G.B.S(グレーター・ビースト・サーガ)
皆木 亮
第1話
「思い出した…。死ぬって…こんなに痛いんだ……。」
圧倒的な痛みが
皮膚が溶ける痛み。
骨が溶け落ちる痛み。
眼球が焼け
全身が痛覚の神経になった様に痛みだけを
そして、急激な
そこで
一瞬、世界が一点に集約される様な妙な感覚を覚えた。
ボヤけた視界が、徐々に
『
目の前には『38』と書いて『さんぱち』とルビの振られた
周りを見渡すと、ゾンドの胸部コックピットの360度モニターに囲まれて、周囲の町並みと石畳の道路、少し離れた場所に川や林などがあり、
その辺には、このゾンドと同じような
この星では割と普通の光景らしいけど、オイラ的には、巨大ロボットが農作業を巨大農機具で行っているこの姿は、結構シュールに見える。
そして、
汚染物質とかが今は全くないらしいから、貴重でありつつ非常に安全な村の水資源になっている。
しかし、何か、一瞬前に、恐ろしい事が起こっていた気がするけど、思い出せない。
思い出せるのは、今朝の御飯に掛けるフリカケを、ノリタマとオカカの両方をケチらずに一緒に掛ければ良かったのに、勿体ない気がしてノリタマしか掛けなかった事と、人類が滅亡しかけているという
いやぁ、ぶっちゃけ人類、ヤバいっス……。
どうも、15年前に、この星、惑星ティアナだけでなく宇宙までも巻き込んだ世界的な大戦争が起こったらしい。
その年に、宇宙の住民の住居である
それを止める為に、ティアナ側も、アリーエル粒子という特殊な粒子を使った、ぶっちゃけていうとレーザー兵器であるアリーエル粒子砲。その中でも、星から星に
それでティアナの人類は、ほぼ全滅。
逆に回避された星間レーザー兵器が、最後の足掻きで乱射して、偶然、相手の主力艦隊に丁度当たってしまって相手もほぼ全滅。
しかも無理な乱射の負荷が掛って暴発して、星間レーザー兵器の方も潰れちゃったっていうね。
そういう、
いま乗っているこのゾンドのような
大戦の為に地中に埋まったロボたちである
万が一、高性能エース機と言われる
まあ、現実的にはこうだよね…。
で、父さんが残してくれたこの『
長いから勝手に略して……。
『前マスターのネーミングセンスも酷かったですが、マスターのネーミングセンスも最低だと判断します。』
と、いきなり咎めて来た、略称『
でも、父さんは
まあそれらは置いといて、オイラが今できる仕事といえば、
『このネーミングセンスと、認証完了までに掛った操縦時間を
「いやぁ、ズバっと言ってくるね、
そもそも
二度手間になるからと、家でではなくゾンドに乗り込んでからやったけど、
「さて、ゾンドに接続準備完了っと。」
後は、接続自体は
とりあえず、自身の名前はロック=ロクスリー。
先日、誕生日を
15年前の終戦の後に生まれたらしいから、いわゆる戦争を知らない世代。
鏡で自身を見る分には中肉中背に見える。
青色が好きで、青のデニムパンツ、白のクロースに、青のレザージャケット、額に群青のバンダナ。
黒髪で、耳たぶが見えるくらいの長さで、上が短く下へ行くほど長くなるレイヤーの入った髪形のショートレイヤー。
で、顔も声も自身の判断基準では普通ってところかな。
父さんの名はリィト=ロクスリー。
母さんの名はクリーエル=ロクスリー。
父さんも母さんも、
母さんは、オイラが5歳の時に事故で亡くなったそうで、
父さんは、1か月ほど前に、急に、ぽっくり逝ってしまった。
ゾンドは全体的に茶色。
その上、
で、
ラジエールエンジンっていうのは、ラジエールさんという人が初めて発見して自身の名前を付けた鉱物のラジエールを使用したエンジンらしい。
で、そのラジエールという鉱物をエンジン内で加熱すると核融合炉以上の出力を出せるらしい。
その上で、一定温度以上で熱すれば、燃え尽きる事も無く、永久的に出力が出せるらしく、自家発電能力も持つらしい。
更に、
んだけど、ぶっちゃけ、作業とかに使うだけなら、
で、先に言った、戦闘用のロボの
正式名称を『
簡単に言うと同じ統一規格のモノならどんな
ちなみに
そして、上方カバーが開いて円錐形になって、
そして、真ん中辺りに何か良く分からないけど使った覚えのない装置がある。
その右側に各種機器のソケット。
左側にペタバイトディスクなどを入れるディスクソケットがある。
で、手前の部分に充電型無線コントローラーが2つ付いている。
まあ、普段は、ほぼ、ただのボーリング玉な見た目だね。
微かな記憶の奥で、実は父さんが
普通なら、それでかなりの大金持ちになるはずのところだが、父さんは戦争の被害に
ファトス村の人々の話だと、父さんは、そういう慈善事業を自分の儲けを鑑みる事なく世界の全土で行っていたらしく、その偉業から、発掘の英雄とか、伝説の
しかし、その後に
そして、オイラには
で、何の仕事もせずに過ごせるか試した結果、父さんの残した資金がそろそろ底を尽きそうになって、さすがにヤバいと思いだして、先日のオイラの誕生日を自分で祝う金銭的余裕も無くなり、今日に至り、何の特技も無く育ったオイラが自分の生活費を自分で稼がなくてはいけなくなってしまったという……。
『マスター。ゾンドのセットアップ、完了しました。』
「じゃあ、いっちょ、動かしてみますかね。」
とりあえず足を動かしてみる。
うむ、普通にゾンドの足が動くね。
次にアーム部分。
こちらも問題なし。
では、何かを持って運んでみるか。
ドラム缶など掴んでみる。
しかし、ツルっと滑って、落としてしまう……。
わぁーぉ……。
そんなところでいきなり
何とか、もう一度掴んでみる。
おし、今度は何とか。
