ウチと惑星テネンス Fractal.7

「Gモモ!」「Gリン!」

 滞空した二人はキュートな名乗りを飾る!

 巨体戦に対処すべく〈Gフォルム〉になった!

『グスッ……グスッ……何で復活したばかりで、いきなりこんな目に……って、ああーッ? またしても巨大化したな! 〈イルカ娘sっこーズ〉!』

「それ、やめてぇ! ウチ、恥ずかしい!」

「ってかアンタ、いま泣いてなかった?」

『ななな泣いてないよッ? フハハハハハッ! この〝宇宙の帝王になってみたい男〟が涙など見せるか! そのような惰弱さは、とうにブラックホールへ投げ捨てたわ! 笑止! 笑止笑止笑止ッ!』

 笑止はええけど、さりげなく夢の規模が縮小してたよ?

『ねー? アリっこ? ワシ、泣いてないよねー?』

「私に振らないで頂けますッ?」

 足下から、思いっきり傍迷惑はためいわくそうな拒否が返ってきはった。

「貴様! 気安くわれのアルへと語り掛けるな!」

 ハッちゃん、即座に嫉妬反応。

「ねー? アルは、私のだもんねー?」

「一ミリたりとも貴女あなたのじゃありませんッッッ!」

 本家炸裂も、見事に撃沈で地面に〝の〟の字や……。

 って言うか、何でドクロイガーはんも〝の〟の字書いてるんッ?

 何で二人ふたり同調シンクロ膝抱ひざかかえとるんッ?

「あー……もう、何だかな? この混沌カオス?」

 Gリンちゃん、こめかみ押さえとる。

 せやけど、ウチも同感や。

「ったく、もーいいわ。ねぇ、ドク郎?」

『変な呼び名を付けるなッ!』

 ……ウチには付けたクセに。

「アンタ、その〈ネクラナレーダー〉とやらをよこして帰んなさいよ?」

『……とんでもない提案しだしたな、オマエ?』

「いいから、よこせ? そんでもってゲットバック! ハウス!」

 Gリンちゃん、犬扱いや。

『ウキィィィーーッ! 何だ、このアホ臭い展開は! もういい!』

 ドクロイガーはん、キレはった。

 何やろ? この既視感きしかん

『……みんな壊してやる』

 寄せはった!

 低い抑揚で凄んで〝本家〟に寄せはったよッ?

『喰らえぇぇい! ドクロバァァス──』「アホかーーッ!」『トォォォーーーーッ?』

 りきんだ発射体勢を構えた途端とたん、Gリンちゃんからの顔面ハリセンスパーーン!

「何考えてんのよ! アンタ! 宇宙空間ならいざ知らず、こんな場所で撃ったら山火事大惨事だッつーの!」

『ぅぅ……グスッ……』

 鼻頭押さえて泣いてはった。

 ブラックホールへ投げ捨てたんやなかったの?

『だ……だったら〈ドクロブレード〉ならいいですか?』

「よし、許す」

『ははぁ! ありがとうございます!』

 土下座謝辞や。

 っていうか、何で〈敵〉に武器の使用許可求めてはるん?

 何で〝主従関係〟みたいになってはるのん?

『フハハハハッ! 行くぞ! ドクロブレェェェード!』

 半月刀をかざして決めポーズ構えはった。

 ウチ、何や目頭熱ぅなって拍手してたわ。

 よかったねぇ?

『喰らえぇぇい! イルカ娘ェェェーーッ!』

「ひぁああぅ!」

 ウチや!

 油断しとったら、標的ターゲットはウチや!

 いかつい刃が振り下ろされる!

 ウチ、身を強張らせて縮こまったよ?

 ふぐぅ! 怖くて動けへん!

 絶体絶命や!

 その刹那!

「アタシのモモに何すんだァァァーーーーッ!」

 Gリンちゃんのハリセンが横弾きスパーーン!

 ほんでもって、返す刃ならぬ返すハリセンが横っ面スパーーン!

『ふぐぅ!』

 ドクロイガーはん! それ、ウチのッ!

「甘いわね……アタシ、こう見えても銀暦ぎんれきハリセン検定二級なのよ!」

 Gリンちゃん、何を習得しとんのん?

『ク……クソォ! こうなれば!』

 何やら意を決したドクロイガーはんは、足下で傍観しとったクルちゃん達へと向き直った。

 そして、巨大な鉄腕が鷲掴みにせんと襲い掛かる!

 狙いは、クルちゃんや!

「危ない!」

 咄嗟とっさにアリコちゃんがクルちゃんを弾き飛ばし──「危ない!」──咄嗟とっさにハッちゃんがアリコちゃんを弾き飛ばし──「……危ない?」──最後尾にテクテク戻ったクルちゃんがハッちゃんを弾き飛ばし────三人仲良う人質に握られた。

 何してんのんッ?

 玉突き事故してる間に逃げたらええやんッ!

『フハハハハッ! 人質ゲットだぜ!』

 勝ち誇るドクロイガーはん。

 まるで〈憧れの人質マスター〉でも目指してるかのようなテンションやねぇ?

