【オンライン】315話:勝負と試合と勝敗の価値(23)




 さてと、時間もないから本当にシュネーには感覚で覚えて貰うしかない。


〈覚えやすいサビの部分を繰り返すから、一緒になって演奏してね〉


「マネするのね、頑張ってみる」


「その楽器は特別製でね~、音を鳴らせば音符の結晶が飛び出る仕組みになってるのよ。だからシュネーちゃんでも聞きながらと視覚でも、覚えられるんじゃないかしら」


 お姉ちゃんいしては、準備が良すぎる。


 突発的に始める事には、本当に気まぐれで準備だってその場でする感じなのに、妙に段取りが良い所が気になる所だ。


「――い、ちょっとスノー。ストップ~」

 考えごとをしながら弾いてたから、シュネーの声が全く聞こえていなかった。


〈ごめんね、色々と考えながら演奏してた〉


「アレで考え事をしながら演奏してたの? 頭おかしくない⁉」


〈なんか凄い言われようなんだけど〉


「そりゃあ、サビだから盛り上がる部分だってのは分かるけどな、初っ端から弾けるレベルの演奏じゃあなかったぞ。お前の指が何本あんのか数えたくなったぞ」


 失礼な、十本しかないよ。

 そんな音楽ゲームの達人さんみたいな気持ち悪い動きはしていないと思うんだけどね。


「楽器からあらゆる音符が飛び出ては弾けてたんだな、アレはきっと普通じゃないんだな」


「聞いてて心地良いんだけど、そのレベルをシュネーちゃんにいきなり弾けっていうのは、流石に可哀想だと思うな」


〈えっと、とりあえずは音階だけでも覚えて、テンポとかの大体の感じは掴めたかな?〉


 一回目は通しで聞かせただけ、という感じで話を変えようとしたのだが、皆からジト目で見られてしまう。お姉ちゃんが急に言い出した事なんだから、色々と悩んじゃうのは仕方ないと思うんだけどな。


「まぁ、曲のイメージは掴めたと、思うけどね。今度はちゃんとボクがついていける感じのテンポと難易度でお願いね。しっかりと教えてよ」


〈了解。他の部分でシュネーはパニアと一緒にゴーレム達を使って、別の演出に集中してもらうから、とにかくサビだけは覚えてね〉


 サビだけを一緒に弾くだけなら、何とかなるだろう。


「さぁ、ティフォとガウにも久しぶりに本気でやってもらうわよ。中学時代の学園祭で披露したレベルは軽く超えないとダメだからね」


「はぁ⁉ いやいや、アレは……はっ⁉ だから俺だけこんな衣装を着せられてるのか」


「ふむ、やりたい事は大体分かったでござる。ミラーボールの変わりは拙者が何とかしてみるでござるよ。パニア殿にも手伝って貰えば会場全体には、影絵を出せると思うんだな」


「流石ね。ゲームの事はやっぱり貴方達の方が上よね」


 お姉ちゃんとティフォは学園祭で披露した、踊りと歌を担当してくれる。

 ガウは演舞を組み込んだ派手な演出で、会場全体の盛り上げ役。

 僕とシュネーは会場全体の雰囲気を作る為の仕掛けと、音楽を担当と言った感じだ。


 お姉ちゃんのスキルで会場全体を暗くして、光の演出で影を動かし、歌に合わせた様に物語をキャラをティフォが踊りながら演じる。


 暗くした場所では、僕とシュネーが弾く楽器によって、影絵の邪魔にならないように、音符の魔法による光で足元を照らしていく。


 ガウはパニアと一緒に会場全体の風景を作って、素早い動きで色々なモノを動かして、場面の切り替えや、迫力のある騎士の演出をしていく。炎を切り裂き、宙を掛ける歌姫はもちろんお姉ちゃんの役目で、それを護衛するのはティフォとスパイクちゃん達だ。


 セーラー服を元にした軍服っぽいデザインで、ケリアさんのアクションギミックを使って目立つようになっている。

 純白の姫騎士というポジションでお姉ちゃんと一緒になって、カッコ良く踊りながら歌うのだ。



 何度かリハーサルを重ねて、何とか今日が終わるという時間までには、お客さんに見せられる程度の完成度にはなったと思う。


「ふふん、サプライズだからね。やっぱり敵味方のリーダー格が一緒になって有象無象をなぎ倒す勢いって必要よね。ズィミウルギアだと本当に色々な事が出来るわね。私の仲間内だと、ここまでのレベルにはまだまだ遠いのよね。ゲームに不慣れな子達ばっかりだし」


「付き合わされる拙者達の気持ちも、考えて欲しいんだな」

「うぅ~、逃げたい、出たくない。でも、出ないと学園に俺の恥ずかしい写真集が……」

「楽しみだねスノー、こういうのもやってみたかったんだ」


〈ねぇシュネー。お姉ちゃんに毒されちゃあダメだかね〉


「あら、言うようになったじゃない。お姉ちゃんは嬉しいわ~」


〈ひぃ! ごめんなさい、嘘です、何でもないですから〉


 イベントが大いに盛り上がって、終わろうとしている最後に僕等が乱入する。


「さぁ、最後に一発盛り上げていくわよ⁉」



 お姉ちゃんに全員が背中を押し出される様にして舞台に飛び出した。



 デカい花火の一発をパニアが打ち上げる。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る