即興小説

喜屋懐

お題:10のカリスマ 必須要素:ドア

物心ついたときから、俺は10という数字に愛されていた。


流行りのラーメン屋に並べば前から10番目。飛び乗ったタクシーのナンバーが1010。眠りに就くのはいつも10時10分。気にせずに生活していると財布の中には10円玉ばかり溜まっていく。

特に役に立ったことはない。むしろ、10という数字に縛られるために、不便なことの方が多い。

訂正しよう。俺は10という数字に呪われている。


薄暗い部屋の中にいた。

円柱状の部屋。天井からは頼りない裸電球が釣り下がっていて、俺を囲うように10つの扉が並んでいる。

――思い出した。

俺はこの"才能"を有効に使う方法を思いついた。

カジノだ。

ブラックジャックで10を引き続ければ、数字は必ず20になる。21――完璧なブラックジャックを引かれない限り、俺はずっと勝利することができた。

連戦連勝、カジノを荒らしまわった俺だったが、当然イカサマを疑われる。

だが証拠は出ない。俺にだってわからない仕組みなのだ。

「そのツケが、これか」

最後の記憶はカジノを出たところで殴り倒された記憶だ。


「10のカリスマさんよ」


声がした。

「君を囲む10つの扉の裏側には、数字が書かれているんだ。賭けをしよう。君が見事10の扉を引き当てたなら、君を解放しよう。イカサマでないなら、しかたない」


「やれやれ」

いいだろう。

俺は10という数字に愛されているんだ。

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