そのままゾンドの足を動かして、数十メートル運んでみる。
まあ、このくらいできたら、何とか工事の仕事くらいはこなせるか。
葬儀の際に来てくれた方が、父さんの穴埋めで主採用じゃないけど工事の日雇いバイトで使ってくれるとの事。
一応、父さんは、この村の立役者なので、オイラにも仕事を融通してくれるとの事。
そして、先方は、いつからでもOKと言ってくれていたから。
「いきなりお邪魔してみますかね。」
『マスターの腕では、正にお邪魔だと判断します。』
「うわーぃ。心温まるお言葉、非常にありがとで。」
そのまま、先方……工事の仕事の親方のミハエルさんが居る
おお、なかなか軽快に動く模様。
無事、
村の中でも一番の
かなり広く村の町並みが見渡せる。
ここから見た感じでは、村の家々の連なるメインロードの町並み。
その外の川や田畑。
農作業をしている
村のダム。
川の魚を巨大な
そして自警団の
思いのほか広いけど、逆に思いのほかこじんまりって感じでもあるね、この村。
「よう、良く来たな。」
「うっス。よろしくで。何をどこら辺からやらせてもらえるっスかね?」
ミハエルさんは割と彫りの深い顔で、口の上だけ髭を伸ばしている黒髪で短髪のメガネの姿の方。
「どうも、2週間くらい前に、流しの
なるほどねぇ。
防衛用に
そして、防壁ってだいぶ意味なさそうなモノなのね。
まあ、仕事になる分には良いか。
「うぃっス。じゃあ、そっちの方に行ってみます。そこからの指示は現地で誰かから聞けるっスかね?」
「だな、現地に着いたら、オレら
「うっス! 行ってきまっス!」
「おお、オイラにしては、割と軽快にゾンドが動くじゃないか。」
『この程度の操縦ができなければ、逆に異常だと判断します。』
「うっへぇ。ですよねぇ~。」
自身への感銘に対して
自警団の
途中で
まあ、それが金になる仕事になるなら、オイラ的には良いんだけど。
「おッ⁉ リィトさんとこの子ッ! 大変だッ! 何か自警団の奴らが転げまわっているんだッ!」
いきなり、オイラのゾンドと同じ様なゾンドに乗った、
「ハッ⁉ いきなり何んスか、一体ッ⁉」
と、そこで。
『マスター、
「あんですとッ⁉」
とにかく回避運動に己が操縦の全力を傾けてみる。ゾンドのメインスラスターを吹かして地面を蹴らせて思いっきり後ろに飛び退く。
ギリギリで、何とかスレスレで擦れ違う。
だけど、オイラのゾンドが飛び退いたせいで、
アレは見た感じ、中の人は気絶しているかもだね。
それをした相手は、微かに見えた感じでは一般的に多く普及してる
ジーナに似た赤と白の
カラーリングはジーナに凄く似ていて、見た感じの武装も、頭部にバルカンと、左右の
それくらいという平凡そうな外見で、一見
あちゃ~……。
当たらなくて良かったけどミハエルさんの読み通りになっちゃったか……。
そして、防壁、簡単に突破されているじゃんっていう……。
本気で意味ないのね、この自警団
「待てーッ!」
自警団
ザヌスが、基本、緑色に、所々で深緑色を使っている、重装甲で重いけど、ホバー走行可能な
ガトナスが、黒色と白色の
レーザーブレードより燃費が悪くなった代わりに高出力にしたレーザーソードと、当てれば電気で相手のジェネレーターを熱暴走させ麻痺させる上に中距離まで届くスタンアンカーと、頭部バルカンを装備した、
ゲズが、赤一色で、装甲も回避力もザヌスとガトナスの中間くらいの上、機動性はどちらにも劣るが、
で、今出てきたゲズは、どうもオイラのゾンドの様に、
いや、良い機体を使っているみたいだけど、流石に数が少なくなさ過ぎねッ⁉
「待てと言われて待つアホが
どうも、
で、何故、機体を盗んでおいて
白を基調とした紫を含むパーカー付きのクロースで、銀髪ストレートロングで、白色の肌、真っ赤な瞳、アルビノって奴なのかもしれない。
スタイルが良く、すんごいお人形さんみたいに綺麗な姿をしていて、声は幼げだけど凛と芯が通っている感じで、雰囲気からしてモノホンの子供ではなく実年齢はきっとオイラより高め。多分、童顔って奴なのだろう。
で、非常になだらかな胸部のミニペッタンで、すんごいオイラのストライクゾーンのド真ん中。
しかも、母さんと同じような
オイラの分かる世界って、この村だけだから良く分からないけど、同じ地方の出身なのかも知れない。
いや、冷静にそんな事を考えている場合でもなさ気なんだけど。
「しかし、あのリィト=ロクスリーの作った村やいう話やから警備も自警団のモンも、もっと凄いんかと思っとったけどそうでもないな。で、うちを目の当たりにしてこれとは、相当の田舎やなここ。平和ボケしとる感じやし、きっと今までスティールされるくらい価値のあるモンすら無かったんやろな。まあ、うちの姿を見てこの反応いうのは、ある意味、嬉しくもあるんやけどな。」
「何を言っているかは分からんがシュタイガーンバオアーを返してもらおうか‼」
あ、あの
「それはできへん相談……やなッ‼」
言葉の溜めから最後の
いや、てか、それはそれで大変ではあるんだけど! それよりもッ‼
「ちょッ、何か追いかけている
追いかけている自警団の最後方のゲズの人に聞いてみる。
というか、機動性で、その人だけが遅れていて、たまたま声を掛けれるギリギリの距離に居たのが、そのゲズの人だったワケだけど。
「我々、自警団の昼食に、下剤が入れられていたんだよ! 大半の者が腹痛で動けんのだ!」
ゲズの人も、通信で姿を見せて話してくれる。
ゲズの人は、角刈りで強面の筋肉質な姿。
てか、ああ、何か、そういう工作みたいなのを事前にされていたワケですか。
そういえば、確かに、この自警団の
うん?
でも、これってチャンスでない?
