第16話 ソフィアの休日

服を選ぶソフィア┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈



(ノースタウン)



ソフィアは夢を見た。


"美しい着物を拵えた艶やかな髪の女性と話す夢を"



その女性はあの時見たシヴァの横顔に似ていた。



ソフィアはベットに起き上がってから夢から醒めず、放心状態で数分座ったままだった。





ソフィアは屋敷での日々と違い、充実した毎日を過ごしていた。


自分でカーテンを開け、自分でベットメイキングをし、顔を洗い、歯を磨く。


屋敷で着ていた貴族の服装ではなく、着たくて堪らなかった庶民の服。(勝手に着ていたが...)


服を3着ほど取り出し、何度も考えてから1着を選ぶ。


服に着替えたら、髪を整え、軽く化粧を施す。



準備ができたら鎧と剣の確認をして部屋を出る。




┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈



(チームシヴァの家)



ソフィアはチームシヴァの家の一室で生活を共にしていた。


西のゲストルームでソフィア、東のゲストルームで希麗と紅覇、2階の4つの部屋でシヴァ、ゾロロ、エド、カリティアの4人がそれぞれ過ごしていた。




ソフィアが部屋を出ると、シヴァが1人で冷蔵庫の中を見ていた。



「おはようございます、シヴァ」

ソフィアはシヴァに挨拶する。


シヴァはソフィアの方を振り返る。

「おはよう、ソフィア。ちょっと待っておくれ、ソフィアの朝ごはんも作るよ」



ソフィアは対面式のキッチンの前に座る。



シヴァは卵2つとベーコン、トーストを2切れ、用意する。


簡単に目玉焼きとベーコン、トースターで焼けたトーストを皿に乗せてソフィアの前に置く。


誰でもできそうな料理だが、料理をする感覚のないソフィアにとっては高度な業に見えた。



シヴァは自分の皿と2人分のコーヒーを持ってソフィアの隣の席に座る。


「いただきます」

シヴァはいつも決まって手を合わせてご飯を食べ始める。


ソフィアは疑問に思い、シヴァに尋ねることにする。

「シヴァ、そのいつも行う儀式は何ですか?」


シヴァは手を合わせたままソフィアの輝かせた目を見てしまう。

「これは僕の親友から教わったものさ。動物や植物の魂をいただき、今日も生かされていることに感謝する食べる前の儀式らしいさ。食べ終わったら"ごちそうさま"って言うのさ」


