第4話 狩人ギルド "DW"
帰還するシヴァとユグレッド┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
(白聖国 ノースシティ ノースタウン)
白聖国(はくせいこく)の中には、特別区が4つだけ存在する。
特別区には必ず狩人ギルドが存在し、地区内で独自の法律が認可されている。
ここは、北の"ノースタウン"。
狩人ギルド"DW(ドラゴンウォーリアーズ)"のホームタウンである。
DWは、4つのギルドの中で最も歴史が浅く、最も人気のないギルドである。
二代目ギルドマスターである"ユグレッド・クリスタル"は、初代ギルドマスターの実の娘である。
ノースタウンに到着するシヴァとユグレッド。
ノースタウンは運河に囲まれた都市で、可動橋を渡った先にある。
街の中心には噴水の広場があり、噴水の奥には円柱形の木造の建物のギルド本部が設けられている。
11月のノースタウンは、日が短く、既に雪が降り積もっていた。
「ただいま」
シヴァはノースタウンに入ると思わず呟いた。
「おかえり」
ユグレッドはシヴァの漏らした言葉に話し返した。
シヴァとユグレッドは帰ってくるなり、迷わずギルド本部に向かった。
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(DWギルド内)
ギルドの中にユグレッドとシヴァが入ると、DWの狩人たちが集まっていた。
「皆、たっだいまー!」
ユグレッドは高らかに帰宅を宣言する。
「お帰り、ユグレッド!それにシヴァ!どうだった?祝賀会は退屈だっただろ?」
1番に話しかけてきたのはシヴァの1つ前の先輩の"レベッカ・マーガレット"である。
レベッカは白聖国始まって初の褐色肌の女性狩人である。
性格は男の中の漢で、酒癖の悪さはユグレッドに引きを取らない。
「ただいまさ、レベッカ!退屈って訳では無かったけど楽しいものではなかったさ...」
シヴァは頭を掻きながら近くの椅子に座る。
「そっか...。まあ、無事に帰ってきて良かった!」
レベッカは珍しく人のことを心配していたらしい。
「何だ、今日は随分と仲間思いなんだな?レベッカ」
レベッカに話しかけたのは、"グフォル・グリスベン"。
ユグレッドよりも先輩の狩人で、レベッカとはコンビを組んで狩猟に当たっている。
「うるせぇ!オッサンに言われたくない!」
レベッカはガニ股でグフォルに対して怒る。
「おい、10代の女がそんな格好をするもんじゃないぜ。ちょっとは身のこなしにも気を使え...」
グフォルは頭を抱えながらレベッカの未来を心配した。
「相変わらず仲が良いな。お似合いじゃないのか?グフォルにレベッカ」
嫌味たらしく話しかけてきたのは、"イーサン・ブレッド"
長い髪を1つで束ねた好青年は、ユグレッドの1つ後輩、レベッカの先輩にあたる。
「あんっ!?馬髪野郎、今なんて言った!?もういっぺん言ってみろ!」
レベッカはイーサンにこれでもかと言うほどのメンチをきる。
「聞こえなかったのか?だったらもう一度言ってやるよ、猿女!相変わらず脳のない猿みたいな奴だな!」
イーサンはレベッカを挑発する。
「てめぇ!表出ろ!今日こそぶっ倒してやらぁ!」
レベッカは身長と同じ大きさの大剣をイーサンに向けて構える。
「上等だ。真っ二つにしてやる!」
イーサンも黒く染まった太刀をレベッカに向ける。
「2人とも、その辺にしておけ」
2人の喧嘩を止めに入ったのは、"ユーゴ・ルーカス"
昔はカッコよかったであろう雰囲気のある金色短髪のダンディな男性狩人だ。
ギルド内ではユグレッドの次に実力がある人物である。
「ちっ、分かったよ!」
レベッカは大剣を魔法陣の中に納める。
「この勝負はまた次の機会だ。まあ、俺が勝つのは決まっているがな」
イーサンは黒刀を鞘に納めながら再びレベッカを挑発する。
「何だと!?」
レベッカはイーサンの挑発に簡単に乗ってしまう。
2人が揉める声がギルド内に響き渡る。
ユグレッドはギルドの奥にあるバーカウンターに向かって歩いていく。
バーカウンターに座ると、グフォルがユグレッドにウイスキーを手渡す。
