ! 惑星の運行時間と暦を調整するシステムですね」
謎が解けた女神が満面の笑みを浮かべていた。顔の表情がコロコロ変わり、男は見ていて飽きない。
「何はともあれ初めまして、
「あの、すみません……違うんです」
「え? 何がですか?」
男は罰が悪そうに肩を落として、うつむいてしまった。それを見たセレスは、自分が何かしてしまったのかと思い、オロオロしてしまう……いちいち仕草が可愛いかった。
男はため息をつき、意を決して顔を上げ答える。
「名前の読みが違うんです……それ、
〈召喚された勇者は、キラキラネームだった!〉
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