ソフィアはシヴァの話を聞き、"いただきます"の儀式を実践してみることにした。


奇妙な感覚であったが、悪い気はしなかった。




ソフィアは皆が作る朝食が好きだった。


今日もシヴァの朝食を実に嬉しそうに頬張っていた。



「ソフィアに朝食を作ると凄く嬉しい気持ちになるさ」

シヴァはソフィアの幸せそうに食べる姿が何よりも愛おしく見えた。


「シヴァ、あまり見られると恥ずかしいです...」

ソフィアは少し顔を赤くしてトーストを食べ続けた。





朝食を食べ終えたシヴァとソフィア。


シヴァはソフィアに尋ねる。

「今日は休日さ。ソフィア、何か予定あるかい?」


ソフィアはコーヒーを飲みながら答える。

「いいえ、特にはありません」


シヴァはソフィアに提案を持ちかける。

「ソフィア、行ってみたいレストランがあるんだけど一緒に行かないかい?」


ソフィアは嬉しそうに頷く。

「ええ、喜んで」


シヴァはソフィアの空いた皿を持って席を立つ。

「よし、決まりさ!ちょっとこれからマスターのところに行ってくる。6時に噴水広場で待ち合わせにしよう!」


ソフィアはシヴァに頷く。

「分かりました、6時に噴水広場ですね」




シヴァは皿を洗い終えると、家を飛び出して行った。




シヴァが家を出ていくと同時にカリティアが2階から降りてくる。

「あれ?おはよう、ソフィちゃん。朝は相変わらず早起きね...」


ソフィアはカリティアに話す。

「おはようございます、カリティア。あの、今日の夜なのでしが、皆さん何かあるのですか?」


カリティアはキッチンで水を飲みながら首を横に振る。

「ううん、特に何もないよ。あっ、女子会するんだった!ソフィちゃんも来る?」


ソフィアはカリティアにシヴァとの予定を話す。

「あ、あの...。シヴァとの約束があるのでお断りします...」


カリティアはソフィアに聞き返す。

「えっ、シヴァと...2人で...?」


ソフィアはコクリとカリティアに頷く。


カリティアはソフィアの目を見て話し始める。

「ソフィちゃん!それ多分、デートの誘いだよ!2人でディナーでしょ?」


ソフィアは顔を真っ赤にしながら席を立つ。

「そ、そうなのですか!?えっ、これはどうすればいいのでしょう?」


カリティアはソフィアに言う。

「どうするって簡単よ。勝負服でシヴァの心を落とすのよ!」


ソフィアは見たことないほど動揺する。

「あ、あの...、恥ずかしいのですが、生まれてからデートなどしたことがないものですから...。デートとはどのようなものなのでしょう?」


カリティアは顎に手をあて、考えてから話し出す。

「分かった。ソフィちゃん、私たちに任せて!必ずデートを成功させて見せる!」


ソフィアはカリティアに頭を下げた。

「よろしくお願いします、カリティア師匠」



こうしてソフィアの休日が始まった。







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(ノースタウン ファッションロード)



ソフィアを連れてカリティア、希麗、紅覇の3人はノースタウンのファッションロードであるラビットロードを訪れていた。


至るところにウサギの彫刻やペイントが施されたこの場所は白聖国(はくせいこく)北部では1番のファッション街であった。





ソフィアたち4人はランチ女子会を開催し、カフェで作戦を立てていた。



ソフィアか朝の出来事を希麗と紅覇に話すと、2人はとても嬉しそうにソフィアのことを見つめる。


「えっ、凄く良いじゃない!ねえ、ソフィアちゃんはシヴァくんのこと好きなの?」

希麗は単刀直入に本心を迫る。


「えっ、それは...、その...」

ソフィアは分かりやすく顔を赤くして目の前のジュースを一気に飲み干す。


紅覇は目を輝かせてソフィアに言う。

「素敵、ソフィアとシヴァのカップル」


カリティアは希麗と紅覇に作戦を伝える。

「そこでよ。私たちの可愛いソフィちゃんをもっと可愛くしてシヴァの心を鷲掴みにするのよ!いい考えでしょ?」


希麗はかなり乗り気であった。

「うんうん、面白そう!で、どうするの?」


紅覇もカリティアに尋ねる。

「紅覇たち、プレッシャー」


カリティアは希麗と紅覇に宣言する。

「ソフィちゃんの勝負服を買う!そしてユグさんにメイクして貰う!どう!?」


希麗と紅覇はカリティアに拍手を送る。


ソフィアは皆に尋ねる。

「ユグレッドさんにメイク?とは?」


カリティアはソフィアの手を握って話し始める。

「あの人はメイクの天才よ!ソフィちゃんのメイクなんて嬉しくて舞い上がること間違いなし!」


ソフィアはカリティアにシヴァの予定を話す。

「シヴァがユグレッドさんに会うって言ってましたが...」


カリティアはすぐに通信機を取り出して電話をかける。

「もしもし、エド?今すぐにシヴァを港に連れ出して!ゾロロと協力して時間を潰して!理由なんてどうでもいいでしょ!?さっさと動きなさい!」


カリティアは電話を切るとソフィアに親指を立ててグッドポーズをとる。


ソフィアはこの時、先が思いやられた...。




始まったデート大作戦!?┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈






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※通信機について


通信機とは...、


好きなアクセサリーに、"通信機の魔法陣" を刻み、それで連絡をとっている。


通信機の魔法陣 には、一人ずつに8桁の番号が円形に描かれており、それが個人番号になる。


他の人に連絡する際は、相手の8桁の番号を通信機を起動した状態で、頭の中で唱える。


通信機には、基本的に電話の機能しかない...。





また、通信機の特徴として


あえて同じ番号を刻み、同番号内のみの回線を作ることも可能である。


この場合は番号を唱える必要はなく、通信機を起動したら自然と繋がる。

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