第8話 神滅の月十六日・生と死の意味 ③

「女神様!?」


 目の前にゴブリンたちに侵された人間の女性の名前は『夕月夏凛ユウヅキカリン』。現実世界に日本という国家の女子高校生だった。交通意外に死んだ彼女の魂は神界転生課に来ていた。その時、まだ女神である我の手で、この世界に転生していた。


「どうして女神様もこの世界に…… そして、その髪色と姿は一体……」


 彼女の反応は当たり前のことよ。聖なる女神が急に魔物の姿に変わってしまった。こういう場合に、誰でも驚きだろう。


「あぁ、久しぶりよね。夕月さん。話は後だ、まず服を整えてくれよ!」


 彼女の頬が急に真っ赤になってしまった。背を向けて、服を整えていた。


「ごめんね…… 女神様にこんな無様な私が見られたこと。お許しください!」


 彼女が震える声で神として我に謝っていた。しかし、神として、本当に人の魂を勝手に操ることができるか? こういう疑問が初めて抱いていた。


 彼女を抱き締め、手で後頭部を撫でている。


「もう大丈夫よ! 安心してくれ」


「女神様!!! うわあああああああ!!!」


 彼女が大声で泣き叫んでいた。我の心も針で刺すような痛みを感じてしまった。


 彼女が落ち着けたあと、この世界で生まれるからすべてのことを教えられた。


 彼女はこの世界に『ミサリ』という名前がある。シリウス王国にいる小さな村で妹と一緒に育てていた。普通の村娘として幸せな日々を送っていた。


 4年前に、突然に流行した伝染病は彼女の両親を奪ってしまった。姉妹二人が王国の商業都市・リストアーベの孤児院に送られていた。しかし、孤児院の土地が貴族たちに狙われてしまった。貴族たちが汚い手段で巨大な債務を与えていた。妹と孤児院の小さな子供たちを守るため、12才の彼女が冒険者になっていた。


 既に死んだ女性の名前は『セツナ』。遥かな東の国『ヤエハナ』から出身の剣士であった。『ヤエハナ』の文化は日本とそっくりしたため。彼女たちが仲良く友達になった。


 今回はこのダンジョンを攻略するため、二人の男性と一緒に来ていたが。ゴブリンロードに襲われる時、あの二人が彼女たちを見捨て、逃げってしまった。


 後のことが我に見たように、ひどいことにされてしまった……


「女神様…… 私、また転生できますか?」


 彼女の質問を聞き、驚愕してしまった。なぜ急に転生のことを聞く? まさか! 自殺つもりなの!! 


「バカなこと言うな!! 妹さんと孤児院の子供たちがあなたを待っているよ!! 勝手に死ぬことを言うな!!!」


 今の我に対し、勝手に死を選ぶことは絶対許さないことだった。 無意志的に彼女を叱ってしまった。


「妹たちに会いたいよ!! しかし、私はもう……」


 彼女の顔が真っ白になる。我の胸に寄りかかった。


 この時、我が気付いた。彼女の腰から足元まで、既に血で染め上がってしまった。


 まさか! 先に侵される時に、あの魔物たちに致命傷を受けたのか!!!


「目を覚ませ!!! しっかりしてくれよ!!! 夕月夏凛ユウヅキカリン!」


 彼女が緩めて目を開き、願いの眼差しで我を見ている。


「妹…… メルディのこと…… お願い…… し……」


夕月夏凛ユウヅキカリン! わああああああ!!!」

 彼女の僅か16年の命を落としてしまった。その顔を見て、心の感傷がもう抑えられない。大声で泣き叫んでいた。


 一日だけ、二度といい人の逝去を悼んでしまった。どうして、いい人の命が次々と奪われたの!! 神々は何のために存在なの!!