「ちょっと! アンタ、人質なんてズルいわよ!」

『何とでも言うがいい! シャチ娘!』

「この卑怯者!」

『痛くも痒くも無いわ!』

「臆病者! 卑劣!」

『平気 ♪  平気 ♪ 』

「そんなんだからモテないのよ!」

『は~い ♪  生まれてこのかた、バレインタインチョコなんか貰った事ありませ~ん ♪ 』

「ぐぬぬぬっ! こンの! 開き直りやがって!」

『フハハハハハッ! フハハハハハハハハハッ!』

「まるで悪役みたいやんねぇ?」

『……それはチョット傷付いた』

 何で?

 ウチ、小首コクンと素直な感想言うただけやよ?

『さあ、形勢逆転だ! コイツらの安全が惜しいならば、おとなしくオマエ達が持つ〈ネクラナミコンの欠片かけら〉を渡せ!』

 もう持っとるよ?

 その手の中にいるクルちゃんが持っとるよ?

『どうした! さっさと渡せ!』

 持っとるよ?

「くぅぅ! あんな石コロやるのは構わないけど、アイツに屈するのは腹が立つ!」

 Gリンちゃん、重視すべき点が変わっとる。

「アンタなんかに絶対渡すかァ!」

『何だとォ!』

 せやから、持っとるよ?

 渡すも何も持っとるよ?

「悔しかったら実力で奪ってみなさい! ベンベロべー!」

『この……意地悪わがまま娘がァ!』

 事態ややこしなった!

 起きとる展開は単純なのに、事態ややこしなった!

 巨大な子供のケンカなった!

 と、その時、ゴゴゴ……と地鳴りが轟いた!

「な……何や?」

 慌てて周囲に元凶を追えば、それは一本の〈アムリの樹〉が刻む振動やった!

 アレ、ウチがグルグル回ったデッカイ樹や!

 あの〝つまんなかった樹〟や!

 そして、その大樹が動き出しはった!

 地面から引き抜いた根は脚!

 掲げた枝を下ろせば腕!

 ウチが見つけたうろは、そのまま顔や!

 微々とした変形が示したのは、完全な人型ひとがたやった!

 木製の巨人や!

 その雄姿を見たアリコちゃんが驚愕に染まった!

「アレは〈大樹神アララカツラ〉さま!」

 見たらアカンもんを見たような名前やね?

 大樹神さんは顔前で肘交差した両腕を、ゆっくりと上げ……上げ……上げ…………何も変わってへんかった。

 てっきり〝荒々しい鬼神顔〟にでもなるんかと思ったけど〝埴輪ハニワかお〟のまんまやった。

 あ、でも真っ赤にマイナーチェンジしてはるねぇ?

 一応、怒ってはるんや?

 単に顔面だけ枯れたようにも見えるけど。

 そして、ズシンズシンと重々しい歩を刻んで〈ドクロイガー〉はんと対峙!

『キ……キサマは!』

 動揺に構えるドクロイガーはん!

 そういえばアリコちゃんトコ襲撃した時に、やられはったんよね?

 因縁や!

『現れたな! 木偶デク人形!』

 再戦前哨ににらみあう巨体と巨体!

『さっきは敗北を喫したが、今度はそうはいかんぞ! このワシに勝てると思うなよ!』

 いや、負けはったんやん?

『たかだか木偶デクごときの攻撃が、全身〈宇宙合金コズミウム〉製のワシに通用すると思うか!』

 通用したんよねぇ?

『さあ、分かったらこのまま帰れ! 帰るというなら、止めはせん! ここは速やかに帰るが吉だ! うん!』

 何で高圧的に懇願こんがんしてはるん?

『ハウス!』

 さっそく使パクったよッ?

『あ、そうだ! フハハハハハッ! それにコレを見よ! 我が掌中には人質がおるのだ! さあ、レッツ・ユーターんごはぁーーッ?』

 アララカツラはんの顔面ストレートが、躊躇無ちゅうちょなく炸裂!

 吹っ飛び倒れる衝撃に、クルちゃん達が放り出された!

「アカン!」

 ウチ、咄嗟とっさにヘリウムブースター全開や!

 スライディングよろしくでクルちゃんをすくう!

 一方でGリンちゃんは、高々と放り上げられたアリコちゃんとハッちゃんを……って、アリコちゃん、ハッちゃんにぶら下げられて飛んどった。

 せやねぇ?

 ハッちゃん、飛べたねぇ?

「あぁん♡  アルが全体重を掛けて、私をイヂメる~ん ♪ 」

「誤解を招く言い方をしないで下さいッ!」

 ……仲良しや。

「あ」

「ふぇ? クルちゃん、どないしたん?」

さきモモカ、天条リン、たったいま〈ネクラナミコンの欠片かけら〉を見つけた」

「え? ホンマ?」

「はあ? このクソ忙しい時に! 何処だッつーの?」

「アレ」

「は?」「ふぇ?」

「あの大樹神〈アララカツラ〉が〈ネクラナミコンの欠片かけら〉と思われる」

 二人して眼前の木製埴輪はにわを見て、言いようもない感情にしばし絶句と固まる。

『痛ッ! ちょっと待っ……痛ッ! 話を……痛いって!』

「オオオォォォ……!」

 森の樹々をリングマットに変えて殴りあう巨人!