自警団って言ったら、18歳以上で、
という事は……。
「自警団の旦那。オイラを自警団の一員として雇わないっスか? 見ての通り、ゾンドだけしか動かせてないっスけど、今は猫の手も借りたい状況っしょ? ゾンドでも、何かの足しになると思うんスけど雇ってくれないっスかね? 自分で言うのもなんスけど、お買い得っスよ?」
とりあえず、自警団の職に就くべく自分を売り込もうとしてみる。
「えっ……オマエ、確か、ロクスリーさんとこの……。いや、オマエ、確か18歳未満だろ? それに、何かゾンドの操縦が怪しいじゃねぇか⁉」
「まあ、そうっスけど、たった1機のゾンドと下手な
「いや……まあそうだけど……でもなぁ……。」
「後で正式に自警団に入れて貰えたら、今は使い捨てでも良いんスよ。壁としてでも使うには良いかもっスよ? はっきり言って、オイラが逆の立場なら雇うっスけどねぇ。」
「ちッ、足元見やがるな。確かにこっちは猫の手も借りたいとこだよ。仕方ねぇからさっき先に行った先発隊には連絡してやるよ。自警団にも入れてやるから、しっかり仕事しろよ!」
「うぃっス。契約成立って事で。」
無事に交渉成立っと。とりあえず、任されたからには、一応は頑張っては見る模様。
「じゃあ、一緒に向かうっスかね。できたら、
ライドブレードを搭載している
で、
「ゲズの機動性自体がザヌスやガトナスよりも悪いってぇのに、ゾンドと
むっ、そこは確かにそうだ。
どうしたものか……。
『マスター。自警団
「おおッ! なんとピンポイントなアドバイスッ!」
「そんなモノが、我々の倉庫の地下にあったのかッ⁉ 」
「うはっ、自警団の人すら知らないとか、どんなレアショートカットよッ!」
まあ、何にしろ、渡りに船とはこの事。
舗装された道が少なくてライドブレードが活用し
「じゃあ、とにかく、そこを使いましょうか。ゲズの方、お名前は? オイラは……」
「オマエのファーストネームは知らないが、ファミリーネームがロクスリーなのはオマエのオヤジさんが有名人だから知ってんだよ。だからオマエの呼び名はロクスリーで良いんだよ。オレはダジル=アンバスだ。」
「じゃあ、ダジルさん。とにかく既にオイラたちは先発隊から遅れているんスからショートカットがあるなら使わない手はないと思うっスけど、どうっスか?」
「分かったよ。だが、どこだよ? ホントにあんのか?」
ダジルさんが、割と疑わしげに聞いてくる。
『マスター、
「って、うちの
「分かったよ」
とにかく自警団の
自警団
倉庫内のトイレの前では長蛇の列が作られておりトイレの扉を必死で叩く人と、それすら通り越して昇天して果てている人などがいる。
南無、南無。
人間、こうは成りたくないよね。
それはそうと……。
「ちょ、
基本、
で、
うぉ~い⁉ どうなってんの⁉
「しかも、ここ、オレのゲズのラックじゃねぇかッ⁉」
ダジルさんが横から割って入って話してくる。
うぉいッ⁉
ダジルさんのゲズのラックかよッ⁉
「大丈夫なのかよ、
『ノンプロブレムです。その
「えっ、そうなの?」
「おおッ!」
確かに接続端末がある。
「で、これどうすんの、
『イエス、マスター。』
「何したら良いか分からないんだけど? どうやったら通路に出られるの?」
『前マスターが、ある特殊な動作で通路が現れる様に動く様にしてあります。順番に工程を言っていくので、その通りに動いて下さい。』
「ほいほいさ」
『まず、接続端末に
「よし来た」
基本的に
とりあえずゾンドの指先のマニュピレーターを壁の接続端末に繋いでみる。
「で、どうすんの、これ?」
『ノンプロブレムです。次に、
「ふむふむ。なかなか安直なパスワードだ事で。」
パスワードを言われた通りに入れると……。
ガガガ……ガタン!
すぐ横の
「すげぇ! 何か扉が出て来た! よし、扉を開けますか!」
取手の様な場所があったので、とりあえず回してみる。
……回らない……?
これはダメだ。無理に回そうとすると壊しそうだ。
「
『前マスターが、ある特殊な動作で動くようにロックをしたのです。先ほどの様に、順番に工程を言っていくので、その通りに動いて下さい。』
「ほいほいさ」
『まず、ノブに接続端末があるので、それを
「OK、OK」
『次に、
「あ、パスワード自体は同じなのね」
『次に、三つ指を立てる感じで『インサート・ミー』と3回、力いっぱい叫びながら扉を拝んで下さい。』
「インサート・ミー! インサート・ミーッ! インサート・ミーッ‼ これでどうなのよッ⁉」
『マスター。そこはさすがに冗談です。まさか本当にやるとは思いませんでした。』
あんですとッ⁉
「クッ……このお茶目さんめッ!」
この
「大丈夫なのか、オマエんとこの
一連のやり取りを見ていたダジルさんが、不安そうに聞いてくる。
「いやぁ、さすがに父さんとオイラと過ごして学習した
「どういう家族なんだよ、オマエら……。」
何だか可哀そうな人を見るような目でダジルさんに見られるオイラと
『マスター、パスワードの入力の時点で、扉のロック自体は外れています。後はドアノブを回すだけで開きます。』
「うん? さっき
『普通の人が、この認証画面にたどり着けても、リィトというパスワードを認証キーと見抜くのは困難であると指摘します。』
「あ~。まあ、なるほどね。」
「何でも良いから早く行こうぜ!」
ダジルさんに急かされる。
「っスね、とにかくオープン・ザ・ドアって事で。」
ドアノブを回す。
おお、今度は普通に回るぞ!
ドアが、ちゃんと開いた‼
てか、こんな認証キーとか使うなら、ドアノブを回すとかのアナクロな開け方じゃなくて自動シャッターの様に勝手に
まあ、そこはそういうモノだから仕方ないんだろうと思ってみるけど。
「ダジルさん
「おうよ!」
ダジルさんのゲズの後ろ手を、うちのゾンドが握る感じで
これで、ライドブレードのお陰もあり、移動も牽引でスムーズっていうね。
そして、ダジルさんに先行してもらって地下道に入る。
下りの坂道になっていて、下方の奥の方は、かなり広い空間が広がっている。
おお! 地下広いな!
『なお、この扉は
「またまた~。流石に、そんな破天荒な事は……」
チュドーン! ボカン! バカン! ドカン!
後ろのさっき通ったドアから爆音と爆風がこちらに
「
『
無情にも
「うぉいッ⁉ ロクスリーッ⁉」
ダジルさんが叫ぶも後ろから爆風に吹かれてダジルさんのゲズ
ある意味こっちも叫びたいッ!
なんでやねんねんねんねんねんと!
思わずドップラー効果も出るわなと!
忘れていた。
回る様な視界。
そして静止。
はるか下に地面、直ぐ上にも地面。
そら地下だからどっちも地面に見えるだろうけど、位置おかしいよね?
