嗚呼、愚鈍
とある中学生(わたなべ)
幼少期
泥水に支配された人生。
その総ての出処は、産声を上げた瞬間、いや、或いは、母親の子宮の中に胎児として形成された時点で、自分の人生は並大抵では無い事が既定の事実であったのだと思われます。
関東地方の南西部に位置する県で産まれた自分は、恐らく、片手で数えるには十分な歳の頃までそこに住み続けていました。
その歳の頃の出来事で、鮮明に記憶しているのは、事情を伝えられること無く、黒の機体に乗せられ、機内で知らぬ間に置いてあった塗り絵をしていた事、だけです。本当にただそれだけなのです。幼い頃の事は、数年、また更に数年経つと忘れてしまう、とよく聞きますが、自分は、小学校の入学式よりも、いつかの家族旅行で行った場所よりも、その、塗り絵をしていた、という事実の方が鮮明に記憶されているのです。それが何故だか、自分には到底理解出来ませんが、その記憶がある事に、少しの恐怖を抱いているのです。
その他に記憶があるか。そう問われて、精一杯頭を巡らすと、出てくるのは、幼稚園に通っていた頃に、幼稚園教員に叱りを受けた、という事です。無論、それは良い思い出では無いですが、何故だか、憶えているのです。自分の記憶が正しければ、お茶が入ったコップを手に持ちながら廊下に出て、そこでお茶を零した事が、叱りを受けた原因なのでした。自分はその当時、幼稚園教員に対して、怨み、というのは大袈裟かも知れませんが、それに近い感情を抱いていました。恐らく、この頃から自分は変わり者で、所謂普通とは違う人間なのでした。然し、その事に気付いた時には、
嗚呼、愚鈍 とある中学生(わたなべ) @Watanabe07
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