リンちゃんと惑星レトロナ Fractal.2
白い滞留が
『此処が〈惑星レトロナ〉か』
雄大な満ち引きが入江に浸食を食い止められ、波打ち際の境界付近は灰色に拓かれた人工地が利便の支配を誇示しとる。
その先端には、結構、大規模な敷地を
おそらく、アレを造る
だって、周辺を囲うように森林は手付かずやもん。
「ホンマや! 旧暦そっくりや! あ、東京タワー在る! スカイツリーや! ほんでもって、通天閣も在る!」
『待て待て待て!』
『ね?』
『クル! コクンと「ね?」じゃないッつーの! どうして全国名所が一緒くたに乱立してるッ?』
『……』
『…………』
『ね?』
『クルコクンで「ね?」して誤魔化すな!』
せやねん。
あの建築物の敷地内、世界名所だらけやねん。
大きさは均衡化しとるようやけど。
ほんでもって、どれも、おそらく
「あ、奈良の大仏様や! 自由の女神や! エッフェル塔や! スフィンクスや! お台場ガ ● ダムもある!」
『カオス増やすなーーッ!』
『天条リン、旧暦通り』
『なワケあるかーーッ! 世界各国の国境無視じゃないのよ!』
『おかしい? 旧暦では、世界名所は一ヶ所へ
『どんな誤認よ! 世界名所は、
「あ! ウチ、
『そう、
『はぁ?』
「『東武ワールドス ● ウェア~ ♪ 』」
『ハモるなーーッ!』
リンちゃん、プリプリや。
何で、そないにカリカリしてんのん?
ええやんな?
世界の名所、一網打尽や ♪
と、突然、けたたましいサイレンが辺り一面へ鳴り響いた!
コレ、明らかに非常事態警報やんな?
ウチでも解るよ?
えへへ ♪
『な……何よ? コレ?』
出所を求めると、どうやら眼前の名所地帯からや。
すると〈奈良の大仏〉と〈自由の女神〉と〈お台場ガ ● ダム〉がマトリョーシカみたいに前後へ割れ開き、中から三機の戦闘機が垂直に飛び立った。
……格納庫だったん?
っていうか、最後のええのん?
戦闘機は、こちらに向かって来る。
あの世界名所敷地は〈東京タワー〉〈スカイツリー〉〈通天閣〉の尖先からピンク色のエネルギー光を放出し、それをバリアと張り巡らせた。
『現れたな! レトロナ星人!』
尾翼に『1』書かれてると赤いジェットマシンが、外部スピーカーで叫びはった。
ウチ、ワクワクして周囲を探したよ?
「宇宙人? ドコ?」
『はい』
無抑揚に手を挙げるクルちゃん。
「ふぇぇ? クルちゃん〈宇宙人〉やったの? ウチ、気付けへんかった ♪ 」
『
「ウチも?」
『そう』
「
クルちゃんに教えたった ♪
ウチ、物知りさんや ♪
えへへ~ ♪
『
淡白に返されたよッ?
ウチ〝変〟
ふぐぅ!
『……その定義はともかくとして、どうやら
リンちゃんは緊迫した面持ちで、接近して来る戦闘機を睨み据えとった。
『
『場合によっては……ね。アイツらの出方次第』
『……了解した』
クルちゃんは、軽く
『天条リン、その前に解決しなければならない問題が出来た』
『はぁ? ったく、アンタは……どうして毎回、切羽詰まった局面で新たなトラブルを提示するかな? 何よ! そのトラブルって?』
『あれ』
『うん? ……って、モモーーーッ?』
ウチ、相手の隣に並び飛んだ。
ほんでもって、外部スピーカーで挨拶した ♪
「こんちは★」
『な……何ッ? こちらの間合いに詰めただとッ?』
『気を付けろ! ケイン! どうやらソイツは〈瞬間移動能力〉を持っているようだぜ!』
主翼に『2』書かれたジェット機から忠告が向けられた。
『ああ、分かってる! ジョニー!』
持ってへんよ?
ウチの〈イザーナ〉に、そんな
普通に近付いて並んだよ?
「あんな? ウチ〝
『な……何ッ? 少女……だと?』
『気を付けろ! ケイン! どうやら、ソイツは〝少女〟に化けて隙を突く作戦のようだぜ!』
『ああ、分かってる! ジョニー!』
『フッ……しっかりしてくれよ?
化けとらへんよ?
ウチ、正真正銘の〝少女〟やよ?
「えへへ ♪ 1号機はん、名前〝ケイン〟言うの?」
『な……何ッ? どうして、俺の名をッ?』
……言うてはったやん。
散々〝ケイン〟〝ジョニー〟言うてはったやん?
『気を付けろ! ケイン! おそらく〈テレパシー〉……それも、機体外からの介入だ! どうやらソイツは、とんでもない〈
『ああ、分かってる! ジョニー!』
ウチ〈
「あんな? ウチ〝レトロナさん〟やあらへんよ?」
『な……何ッ? レトロナ星人じゃない……だと?』
何で、この人は、いつも驚愕しはるの?
ほんでもって、何で、その
『冷静になれ! ケイン!』
『し……しかし!』
『オマエの言い分は分かる……だが、いまは、まだレトロナ星人との和解共存は無理なんだ! 例え、彼女のような平和思想のレトロナ星人でもな!』
『クッ! どうして……どうして
生まれてへんよッ?