どうも機体の上下が逆な感じで爆風圏から抜けて、地下の中でも、かなり下まで転がり止まって着地したらしい。
「だいじょうぶか、ロクスリーッ⁉」
「いや、ダジルさんこそ、大丈夫っスか⁉」
「見た感じで、こっちもそっちも
「それは何よりで。」
「何よりじゃねぇよッ! 何してやがんだ、オマエのオヤジはッ⁉」
「いや、さすがに、そこら辺は、あの世にダジルさんが行く時が来たら、向こうで父さんに言ってもらうしかないとしか……。」
ぶっちゃけ、家族とはいえ、こっちからしても理不尽な感じ。
まあ、そういう人だわなって感じでしかないワケだけど。
『マスター、ここより5キロ先付近に、前マスターが発見した
「一応、聞いとくけど、それも使ったら爆発とかしないよねッ⁉ ねッ⁉ マジでそうしてくれるよねッ⁉ どっちかっていうとそうしてくんないかな、マジでッ⁉」
流石に、さっきの爆発はトラウマものっスという。
いきなり爆発が起これば誰でもビビるわ!っていうね。
だから、その
それは流石にカンベン。
『流石に
「マジだよなッ⁉ ロクスリーんとこの
流石にダジルさんもトラウマ気味の模様。そらオイラでこうだもんね。
『イエス。ですが、
なるほどねぇ。
まあ、このゾンドには父さんがライドブレードを趣味で付けたけど、ゾンドはゾンド。
「分かったよ。まずはオレがゲズを先に
「ほいさ」
先にダジルさんのゲズが
こっちも遅まきながらそっちに合流。
ダジルさんのゲズが
「ダジルさん、
「大丈夫だ! 30秒後に動く!
「うぃっス!」
さっきまでと逆でゾンドからゲズへの後ろ手の
うむ、気付かなかったけど、中々、上手く動いているじゃないか、このゾンド。
てか、さすがに自分に一番良い様にカスタマイズして貰って動かせないと、人として厳しいですわ。
ですよね~。
そんな中、ドラム缶運びで
さすがに相当操縦は下手なのだろうなとは客観的に分かる。
「
ダジルさんが仕込んだ
前に広がる路面を、ライドブレードが火花を散らせ、高速ダッシュで滑走して行く。
「速ぇぇッ‼」
「吹っ飛ばされねぇ様に、ゾンドのシートに、しがみ付いていろよッ!」
ダジルさんに注意を受けながら流れのままに路面を疾走。
入り組んだ地上と違って、この路面は障害物が無い。
一応、ライドブレードにもブレーキは付いているが、
やっと勢いが落ちて来た頃には、かなりの距離を進んでいた。目測の距離にして5キロというところか。
そして、着いた路面の直ぐ近くには、
おお!
そして、この路面には、ここから
父さん、思いの外、マメだなぁ。
『マスター、この
「あいよッ! いやぁ、ファトス村って舗装路面が余り無いから、このゾンドのライドブレードって何の為に付いているの?って、謎だったけど、これは凄いわッ!って、ことで、ダジルさん、うちの
「おうよッ!」
さっきと同じ要領で、
また、凄まじい勢いで、
一瞬で5キロもの距離を移動する快感!
これは凄いわ!
オイラの感銘をもブッチぎって、オイラたちの
『マスター、そろそろ、先程のシュタイガーンバオアーという
「って、
「そうだな、じゃあ、エレベーターを起動するから、
「ほいさ。」
入口の扉から中に入り、エレベーターを起動する。
中も、中々の広さで、確かに
「あとは、地上に出て、あの
「だな!」
と、オイラとダジルさんがホクホク顔で居る中で、
『マスター、聞かれなかったので言い忘れましたが、この
「オマッ⁉ ちょッ⁉ どんだけ爆発させる気よッ⁉」
「てめぇ、ロクスリーッ! オマエんとこの親父はバカだろッ⁉」
ドカン、ボカンと爆発がエレベーターの通った下の方から発生して、上に登って行くオイラたちを追ってくる。
「ちょっ、マヂでッ⁉」
『マヂです。』
無情に答えてくる
その爆発の影響で、天井が剥がれ、剥がれた天井の
その上で、下方からの爆発が
そして……ッ⁉
ドバババッババッズドバァーンッ‼
爆風による回る視界の中、ダジルさんのゲズが頭から地上の地面に吹っ飛ばされ、その上から覆い被さる様にオイラのゾンドが吹っ飛ばされ落ちて行き…ッ⁉
「うぁッ⁉ なんやねんッ⁉ どっから出てくんねん、オマエらッ⁉」
ある意味、こっちが爆発だけの時点で
さっき見たシュタイガーンバオアーとかいう
「待てったら待てぇーッ!」
自警団の先発隊の方々も相変わらず通信しつつ追い掛けて来る。
「だから、待てと言われて待つアホが
シュタイガーンバオアーと、それを追っていた
「ダジルさん、こっちも追いかけるんスよッ!」
「分かったから、オマエは
「わかってるっスよ!」
すったもんだしながら、もそもそと起き上がるオイラたちのゾンドとゲズ。
しかし、そうこうしてる内に、急にシュタガーンバオアーが振り返り止まり…。
「よし、そろそろやな! オイ、オマエら! 相手になったるから全員で
「ふざけた事を!
