閑話【オンライン】:エイプリルフール




 今日がエイプリルフールという事で、ちょっとした嘘を付いたのが始まりだった。

 リアルと違ってゲームの世界には嘘を付いても良い日だ言っても伝わらない。

 なにが起こったかと言うと、ゲーム大会が勃発してしまったのだ。


〈ティフォが調子に乗って勝てれば豪華賞品なんていうから、こんな面倒な事をする羽目になったんだよ。責任は取ってよね〉


「いや~、マジですまねぇ」


「けれどコレは良い機会でもあるんだな。スノーの事を住民達に知ってもらうには良いイベントになっているでござるよ」


 まぁ確かにガウが言うことも理解出来る。


〈町にはなれましたか?〉


「えぇ、住みやすく、周りの子達も良い子が多くってねぇ。色々な事を手伝ってくださる」

「初めは半信半疑な部分はありましたけどね」


「モンスターって言っても、しっかりと働いてくれるしね。助けてほしい時にもすぐに手を差し伸べてくれるから、本当に助かってます」


 麻雀を知っている人達とは僕が、将棋はティフォが担当している。シュネーはまた別のボードゲームをしてくれているので、其々の得意なモノで勝負をしている。


 ケリアさんやスズメちゃん達も参加してくれているので、そっちはチェスだったり囲碁だったりと、色々な住民の話を聞きながら遊ぶ感じだ。


 ただし、このボードゲームで負けると、自腹を切ってプレゼントを渡さないといけない。ティフォが大々的に中央広場で叫んだせいで、一瞬にしてグランスコート全体に広まってしまったから、もうやり切るし事でしか収集が付かなくなった。


 プレイヤーからしたら、なんだ嘘かで済む出来事だったのだ。ティフォが大声で叫んだ内容は「ゲームに勝てたら豪華賞品を貴方にプレゼント」というフレーズがしっかりと住民達の心を鷲掴みにしてしまった為に、今ではお祭り騒ぎ。


〈ごめんね、ロン〉


「くぅ~、強すぎない⁉」

「可愛い顔して残酷ですよ~」

「もうちょっと、手加減をして欲しいなぁ」


 残念ながら本当に豪華賞品を用意しなきゃならないから簡単には負けてあげられないのだ。

 下手にファーマーのポイントを使える程の余裕もまだ無いのだから。


 何かあった時の為に少なくとも節約しつつ、五万ポイントは残しておきたい。余裕を見て十万くらいだけど、建材費や防衛費に仕事をしてくれている人達に出す経費やら細かなお金で出ていく分はしっかりと準備しておかないと後で大変だからね。


 中には、僕等の手作りで良いから欲しいっていう人も居るので、そこは欲しい人に参加した記念として、後々に送ってあげようと思っている。


〈嘘を真にするって大変だね〉


「下手に手を抜けないって辛いんだけど」


「拙者らはプロではござらんからな……加減なんてして負けてしま手は意味が無いんだな」「兄ぃは別に負けても良くない? 頑張ってフィギュアでも作ってあげれば皆が喜ぶと思うよ。モンスター達にはブラシ掛けとか、一日お付き合い券みないなのを作ってあげれば」


「本当なら、スノーと遊ぶ予定だったのにな?」

「大変な事になっちゃったから仕方ないよ~。コレはこれで楽しいけどね~」

「……貴方達、普通に高校生ぐらいよね。なんでそんなに強いの⁉」


 ケリアさんの言葉に全員が僕を見てくるので、首を傾げて皆を見返す。


「納得……なに、リアルでもあんな感じなの?」

「アクションゲームなら勝てるでござるが……他はちょっとやりたくないでござるな」

「この前に少し遊んだけど、運が絡まないと全勝された?」

「またお泊り会したいね~、次はなにを持っていこうかな」


 まだまだ、勝負を挑んでくる人は列をなしている。


 ちゃっかりボウガさんやエーコーさん達も混じってるのも確認出来た。


 むしろあの人達って僕等側に居るべき人じゃないのって思うんだけどな。





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