寝耳に水な設定やよッ?
『戦うしかねぇ……こんな時代に生まれちまった事が、彼女の不幸だったんだ』
『す……済まない! 許してくれ!』
勝手に〝不幸な身の上〟にされた!
ケインはんに男泣きされた!
『こうなったら……ジョニー! レトロナ合体だ!』
『オウ!』
何が「こうなったら」なん?
そんな思うとったら、三機のジェットマシンは垂直軌道に高々と飛翔した!
『レェェェーーッツ!』『チェェェーーンジレトロナ!』
『レトロイィィィーーン!』『スイッチオーーン!』
掛け声バラバラやッ!
せやけど合体プロセスは発動した!
よっぽど頭のええ音声認識やんね?
機体が黄色いスパークを帯び、それが各機を
重々しい合体!
1号機は頭部となり、2号機は両腕と化し、その他の部位には3号機が…………3号機の負担、半端ないよ?
『レェェェトロォォォナ……ファァァイブッ!』
雄々しくポーズ決めはった。
ええねぇ? ノリノリで?
ウチなんか「乙女の奇跡!」とか、やりたないねん……。
『さぁ、行くぞ! レトロナ星……グァァァッ!』
『どうした! ケイン!』
『み……右手が! 突然!』
『何ッ? まさか! ヤツの
『い……いや、吊った!』
『何……だと?』
『グァァァアアアアアーーーーッ! 俺の腕がァァァーーーーッ!』
ウルサイよ?
森から野鳥が一斉に飛び立ったよ?
ほんでもって、何で〈ロボット〉自体が手首押さえて苦悶してはるん?
『そうか……そういう事か! 俺達は三日三晩徹夜でジェ ● ガ大会をしていた──その極秘情報を得る
何してんのん?
操縦幹が握れなくなるほど、ジェ ● ガ
『汚ねぇ……やり方が汚ねぇぞ! レトロナ星人!』
知らへんよッ?
『フッ、正々堂々戦ったらどうだい……レトロナ星人さんよォ!』
ウチ、何で因縁付けられてんの?
ほんでもって、何で、この〝ジョニー〟言う人、いつも斜に構えとんの?
「ふぐぅ! ウチ、知らへんもん! 何も悪い事しとらへんもん!」
『キュウ! キュキュキュキュウ!』
ウチと〈イザーナ〉は、揃って抗議した!
プンプンや!
『往生際が悪いぞ! レトロナ星人!』
「
『キュウ! キュキュキュウ!』
『もう騙されないぜ!』
「
『キュウ! キュキュウ!』
『なんて卑怯なヤツなんだ!』
「
『キュウ! キュウ! キュウ!』
ウチ、何や悲しなってきた。
また〝新しい友達〟出来る思うただけやのに……。
怒鳴られて……疑われて……決めつけられて…………。
「ふぐぅ……ふぇぇ……ふぇぇぇ~~ん! リンちゃ~ん! うわ~ん!」
泣いとった。
涙腺、我慢出来ななった。
『キュウッ? キュ~ウ? キュ~ウ?』
一所懸命〈イザーナ〉が「いいこいいこ」慰めてくれんねんけど、涙が止められへん……。
悲しくて……悲しくて……ただ泣いとった。
「リンちゃ~ん! リンちゃ~ん! うわ~ん!」
『今度は泣き真似か!』
『猿芝居は
「うわ~ん! リンちゃ~ん! リンちゃ~ん! うわ~ん! うわ~~ん!」
『アタシのモモを泣かせんなーーーーッ!』
『ケルルルルルルルルッ!』
グス……グス……あ、リンちゃん?
リンちゃんと〈ミヴィーク〉が、怒り心頭で特攻して来た!
『何ッ? 増援……だとッ?』
『気を付けろ! ケイン! どうやら──』
『やかましいィィィーーーーッッッ!』
『『グハァァァーーーーッ?』』
問答無用の
そのまま高音速で巨大ロボの足下を突き抜け、衝撃波の槍と化した!
螺旋に墜ちて行く鋼鉄の巨体。
『グアァァァ……何ィィィッ? 墜ィィィ落……だぁぁぁとぉぉぉーーッ?』
『グアァァァ……気を付けぇぇぇろ! ケイィィィン! どうやぁぁぁら──』
海面に「押すなよ? 絶対に押すなよ? ……押せよッ!」みたいな
「グス……グス……ふぐぅ……リンちゃん……」
『ったく、アンタは! だから、ヒョイヒョイ行くなッつーの!』
「せやかて、ウチ〝お友達〟なれるか思うたんよ?」
『この脳味噌よいこのえほん娘! 少しは警戒心を持て!』
「ふぐぅ……ごめんなさい」
『……反省、した?』
「……うん」
『よし! そんなら許す!』
「あ、あんな? リンちゃん?」
『何よ?』
「えへへ ♪ ありがとね?」
『べ……別に
リンちゃん、視線逸らしたよ?
何故か、ほっぺ真っ赤やよ?
何で?
「あ、ほんでな? リンちゃん?」
『な……ななな何よ?』
「ウチ〝レトロナさん〟やないよ?」
『……知ってるッつーの』
今度は苦虫顔された。
リンちゃん、百面相
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