何だか話が勝手に進んでいる模様。
まあ、シュタイガーンバオアーが止まってくれる分には、足の遅い、このゾンドで追いかける分には、凄く助かるワケだけど。
「おう、ダジルとロクスリーも来られたのか! あのふざけた奴を一気に囲むぞ!」
自警団の人たちも、ようやく、こっちにも目が行ってくれた模様。
てか、あれだけの爆風で、いきなり飛び出したのに、やっと声が掛かるところに、自警団の人たちが、どれだけ、あのシュタイガーンバオアーとかいう
「ロクスリーやとッ⁉ でも、リィト=ロクスリーは、亡くなっとるはずやし、40近くのはずやッ⁉ リィト=ロクスリーの息子か何かかッ⁉ でも、この自警団の連中と同じで、きっと、大したことないんやろッ!」
何か、散々に言われているけど事実だから仕方ない。
てか、こんな
身近過ぎて感覚麻痺してたっぽいね。
しかし、あのまま、シュタイガーンバオアーと自警団の人たちの
「何かシュタイガーンバオアーとかいうのに乗っている人に散々に言われているっスけど、自警団の方々、オイラも手助けするんで、後で自警団に入団、滞りなくお願いっスよ!」
「セコイ話だが仕方ねぇ! その分、今、働けよ!」
「あいさ! じゃあ、スムーズに通信会話する為に、皆さんのお名前プリーズで!」
「オレは自警団副団長で、この隊の隊長のヨギー=クラウスだ。」
ザヌスに乗った、副団長との事らしいヨギーさんは、オイラくらい髪を伸ばした割と整った顔の方。
「こっちはレンダー=スッコティーだ! 役職には特に就いてないがな!」
ガトナスに乗った、レンダーさんは、普通って感じの姿で、割と特徴がない感じの姿だけど、割と強気っぽい印象。
「僕はイリー=メルムスです。同じく役職には特に就いていませんが、ロクスリー君、
もう一方のガトナスに乗った、イリーさんは、凄く礼儀正しい言葉使いとは裏腹に、見た目はかなりの筋肉質で強面。
「ほいさ、ありがとで。じゃあ、こっちも行くっスかね。」
自警団の方々と一緒に、シュタイガーンバオアーに向かって一気に距離を詰める。
全員で四方から。
オイラのソンドはダジルさんの後ろからシュタイガーンバオアーの周りを囲む。
と、その時……。
「そこやッ! せいッのッ!」
周辺の林から、何かが絡みついてくる。
シュタイガーンバオアーをドーナッツのワッカの中心にしてドーナッツ型にオイラたちの機体の上の林から網が降って来た。
「スタンネットッ⁉」
「しまったッ‼」
「クッ……ッ!」
「これは……ッ⁉」
「何て
オイラやヨギーさんたちが口々に叫ぶ。
スタンネットというのは、強烈な電気が流れている対
そして、オイラたちの声も虚しく、一気にオイラたちの
こういう風にジェネレーターが止まれば、流石に
「おっしッ! クリティカルヒットやッ!」
シュタイガーンバオアーのパイロットさんが歓喜の声を上げる。
「クッ!」
「アァァーッ!」
「畜生ッ!」
「こんな事でッ!」
ダジルさんやヨギーさんたちから、次々に
「まあ、オイラ的には、こういうのでも一応ガンバったから、自警団に入らせてもらえて全然良いんスけどね!」
自警団の皆さんの
だったんだけど…ッ⁉
『ま…マスターッ! 大変ですッ! 自警団の
「は? 急に騒ぎ出してどうしたってのって……うぇッ⁉」
「マジでッ⁉」
質量だけでも超質量兵器。
その上、青色のレーザーが効いたまま熱を
「ちょッ‼ まッ‼」
回避もままならず、
「思い出した…。死ぬって…こんなに痛いんだ……。」
圧倒的な痛みが
皮膚が溶ける痛み。
骨が溶け落ちる痛み。
眼球が焼け
全身が痛覚の神経になった様に痛みだけを
そして、急激な
そこで
一瞬、世界が一点に集約される様な妙な感覚を覚えた。
ボヤけた視界が、徐々に
「よし、そろそろやな! オイ、オマエら! 相手になったるから、全員で
「ふざけた事を!
目の前には『38』と書いて『さんぱち』とルビの振られた
何か、一瞬前に、恐ろしい事が起こっていた気がする…。
確か、圧倒的に痛かったという感覚…。
他に思い出せるのは、今朝の御飯に掛けるフリカケをノリタマとオカカの両方をケチらずに一緒に掛ければ良かったのに勿体ない気がしてノリタマしか掛けなかった事と、人類が滅亡しかけているという
「ちょっ、皆さん、待ったッ! そのシュタイガーンバオアーとかいう
「あんッ⁉ スタンネットだと? ッて、本当にあるじゃねぇかッ⁉ よし、除去して囲むぞッ!」
「ゲッ⁉ 何でバレてんねんッ⁉」
シュタイガーンバオアーの四方を隊長機のザヌスと、ダジルさんのゲズと、他の団員さんのガトナスが囲み、ダジルさんのゲズの後方に、オイラのゾンドが控える形。
「うっしッ! これで死亡フラグ回避ッ‼ そして、これで確実に自警団に入れるよね⁉ やったー! ひゃっほーぅい!」
その、大喜びで盛り上がるオイラに、
「何や、ずいぶん喜んどるけど、そんな自警団に入れるんが嬉しいんか?」
シュタイガーンバオアーのパイロットさんが相変わらず姿を見せて通信してくる。ある意味、この四方を囲まれた状況だと
「そりゃ、嬉しいっしょ。(
「うわッ、夢ちっちゃ! どんだけ人間の器が小さいねん、アンタッ⁉」
「そこ! リアルに貧乏性なんスから、ほっといて欲しいっスよ!」
「そうか、そこまで食うに困っていたか。だが、我ら自警団に入団すれば、食うに困る事はない。保障しよう!」
ヨギーさんから、求めていた温かい言葉が掛かる!
「うわーい! ほら、やっぱし良い感じじゃないっスか?」
っと、生活の保証の声に、
「いや~、でも、うちが事前に調べた話やと、アンタんとこの自警団の新入団員がホルモンされたっちゅう話やで……?」
「うぇッ⁉」
ちょッ、なにそれッ⁉
「なッ⁉ 何を根拠にそんな話をッ⁉」
隊長のヨギーさんがうろたえ出す。
「いやッ、実際にホルモンされたって子に直に聞いてやけど……。」
そして、無情に告げられる言葉……ッ⁉
「そ……それは、私と彼との間での合意の上であって……。」
あからさまな赤ら顔で詰まりながらヨギーさんが弁解の言葉を並べるが、それって……。
「合意の上ぇ~? やっぱし、そんな事やってたんや…。」
「しかも、アンタが
まずはダジルさんのゲズの胸部コックピットにゾンドのマニュピレーターを突っ込んでゲズのコックピットを開ける。
そのままゲズのコックピットの中のダジルさんを、そいっと林の中に、ぶん投げる。
「ちょッ⁉ てめぇッ! ロクスリーッ! 何しやがるッ⁉」
そして、ゾンドに30秒後に隊長機のザヌスに突っ込ませる
「
『今のマスターは、いつにも増して無茶苦茶だと判断しますが、この行動で、本当に、よろしいのですか?』
「男にホルモンされてたまるかッ‼ そんな事になるくらいなら、このシュタイガーンバオアーとかいう
「ちょッ⁉ 何をしているんだ、ロクスリーッ⁉」
ヨギーさんが
そこに、さっきまで乗っていたゾンドが
「こ……こらッ! 何をするッ⁉」
ゾンドに全力で突っ込まれて不意を突かれたヨギーさんのザヌスは
レンダーさんとイリーさんたちのガトナスたちも、その不意のオイラの行動に
『マスター、チューニング完了です。』
ゲズのバズーカをザヌスとガトナス周辺に発射するッ‼
「そら、ブッ
当てるつもりはない、ただの
そもそも狙ってもオイラの腕では当たらない。
でも、これで!
