人が苦手なぼっち君何故か美少女に世話をされる

@yamanara

始まり

第1話出会い


 僕は、人が苦手だった。いや、苦手になったんだ。


 昔は、仲のいい友達や彼女なんてものもいた。けど、今は素で話せる友達なんて呼べる人なんて、1人しか居ない。


 もちろん、彼女なんてもってのほかだ。


 親は僕のことを気遣って、高校では地元から離れて、遠くのところで、1人暮しをしている。


 高校でも、もちろん僕が人が苦手なことは、変わらなかった。変わろうと努力して、バイトも高校生になってから、初めてみた。


 バイトは、大手のハンバーガーチェーン店で働くことになった。


 初めの頃は、上手く喋れなく、よくお客さんに怒鳴られていた。だけど、店長は僕のことを知っているので、よくフォローしてくれた。


 ようやく3ヶ月半たった頃には、仮面を被って話す感覚で、話せるようになった。


 けど、それも知らない人に対してだ。知っている人なら、上手く喋れない。喋れたとしても、2歩3歩距離をとった話し方しか出来ない。




 そんな日々の中、高校はもうすぐ夏休みに入ろうとしていた。


「なあ、和人お前夏休みに、なにか予定はあるのか?」


 今話しかけてきたのは、僕の唯一の友達の、七瀬 優だ。優だけは、初めて家族以外で、僕を見てくれていた。


 そのお陰で、優とだけは、しっかりと話すことができる。


「予定なんてないよ。バイトをして、本屋に行って、家で宿題をやるだけかな。そう言う優は、なにかあるの?」


「俺か? 俺は、愛衣とデートぐらいかな。そうだ。和人も一緒に、夏祭りとか行かねえか?」


 愛衣って確か、優と同じく活発的な子で、優の彼女だったっけ。


「僕はいいよ。2人で、楽しんで来た方がいいでしょ。それに、カップルと一緒に行くと、なんだか気まずいし。」


「そうか? 愛衣なら、全然OK出すと思うけどな。まぁ、和人が言うなら、しょうがないか。」


 そんなことを、話していると担任教師が入ってきた。


「全員席に着け〜。今から、帰りのHR始めるからな〜。」


 これで、明日から夏休みか。まぁ、夏休みと言っても、僕はいつもと変わらない日々を、送るんだろうけどな。


「明日からは、夏休みだが全員、ハメを外しすぎないようにしろよ。あと、宿題は早め早めに取り組んでおくんだぞ。以上、解散。」


「起立、ありがとうございました。」


「「「「ありがとうございました。」」」」


 ふぅ、やっと終わったか。これから、バイトだから早くいかないとな。




 学校からバイト先まで自転車で、約1時間離れている。家からは、徒歩10分程度の距離にある。


 家の近くには、図書館だったり、スーパーだったり、いろいろと揃っているので、生活がしやすい。




「店長、今来たので、すぐに入りますね。」


「あぁ、和人君か。今日は、確か6時までだったよね。」


「はい、それであってます。」


「そうか、そうか。それなら、時間まで頑張りなさい。」


「はい。」


 ここの店長は、よく店員のことを、把握していて、気を使ってくれる人だ。そのおかげで、ここのバイトは、働きやすい。


 さてと、今日も頑張るか。




 おっと、もうすぐ6時か。今日も何事もなく終わったな。


「店長、6時なのでもう上がりますね。」


「お、もうそんな時間か。今日も、ありがとね。」


「いえ、それではお疲れ様です。」


「おつかれ〜」


 今日は、他にやることないし、弁当でも買って、家にでも帰るか。



 ん? あれは、同じ学校の子か。あんな所で、しゃがんで何してるんだ?


「うぅぅ、この子どうしましょう。こんな所で、置いていくなんて、出来ませんし、、、」


「ミャー、ミャー。」


 捨て猫か。ご丁寧に、ダンボール中に入れて、「拾って上げてください。」なんて書いてある。


 なんで、こんな所に置いておくんだよ。親戚にでも引き取って貰えよ。可哀想じゃないか。しょうがないか。


「あのぉ、どうかしましたか?」


「えっ、いや、その、猫ちゃんがこんな所に捨ててあって、どうしようかと。」


「そうなんですか。自分の家には、持って帰れないんですか?」


「それが、私の父が猫アレルギーでして。」


「そうなんですか。それなら、僕の家で面倒を見ますよ。」


 僕の家は、生憎1人暮しなのに、一軒家に住んでいる。だから、部屋は腐るほどある。


「そんなんですか! なら、この子のことを、よろしくお願いします。あっ、そう言えば自己紹介がまだでしたね。私は、遠山 楓って言います。」


「僕は、篠原 和人です。遠山さんって、同じ学校の学年1位だった子だよね。」


 遠山さんは、うちの学校では、知らない人は居ない、有名人だ。


 成績優秀で、人当たりもよく、優しくて美少女なので、特に男からは、人気がある。


「そうですけど、もしかして、同じ学校の1年生ですか?」


「そうだよ。じゃあ、僕は買ってくるものが増えたから、そろそろ急ぐね。」


「そうですね。」


「それじゃあ、さようなら。」


「あっ、あの猫ちゃんを、拾ってくれてありがとうございます。いつか、お礼をさせてください。」


「いいよ、お礼なんて。ただ、猫を拾っただけだからね。それじゃあ。」


「はい、さようなら。」



 あっ、親に許可取るの、忘れてたな。


 そう言えば、遠山さんとは、普通に話せたな。なんでだろう。まぁ、いいか。どうせ、話すことなんて、もうないんだから。



 そんなことを、思っている和人だが、そんな予想は、いい意味で外れることを、今は少しも思わなかった。

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