【オンライン】306話:勝負と試合と勝敗の価値(15)




 お姉ちゃんは言いたい事だけを言って、シュネーを揶揄いつつティフォや僕で遊び、勝手に満足するまで弄られ続けて、やっと解放された時には皆で疲弊しきっていた。


「嵐の様だたんだな」

「言うな、今は何も思い出したくない」


 リビングの床ではボロ雑巾の様に男二人が打ちひしがれている。


 この二人はティフォを餌として、ガウの心を散々に引っ掻き回して、危なく変な扉を開きそうになっていた。もしも、この場にケリアさんが居たら、更に泥沼化していた事だろう。


 ティフォは挙動の一つ一つを弄られて、羞恥心を煽り、女の子らしい仕草をさせていった。そこで、ガウの心を引く様な事をさせていくんだから、本当に悪魔だよね。


「おねいさま……ふふ、ボクのおね~さまは、セカイイチ」


 シュネーの方は、まるで暗示でも掛けられた様に魂が半分くらい抜けた状態だ。


 手の平の上で踊らされて、如何にお姉ちゃんよりも下である事を悟らされるような事ばかりで、僕の事でマウントを取ろうとするも、全て玉砕されていた。


「阿鼻叫喚の図ですか? あの方には下手に関わり合いになりたくはないです。しかし、なんとも幸せな時間だった事でしょう」


〈カミルさん……なにかしてるよね。なんか右目辺りが微かに赤みがかってるんだけど〉


「気のせいです」


 僕に言われて、すぐに右目を閉じてウィンクで誤魔化した。


「画材が必要ですね……先ほどのシャープ様と戯れている姿は見モノでしたね」

「だったら良いモノが先ほど手に入ったので、そちらで絵でも描いたらどうかな」

「えぇ、頼りにしているわね」


〈やっぱり何かのスキルだよね⁉〉


 問い詰めてみるけど、しれっと顔を背ける。


「何のことでしょうか? 私はただ皆様のやり取りを微笑ましく見ていただけです」


 何時ものカミルさんらしくないし、おすまし顔が逆に何かをしていたと言っているようなモノだ。テキパキ手際よく、書類作成をしていく。


「はぁ本当に此処だと別人の様に働くわね」


 アンさんは纏められた資料を更に分別して、探し出しやすい様に整頓していき、僕にも分かり易いように胆略化して、数値化した物を僕達に見せてくれる。


〈やっぱりお客さんは最低限しか来てないんですね〉


「はい、親子で来た方。様子見で来場した方などですね」


「ただ公演を見に来た方々は、大体が何かしらに参加していますからね。こんなグラフは見たことがないですよ。人が増えていく毎に出演者が増えていくんですから」


 円グラフなんかにすると分かり易いが、参加者である演者が勝手に増えていくので、お客さんのグラフがどんどん小さくなっていく。


 何か景品を当てる時の特賞とか、ルーレットの大当たりを狙う的みたいだ。お客の部分が五センチか十センチくらいしかないんだもん。


「こんなデーターを見れば、確かに俺らが相手にならないと思われても仕方ねぇよ」


「パッと見た感じでは、アイドルであるテント組にお客を取られたと勘違いするのも分かるんだな。初めから舐められた感じではあったでござるからな」


〈相手のデータってあるの?〉


「今準備してますよ。コレがそうです」


 さっきからカミルさんが纏めていた資料がテント組のデータを調べたものだった。


「お客さんの数が圧倒的に多いね」

「ただ、これは……酷いでござるな」

「なんで俺らよりも数が圧倒的に少ないんだ?」


 人数を見ると一桁くらいこっちが勝っている。


「多分ですが、リピーターの数かと思います」


 僕等の方は区画毎でやっているテーマが違うから、そこでまた違う事を学びたいと、何度も足を運ぶ人達が多く居るようだ。





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