「よし、何や分からんけど、ようやったで、ロクスリー君ッ!」
そう、この一瞬の緩みの間で、シュタイガーンバオアーが自由になる。
自警団の
よッしッ! 計算通りッ!
「うッし! 全力で助けて逃げるんで、後でしっぽり行かせて下さいっス!」
「しっぽりは、いかへんけど、助けてくれたお礼に、うちらの仲間に入れたる! だから、今は、ここを切り抜けるで!」
「うぃっス!」
ザヌスとガトナスが体制を立て直す。
「クッ……素人のロクスリーのゲズはノーコンだ! まずはシュタイガーンバオアーを捕まえる事に集中しろ!」
「了解ッ!」
「了解です!」
どうも、こちらは無視されている模様。
まあ、そうだよね。オイラが逆の立場でも、オイラの様な貧弱パイロットのゲズより、シュタイガーンバオアーの方を警戒するしね。
「何か自警団の人たち、凄い気合い満タンっスけど、そのシュタイガーンバオアーって機体は
期待を込めたオイラの質問に、
「いやぁ~……。何かこのシュタイガーンバオアー言う
まさかの反応を返して来る
「
「うん、残念ながら
本人も大いに困った様に、申し訳なさそうに呟く
『マスターは分の悪い方に乗ってしまった上に後戻りが効かないと判断します。』
「分かっているけど、うるさいよ、そこッ‼」
冷静にツッコミを入れてくる
「それは好都合!」
ザヌスが距離を取ってバズーカをシュタイガーンバオアーに向けて
あの距離からだとレーザーガトリング砲や頭部バルカンは届かないか。
どうもヨギーさんは遠距離のアウトレンジからバズーカ主体で戦いたい模様。
しかし、思いの外、遠くに外れて地面に着弾する。
なんだろ?
この人、自警団の副団長さんで、この隊の隊長さんだけど、結構、操縦下手なのかもしれない。
シュタイガーンバオアーが距離を取る。
「とにかく、この場を
「じゃあ、オイラはッ!」
レンダーさんのガトナスに
「ロクスリーの射撃は気にするなッ! 素人のただの下手な威嚇射撃だッ! それより、シュタイガーンバオアーを沈黙させる事に集中しろッ!」
「了解、隊長!」
「了解です!」
酷い言われようだけど、事実、全く当たらないところが悲しい。現に今の攻撃も当たらないしね。
「ちょっ、アンタらッ! 不慣れな機体に乗っとるうち1人に、3
「
言い合いながら、レンダーさんとイリーさんのガトナスのスタンアンカーを回避するシュタイガーンバオアー。
が、その合間を狙って撃ってるはずなのに、ヨギーさんのザヌスのバズーカは、相変わらず明後日の方向に飛んでいく。
この人、隊長だけど、実はオイラと同じくらい操縦下手っぽいなぁ。
でも、ガトナスが、かなりシュタイガーンバオアーの近くまで斬り込んでいくなぁ。
「ガトナスが思いのほか近くに来る……。」
油断なく、ザヌスとガトナスの隙を
「えーい! こっちも反撃や! よっし! この距離で使える武器は……。」
反撃の為に、シュタイガーンバオアーの装備をチェックする様に、一拍の間を置くが…。
「……バトルアックス…ッ⁉ バトルアックスやと…ッ⁉」
間を置いてからの、
てか、えッ⁉
「レーザーアックスやのうて、ただのバトルアックスやとッ⁉ 一応、刃は付いとるから実弾兵器や格闘兵器の切り払いはできるかも知れへんけど、レーザーを纏ってないなんて、こんなん、ただの質量兵器なだけの鈍器やないかッ⁉」
って、
「クッ……他はバルカンくらいか……。至近距離でのレーザーライフルなんかムズいし、背部の
シュタイガーンバオアーが、バルカンでガトナスを
「なんとぉッ⁉」
諸に胴体部分を横薙ぎに当てられるヨギーさんのザヌス。
やっぱり、この人、自警団の隊長さんだけどオイラと同じくらい弱いっぽい。
重装甲とはいえ、巨大鈍器で殴りつけられた事で、ザヌスが一瞬怯む!
よし!
これで一気にザヌスをたためるはずッ!
しかし……。
「そこッ!」
「インパクトの瞬間はオマエもガラ空きだ!」
ザヌスをシュタイガーンバオアーが殴った瞬間に、ガトナス2機が同時に3発目のスタンアンカーを打ち、シュタイガーンバオアーに当てた!
シュタイガーンバオアーの動きが止まる!
電撃でジェネレーターが熱暴走してスタンしてしまった模様!
これはマズいッ!
「クッ……。こっちも隊長機に当てたけど、モロに喰らってもうた……。こんなところで諦めるワケにはいかへん! けどッ…これは動けん……。 クゥゥ…ッ! 諦めるしか……諦めるしかないんか…⁉」
シュタイガーンバオアーの動きが止まるのと共に、シュタイガーンバオアーの中の人の戦意も止まった模様。
「ちょッ! アナタが戦ってくれないと、オイラじゃどうにもなんないんスよッ⁉」
「うちかて嫌やッ! うちかて嫌やけどッ! こんなん……こんなん……ッ!」
悲しい諦めの言葉が無情にも垂れ流される。
「よし、後はロクス……ッて……。」
ザヌスのヨギーさんが何か言葉に詰まっている。
アッ⁉ ガトナス2機もスタンしているのかッ⁉
何かアンカーを打ったままの不自然な姿勢で2機とも止まっているぞッ⁉
「隊長、スマンッ! アンカーが思ったよりエネルギーを食っていたみたいで、ガトナスがエネルギー切れになっちまったッ!」
「3発連続でアンカーを使ったのがまずかったみたいです。隊長、後は、お願いします……。」
戦闘時に、武器や装備で、最低限に機体を動かす
こういう風に、
普通は、グリーン、イエロー、レッドと、
機体の
レッドを振り切って機体が動かなくなるまで行く事は無いはずだが、
流石に、うちの村の自警団さん。
稀に起きた戦闘で、ちゃんと、そこら辺を考えてなかった模様。
てか、これは……ッ⁉
オイラと同じくらい操縦が下手っぽいヨギーさんと
「クッ……仕方がない。シュタイガーンバオアーは止めたんだ。ロクスリー1機くらいオレが何とかしてやるッ! だが、さすがに相手は世間の分からない未成年だ。撃墜はあり得ん。ここは
ヨギーさんからの手加減する宣言に、少しはホッとするものの、ザヌスの手には、がっしりとバズーカが握られて照準が絞られており!