ユグレッドはグフォルからウイスキーの入ったグラスを受けとると一気に飲み干す。
カウンターにグラスを勢いよく置くユグレッド、色んな方向を見てから一言呟く。
「あれ?シヴァがいない...」
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(ノースタウン シヴァ自宅)
シヴァは何人かと共同生活を送っている。
一緒に生活しているのは、シヴァの狩人の仕事を手伝ってくれる人ばかりだ。
シヴァと彼らは自らを"チームシヴァ"と名乗っている。
シヴァは自宅の玄関の扉を開く。
「ただいま、帰ってきたさー!」
シヴァは家の中にいるチームシヴァの皆に帰宅したことを伝える。
「おー、お帰りなさい。ねぇ、どうだった?」
シヴァを出迎えてくれたのは、"奏希麗(そうきれい)"
彼女は、隣の華の大陸(はなのたいりく)出身で、医学の知識が豊富な薬剤師である。
シヴァに命を助けられた恩返しがしたいと狩人の活動に協力している。
シヴァは少し考えてから話した。
「うーん、楽しかったのか楽しくなかったのか分かる前に追い出されてしまったさ...」
希麗はシヴァの話を聞いて笑った。
「ふふふふ、シヴァらしいじゃない。あっ!今朝みんなで釣った大きな魚でね、スープを作ったの。食べる?」
シヴァは目を輝かせてキッチンに走った。
「もちろん食べるさ!」
フロントを抜けると大きなフロアがあり、左手に対面式のダイニングキッチンが広がっている。
対面式キッチンの外にはプール付きの小さめの庭があり、キッチンの奥には2つのゲストルーム、螺旋階段があり、階段を登るとシヴァたちそれぞれの個人部屋がある。
キッチンへ向かうと共同生活する全員が揃っていた。
「やっと帰ってきた、待ったわよ」
最初に話しかけてきた彼女は、"カリティア・メーテル"
褐色の肌の彼女は、盗みを繰り返した泥棒。しかし、シヴァが盗みも役に立つと仲間に引き入れたのをきっかけに狩人の活動に協力している。
彼女は生まれ持ち運転技術の習得が桁外れに優れており、機械は何でも自由に動かせる。
「おかえり、シヴァ」
続いて話しかけてきたのは、"紅覇(くれは)"
紅髪の珍しい種族に生まれた彼女。殺戮宗教団体"無教(むきょう)"に捕虜として囚われていたのをシヴァに助けられたことがきっかけで仲間になる。
僅か13歳だが、その腕力は熊の2倍とも言われる戦闘民族の育ちであり、荷物などを運ぶのを手伝っている。
「さあ、食べてくださいっス。この魚美味いっスよ!」
チャラ男のような話し方の彼は、"エドワード・スレイ"
褐色の肌に金髪、耳にはピアスをした自称オシャレ。性格はビビりで弱虫、しかし料理の腕は一人前。
海賊街で生まれた彼は世界を巡ることを夢見ており、シヴァについてくることを懇願して仲間になっている。
「あれ?ゾロロはどこに行ったのさ?」
シヴァはもう1人の仲間について皆に尋ねる。
"ゾロロ・オリンピア"
僅か17歳にして世界一の情報屋。
白聖国の隣国"黒聖国(こくせいこく)"で軍部から直接彼に依頼するほどの信頼された人物。
つまらない情報ばかり収集することに嫌気がさした彼は、シヴァの"夢の中の親友を元の世界に戻したい"という願いに興味を持ち、狩人の活動に協力している。
シヴァが尋ねると同時にゾロロが帰宅する。
慌てた様子でゾロロはシヴァに伝える。
「おい、シヴァ!貴族の連中が街にやってきたぞ!?」
突然の報告に戸惑うシヴァたち。
波乱の予感...。┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
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※刺青(いれずみ)※
魔法道具の契約、魔法武器の契約をした際に体に出現する模様のこと。
お洒落の入れ墨とは違い、道具を契約している限り消せない。
例外も多く、強力な魔法を発動した時のみ出現する刺青や、生まれた時から刺青があるなど様々である。
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