 ちごうた……一方的に殴る巨人と、一方的に殴られる巨人!

 ボコボコや!

 これぞホンマのフルボッコや!

 ド迫力やけど陰湿で地味や!

「私の所有する〈ネクラナミコンの欠片かけら〉が共鳴現象を起こしている。間違いない」

 クルちゃん、淡々と確定してくれはった。

「石板じゃないじゃんッ!」

「そもそも〈ネクラナミコン〉は、擬似的な意思を宿している。もしかしたら自己防衛本能から別形態へ擬態変化した可能性もいなめない」

「別形態? ちょっとアンタ! そんな情報言ってなかったじゃん!」

「私も初めて知った」

「その〈ネクラナミコンの欠片かけら〉は、ドクロイガーはんをマウントフルボッコしてはるんやけどッ? 大暴れしてるんやけどッ?」

「ざけんなッつーの! どうやって回収しろってのよ! アイツ、振り子殴りテンプシーロールでイケイケじゃん! オラオラオラ状態じゃん!」

「心配無用。高レベルエネルギーをもちいて活動停止へと追い込めばいい」

「どゆ事? クルちゃん?」

「倒せばいい」

 ……意外とシンプルやんね?

「倒せば……って」

 軽く困惑を噛みつつ、Gリンちゃんは改めて戦況を見つめた。

 私刑リンチ、まだ続いてはる。

「ったく、ドクロイガーのヤツも使えないし!」

 心の底から失望に苛立いらだつGリンちゃん。

 っていうか、使う気やったん?

「しゃーない! こうなったら……モモ、やるわよ!」

「ふぇ? う……うん!」

 指示をけて、即座にフォーメーションを陣取る!

「「エコロケーションホールド!」」

 花と開いたてのひらから〈高出力特殊超音波〉を照射!

 拘束技が相手の自由を奪う!

 アララカツラはん……と、ドクロイガーはんの。

「ォォォオオオオオーーッ?」

『グスッグスッ……って、ヌォォォッ? コ……コレはッ? 一度ならず二度までも!』

 足掻あがくアララカツラはん……と、ドクロイガーはん!

 うん、今回はほんまにゴメンねぇ?

「ォォォオオオオオーーッ!」

『ちょ……ちょっと待て!』

「タァァァーーーーッ!」

「ヤアァァァーーーーッ!」

 上空からはGリンちゃんのエネルギー脚槍きゃくそうが!

 正面からはウチのエネルギー鉄拳が!

 特攻の二重奏が同時に突き抜ける!

「「Gクロスファイナル!」」

 二人の軌跡が十字架と輝いた!

「「乙女の奇跡!」」

 大爆発!

『何でだぁぁぁーーーーッ!』

 彼方へと吹き飛ばされるドクロイガーはん。

 その慣性から逃れるように、ドクロイガーはんの胸部からヒュルヒュルと何かが放物線を描いて落ちてきたよ?

 Gリンちゃん、それを偶然的にポトンとキャッチ。

 何や〈コンパクトミラー〉みたいなモンやね?

「コ……コレって?」

 両手の中の現物を見たGリンちゃんは「フフ……フフフ……フフフフフ……」と、顔を伏せた笑みに浸り始めた。

 怖いよ? Gリンちゃん?

「よっしゃあーーッ! 〈ネクラナレーダー〉ゲットよーーッ!」

 高々と勝利宣言を吠えはった。

「何で、それ・・が〈ネクラナレーダー〉って判るん?」

「だって書いてあるもん」

 あ、ホンマや。

 裏面に『ねくらなれーだー』『どくろいがー』って、油性マジックで手書きしてある。

 ……ドクロイガーはん?

 何で幼稚園児ばりに〝ひらがな〟なん?

「どうよ? アタシこそ〝天条リン〟! 銀暦ぎんれき有数の大企業〈星河ほしかわコンツェルン〉の娘〝天条リン〟なのよ! 不可能なんて無いんだから!」

 ロングポニーをファサと鋤いて、高らかに誇示や。

 いや、Gリンちゃん?

 コレ〝大企業の娘〟関係あらへんと思うよ?



 ウチとリンちゃんは〈Gフォルム〉を解除して、みんなと合流する。

 アララカツラはんの姿は光に掻き消え、その場所には手帳程度の石板──〈ネクラナミコンの欠片かけら〉が転がり落ちとった。

 それを回収してつぶやくクルちゃん。

「なるほど。どうやら〈ネクラナミコンの欠片〉は、自衛本能から別形態へと擬態進化をすらしい。コレは初めて知った」

「って事は、どういう事よ?」

「それは、つまり──」

「つまり?」

「──これから先〈ネクラナミコンの欠片かけら〉と戦う展開もあり得るという事」

「「はぁぁ~~~~ッ?」」

 厄介な展開増えたわ!

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