「クッ……こうなったら逃げられるだけ逃げてやるっスよッ!」
例え手加減されても、捕まったら、オイラは戦犯!
しかも、さっきの
「そ…それだけは…ッ! 絶対に回避する…ッ‼」
慣れない
その上で、ヨギーさんのザヌスのバズーカは、その
オイラで勝てる気はしないけど負ける気もしない。
ここはシュタイガーンバオアーのねえちゃんもブッチして逃げのびてやるッ!
「えーいッ! ちょこまかとッ! こうなったらゲズの手足をブレードで切断してやるッ!」
基本的に、レーザーブレードやレーザーアックス
そこに
カスタムされたレーザーブレードとかなら、手に持ってる時でも、
レーザーのONとOFFの切り替えはできるらしいけど。
だから、ザヌスが手に持った瞬間、レーザーが
ザヌスがレーザーブレードをブン回しながら近づいて来た。
ヒャッホー! この人バカだ!
この距離でレーザーガトリング砲や頭部バルカンを使う頭が無いらしい!
「うはは! 勝てる気はしないけど負ける気もしない! 軽量型で格闘戦専用のガトナスならまだしも、ザヌスの様なホバーとはいえ重装甲の重量型砲撃特化の機体に乗ってブレード振り回すなんて、オイラと同じくらい下手な操縦のアンタが当てられるワケないっしょッ‼」
と、有頂天になっていると……。
ブンッ‼
ザヌスがスッ転んでレーザーブレードが手からスポ抜けてこっちのコクピット部にモロに突き刺さって来たッ⁉
「ちょ……ちょッ⁉」
回避もままならず、
「分かったってのよッ! 死ぬって、こんなに痛いんだってばよッ!」
圧倒的な痛みが
皮膚が溶ける痛み。
骨が溶け落ちる痛み。
眼球が焼け
全身が痛覚の神経になった様に痛みだけを
そして、急激な
そこで
一瞬、世界が一点に集約される様な妙な感覚を覚えた。
ボヤけた視界が、徐々に
「しっぽりは、いかへんけど、助けてくれたお礼に、うちらの仲間に入れたる! だから、今は、ここを切り抜けるで!」
「うわッ⁉ ここからなのッ⁉ さっきはもっと前に戻ってなかったッ⁉ さっきの地点からだったら、シュタイガーンバオアーの人に自警団の人たちの
「何やッ⁉ いきなり文脈のおかしいこと言い出してッ⁉」
シュタイガーンバオアーの人が
いや、こっちも
何か、オイラの生き死に、ループしているけど、これが、人生というデータのセーブポイントにセーブして、リセット
「良く分からんが、素人のロクスリーのゲズはノーコンだッ! まずはシュタイガーンバオアーを捕まえる事に集中しろッ!」
「了解ッ!」
「了解です!」
またも、こちらは無視されている模様。そこは良い。問題はここからだ。
「シュタイガーンバオアーの人ッ! 隊長機のザヌスは下手くそっス! それより2機のガトナスの方が脅威っス! スタンアンカーでジェネレーターを熱暴走させて行動不能に陥らせられるっス! でも、ガトナスは2機とも3連発でスタンアンカーを使って来て勝手にエネルギー切れを起こして自滅するんスよ! だから、ガトナスのスタンアンカーだけ警戒して回避してれば余裕っスよ!」
とにかくざっと
「なんやてッ⁉ てか、何で、そんなんが分かるねんな君ッ⁉
いきなりの内容の細かい進言に、
「いや……それは経験したからというか……」
何と説明した物か戸惑い、オイラが、しどろもどろになる中、
「何だか分からんがロクスリーの盲言だッ! 気にせずシュタイガーンバオアーを集中攻撃だッ!」
ヨギーさんが、ガトナスの皆さんに、構わず、総攻撃の命を下す!
だけど、それなら、逆にガトナスたちがアンカーの使い過ぎで
だったんだけど……。
「隊長ッ! 気になったので、一応、調べてみたのですが、これから仮に3連発でスタンアンカーを使った場合の残存エネルギーを計算したところ、本当にガトナスがエネルギー切れを起こす事が判明しましたッ!」
うがッ⁉
イリーさんが冷静に分析してしまったッ⁉
そうだよね……。
まんまで伝えちゃうと、ガトナスのパイロットさんたちが気付いちゃうよね……。
「何だとッ⁉」
「何やてッ⁉」
ヨギーさんとシュタイガーンバオアーの人、二人に同時に
そこにレンダーさんがガトナスのスタンアンカーを冷静にシュタイガーンバオアーに打ち込む。
「あ……ッ⁉」
凍り付く
「イリーの様に計算などする事も無くスタンアンカーを衝動的に打ってしまっただけだが、逆に虚を突いた形になったなッ‼」
「うがッ……最悪……ッ! さっきのザヌス1機の時でもダメだったのに、ガトナス2機まで現存って最悪過ぎるッ‼」
歯を食いしばりながらも、余りの状況の酷さに身悶えするオイラに…
「よし、レンダーはスタンしたシュタイガーンバオアーを見張っておけッ! ロクスリーのゲズにはオレが
ヨギーさんが、ガトナスの、お二人に命を下し!
「了解ッ!」
「了解です!」
絶対に逃がさんとばかりに、徹底して
「クッ……こうなったらシュタイガーンバオアーの人は役に立たないのは、さっきの時ので分かっている…。ここは逃げの一手しかないけど、本当にオイラ一人で行けるのかッ⁉ だぁーッ! とにかく逃げてやるっス‼」
とにかく自警団たちに背を向けて逃げる。
どこまで行けるか、ホントに逃げ切れるかも分からないけど、こうなったらやるしかないッ‼
「まずは
ザヌスのヨギーさんがオイラの後方からバズーカを打ってくる!
