クリエイティブの舞台裏

たまねぎ

エピローグ

「ハルはキラキラ感が無くなったな」


佐藤ハルは手元のコンビニ弁当から、声がした方に視線を上げると、そこにはエグゼクティブディレクターの美坂 凛(みさか りん)が立っていた。


「へっ、ほうでふはね?(そうですかね?)」

もぐもぐと口を動かし、若干意表を突かれたような表情で、美坂の言葉にハルは返事をする。


「ああ、新卒の頃はキラキラオーラが出てたのに、今はオーラがくすんでる」

「ま、この業界に慣れてきたってことか」

右手を腰に当て、妙に納得したような表情で美坂は言った。

美坂の体系がスラっとしたモデルのような体系をしていて、更に整った容姿をしている為、モデルがポージングを取っているみたいだなとハルは思った。頭に冷えピタを貼っていなくて、目の下に大きなクマが出来ていなければだが。

「そいえば会議室空いたから」

そう言って、美坂はその場からスタスタと自分のデスクに戻っていった。


ハルは手元の腕時計を見ると時刻は20:57を指していた。

「やばっ」と言いながら腰かけていたソファから急いで立ち上がり、夜食のコンビニ弁当をそそくさと片付ける。

自分のデスクに戻り、絵コンテやスケジュール等が積み重なった資料の山から、アメコミのロゴや自社のロゴシールがぺたぺたと貼られたmacbook airを発掘して溜め息交じりに一言つぶやく。

「これ、今日も確実に終電コースじゃん…。ってか、終電も間に合わない説…」

がっくりとハルが肩を落とすと同時に、

「ハルちゃん企画会議始まるよー!」

会議室から先輩プロデューサーの声がした。

あたふたしながら、macやマグカップや筆記用具を持ち

「はーい!!」

とハルは今の心情とは裏腹に、明るく返事を返して足早に会議室に向かった。

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