「夏凛さん、ごめんね。転生のことを今すぐ叶わないよ。でもね、約束しよう! 必ずあなたを生き返させるよ! そして……」


 側に既に亡くなったセツナさんの遺体を見る。どんな運命が彼女を待つの? また他の世界に転生なの? この悲劇を繰り返すの? なら!


「セツナさん。今すぐあなたの魂を呼び出す。もしあなたが夏凛さんと一緒にしたいなら、返事してください!」


「魂喰い!」


 二人の体が、光の玉に変わった。そして、クラウスさんの時と違う。光に彼女たちの姿を映っていた。


 これはセツナさんか。男に負けず劣らず気迫を持つ美人だった。


 二人が手を繋いて、優しい笑顔で我を眺めている。光の玉が我に向けて、漂って来っていた。


 彼女たちの魂を緩めて両手に載せて、胸に押し込んでいた。


「これから、よろしくね。夏凛さん、セツナさん! そして、必ず約束を守るよ!」


【魔物接近中!ゴブリンロード40体です!】


 いいよ! 今までの怒りを全部晴らすぞう! 


「かかってこい! 身の程知らずゴブリンたちよ! 毒音波ポイズンサウンドウェーブ!」


 …………


 ゴブリンたちを片付けた後、階段で二階に上がった。


「これは、川!!」


 地下二階は無数の水路からなっていた。


「トン」と、川に飛び込んでい。


「わあ! 魚だ! 綺麗!」


 下の階層と比べると、ここは天国だよ! 澄み切る水の中で色とりどりの魚が泳いている。川の底に宝石のような珊瑚がいっぱい生えている。


 でもよ。珊瑚って、海に棲む生き物じゃないの? まぁ、異世界だかれ、気にせず気にせず! 綺麗だけでも十分よ!


 わあ! カメさんもいた! 可愛い! 


 川に沿って前へ泳ぎながら、綺麗な景色をゆっくり楽しんでいた。まるで別の世界みたいようだ!


 アレ? どうしてお魚さんたちが物凄いスピードで前へ泳ぐの? まるで何かに追い付けられたようだ。この時、水の流れが速くなってしまった。


【魔物接近中!クラーケンJr.1体です!】


 クラーケンって、タコ!!! あのいっぱい触手が生える超エロ生き物なの!!


 ヤバイよ! 早く逃げないと、まずいことにやられるよ!!!


 しかし、タコの姿がだんだん近くになってしまった。


「やるしかない!毒音波ポイズンサウンドウェーブ!」


 気刃でタコを斬るつもりだったが。水の中に気刃が全然形成できないよ!


 タコはもう寸前に来た。まずい! それは嫌よ!! あれを使いしかない!


念力サイコキネシス!」


 今回の念力サイコキネシスの対象は我自身だった。全身が薄いオーラに覆われていて、上へ飛んで行った。


「トン!」と、川から飛び出した。しかし、慣性によって、天井にいる岩へ飛んで行く!!


「スポット! スポット! スポット! 串になじまったよ!!」


 周りのオーラが消えた。やっと助かったと思ったが。重力による地面に落ちってしまった。


「いてててて!! 腰が折れる!! わあ!! ここは…… 綺麗!!」


 ここは水に囲まれた小さな島のような場所だった。水面に流れる波紋が天井から下に伸びる岩に映っていた。水が透き通るため、お魚さんの姿も見えている。地面に緑色の苔がたくさん生えている。まるで天然のベッドのようだ!!


「柔い! ウフフ!」


 苔のベッドに横になり、ぐるぐる回っていた。でもよ、神としての我が絶対にこんなベッドを好きにならない。やはり、我は心までヘビになっていたよ!


 今日はここに泊まろう! せっかく柔いベッドがあるのに。


 でも、これからはどうすればいいのか? 外に出って、力で自分の勢力を造り、部下を集めるか? しかし、我が本当に他人を信用できるのか? そして、『命の真諦』は何? どうやってそれを探すのか? 


 疲れるかもしれない。考えただけで寝てしまった。

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