が、さすがにさっきので、この人がオイラと同じ
これが当たるワケが……って……えッ⁉
何か、こっちのコックピット部分に、このままだとドンピシャじゃッて⁉
うぇッ⁉
「どこが
回避もままならず、
「もう分かったってのよッ! 死ぬって、こんな痛いんだぞッ! もう勘弁してよッ‼」
圧倒的な痛みが
皮膚が溶ける痛み。
骨が溶け落ちる痛み。
眼球が焼け
全身が痛覚の神経になった様に痛みだけを
そして、急激な
そこで
一瞬、世界が一点に集約される様な妙な感覚を覚えた。
ボヤけた視界が、徐々に
「しっぽりは、いかへんけど、助けてくれたお礼に、うちらの仲間に入れたる! だから、今は、ここを切り抜けるで!」
「よかった……まだ、こっからだ……。シュタイガーンバオアーがやられた後からだったらどうしようかと思ったよ。でも、何度も痛いのは良くないぞッ⁉」
「何やッ⁉ いきなり文脈のおかしいこと言い出してッ⁉」
シュタイガーンバオアーの人が、さっきと同じ
あ、ここは一緒の反応なんだ……。じゃなくてッ‼
「
オイラの心の底からの一念の
「なんやようわからんが必死なんは伝わったッ! 分かったッ! とにかく回避に専念するから何とかしてやッ!」
「何だか分からんがロクスリーの言う事は盲言だッ! そしてロクスリーは素人のノーコンだッ! ゲズは
よし! シュタイガーンバオアーに攻撃が集中した! これでッ!!
「なんやッ⁉ ガトナスが2機とも、急に動きが止まりおったぞッ⁉」
「なッ…⁉ レンダーッ⁉ イリーッ⁉ どうしたッ⁉」
「すまん隊長。スタンアンカーの使い過ぎでエネルギー切れになっちまった……。」
「こっちもです。隊長すみません、後は、お願いします……。」
良しッ! ここからッ‼
「ザヌスはノーコンっス! ザヌスは最後で良いから、まずはエネルギー切れしたガトナス2機の手足を砕いて下さいッ!
「OKやッ! 君が何かやったワケやないけど、このガトナスのエネルギー切れを、分析、予測しとったっぽいから、確かに君の分析眼はしっかりしとるんやろう。……やからッ!」
シュタイガーンバオアーが、ガトナス2機の両手足を
「クッ……‼」
「こんな事で……ッ‼」
ガトナスの、お二人が、悔しさに言葉を詰まらせる!
「クッ……まだオレが
ザヌスのヨギーさんが果敢にシュタイガーンバオアーに攻撃を加えようとしているっぽいけど、相変わらずバズーカが思いっきり外れまくる。
その間に、シュタイガーンバオアーがガトナスの2機の両手足を粉砕し終わる。
「うっス! 後はザヌスを撃ち抜いたら全速ダッシュで逃亡っス!」
「おお、分かったわ!」
「クッ……そうムザムザやられは……ッ!」
ヨギーさんが何か言い終わる前に、
「いくら慣れん機体でも相手がたった1機やったらな!
シュタイガーンバオアーが、
「クッ…! それでも…ッ‼」
未だに、しつこく粘るヨギーさん。
ここに来て、ザヌスの
が、この距離でも、やっぱり明後日の方向に射撃が寄る。
「脱出せんかったら、どうなっても知らんでッ⁉」
シュタイガーンバオアーが
重装甲のザヌスとはいえ、
そこに、
「クッ……! これ以上は…ッ!」
流石に危機を感じ、脱出ポッドを起動し、ザヌスを捨てるヨギーさん!
それを尻目にシュタイガーンバオアーの
「テメェらッ‼ 憶えておけよッ‼」
吠えるヨギーさんを尻目に、
「うっス! 後は全速ダッシュで逃げるっスよ!」
「ほい来た!」
一気に、さっきまでの林を抜けて行く。
ドンドンと遠ざかって行く自警団の
よっしッ! この分なら、ブッち出来る感じだねッ!
「そう言えば、アナタのお名前は? オイラはロック=ロクスリーっスよ。」
駆けながらのオイラの問いに、
「ハァ…。あんなぁ、ロクスリー君? うちを知らんとか、めっちゃ田舎モンやからな、君?」
眉根にシワを寄せて、ため息交じりに言いつつ、
「そやけど、まあ、ある意味、うち的には嬉しい反応なんやけどね。」
複雑ながらも、少し打ち解けた様な柔らかい顔になり、
「うちの名前はミケ=スターライト。
と、笑顔で答えてくれた、ミケさん……。
なんだけど……。
「ミケさんっスか。自称有名との事っスけど、
己が人生の記憶をフル動員してみるが、全く該当する記憶の無いオイラ…。
「何や脱力するなぁ……。」
再度、複雑そうな面持ちを見せるミケさんだが、
「まあ、そういう反応も新鮮で、ええっちゃ、ええけどな。」
ホントに、凄い有名人だとしたら無礼千万のオイラの言葉にも、優しく返してくれた上で、
「それより、キミは、ロクスリー姓って事は、あの伝説の
と、逆に、いつか聞かれるのが分かっていた質問を寄せて来るミケさん。
「っスね。リィト=ロクスリーは、オイラの父さんっス。」
「リィト=ロクスリーの息子か。でも、今までのゲズの操縦を見る限り、
「非常に悲しい現実っスけど、その通りで……。」
ミケさんの的確な分析眼。
その上で、ホントの事だからどうしようもない…。
「まあ、ロックいう名前は、ありふれとるし、キミの事は、ロクスリー君と呼ぶかな。」
と、
「うぃっス。それで良いっスよ……って、うん? ふと思ったんスけど、
「まあ、そういうのも、確かに、ありやったね。けど、もうキミは後には引かれへんで。きっと今頃、キミはファトス村の人たちから指名手配されとる頃やろうしね。」
一瞬、言われた事を理解したくなくて心が凍る。
そして、恐ろしさで急解凍されて一気に恐怖が熱を帯びる。
「うがッ……最ッ悪ッ!」
自分の村の人に指名手配される奴って何よッ⁉
「まあ、心配しいな! さっき助けてもらった恩もあるし、うちらの
ミケさんがニッコリ笑顔で応えてくる。
その笑顔が今は非常に辛い。
ああ……天国の父さん母さん……オイラは自分の故郷の人たちに指名手配される様な……人間の底辺……ジ・アンダー・グラウンドの世界に突入しちゃいました……。
これからオイラ……どうなっちゃうのッ⁉
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