【オフ】338話:あと一人の悪友
制服の確認という事で、また着せ替え人形の様にされるかと思って戦々恐々としていたが、別にそんな事もなく。淡々のサイズ調整が行われていった。
〈意外とすぐに終わった〉
「そりゃあそうだろう。まぁ男子の時よりは時間が掛かってるとは思うがな」
「兄ぃはもうちょっと意識した着こなしをすれば、可憐な先輩なんて言われないんじゃないかな。寒いからってカーディガン着てさ、すぐに大きくなるとか言って一回り大きめなの買っちゃったせいで、未だにだぼだぼの制服だもんね」
まぁ本来ならそれで問題はなかったのだろうが、如何せん僕と樹一の体格は華奢なままだったのが一番の問題だと思う。もっと男らしくガッシリとした体格になるつもりだったのに、ふたを開けて見れば、筋肉は全然付かないし、身長は少しだけしか伸びなかった。
樹一の方も身長は伸びたけど、体は細いままで、しなやかなバレーダンサーみたいな体格にしかならなかったから、お姉様などと呼ばれる羽目になったのだろうな。
「制服しかないんだから、そんなに着せるモノなんてないわよ。ケリーさんのお店だったらコスプレ的なモノを着てもらおうかって思ってたけどね」
「その場合は勿論、樹一ちゃんも一緒に着飾ってあげるわよ」
「なんで俺まで一緒なんですか」
〈ふっ、死なばもろとも。そうなったら絶対に僕が巻き込むからだよ〉
「……終わった?」
「なら早くお昼を食べに行こうよ! 予約してるお店があるんだ~」
「拙者が予約をしておいたのでござるがな、まぁ良いでござるが」
もう何時もの面々が揃うのが当たり前になったな。ただ、昔みたいにとはいかないけどね、バカをやってた時のメンバーがあと一人だけ掛けている。今頃は何をしてるんだろう。
「制服を買いに来ると、バカやってた頃を思い出すな」
主に悪ガキ三人組として遊んでいた樹一が、思い出す様に言う。
基本的に、僕は巻き込まれるか何時の間にやら主犯格として扱われる、三人のリーダー的な立ち位置に居た。お姉ちゃんのせいでもあるのだが、そこは置いておこう。
「そう言えば、どうやら拓もズィミウルギアをやってるみたいでござるよ」
「は? でも一度も会いに来てないぞ?」
「拙者は真っ先に樹一妃を殴りに行ったでござるがな……拓は捻くれ者でござるぞ、その癖して妙な部分では武士みたいな頑固さもあるんだな。きっと同等の力を付けてから全力でPVPでも仕掛けてくる気なんだな」
喧嘩するなら条件は対等でタイマンと口癖の様に言う。綺堂(きどう)拓(たく)という。爽やかなヤクザなんて言われる最後の一人。
「あと、気を付けるんだな。ヤツの性格上、狙われるかも知らないんだな」
雷刀が僕の方をジッと見ながら言う。
〈はい? どういう事ですかね?〉
「あ~、アイツの好きなタイプって幸十みたいな性格で小っちゃいのが好きだもんな」
「あの見た目で可愛いモノ好きなんだな。女性にはクソ真面目なほど紳士的でござるし」
そう二人が面倒そうに話していると、それを聞いていた小鳥ちゃんや双子姉妹達の雰囲気が一瞬にして変わっていった。
「拓って誰です?」
「知らない人が出て来たね」
「兄ぃの悪友で親友。見た目は上の下くらい。ただし、兄ぃと同じで自分の容姿を活かさずに過ごしてるから、着飾れば普通にモデルとしては売れそうなレベル。付け加えると、器用な脳筋お馬鹿さんとでも言えば良いかな」
小鳥ちゃんに物凄い言われ方をしてるけど、大方合っているので否定のしようもない。
(それは強敵になる?)
(現状では一番の伏兵は樹一だよ)
(兄ぃにときめかない様にしてるんだから、そこまでの強敵じゃあないけど。下手な事をして恋心なんて知った日には面倒な事になりかねないよ)
なんか女子グループでヒソヒソ話を始めてしまった。
そんな様子を母さんは楽しそうに見ているだけであった。
どうしたものかと考えようとした時には、お店の人が個室へと案内をしてくれて、豪勢料理が並べられた机に案内された。僕の編入祝いという事らしい。
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