【オンライン】299話:勝負と試合と勝敗の価値(9)




「さぁさぁ、今日一日は君もサーカス団の一員だ。興味があるモノに挑戦していってくれ」


 牧場の入り口で妖怪達が呼び込みをしている。


 何処で何をやっているのか分かり易くするために、ちょっとした牧場マップが描かれたパンフレットを来てくれた参加者に配り、道案内には魔物達や妖精達が率先して手伝ってくれている。まぁ、彼等のお目当ては、手伝った時に貰えるお菓子やら好物だけどね。


 それを食べる姿が可愛いと、また違ったお客さんも参加しているの丁度良い。


〈なんか、違った意味で魔法学校みたいな感じになってない?〉


「まぁ、サーカス自体が体の動かし方だったり、魔法の基礎から学ばないと出来ない事だからな。それを鍛え続けてた人達が出来る超人芸なんだから、間違いじゃあないだろう」


 僕等が最初に魔法を習得した時の道具を用意して、初歩の魔法を作り出してから、それを魔法が得意な人が不安定な状態を安定させてから、妖怪達がそこに少しだけ手を加える。


 子供達には驚かせないよう、可愛らしい小さな生き物を模した形にして動かしたり。


 風船のボールみたいにして遊んでみたり。


 逆に魔法が苦手な子達は体を使った遊びをしつつ、子供達にも出来そうな事を補助付きでバク転や逆立ちなんかをしている。


 体操の訓練みたいに、マットみたいな柔らかい素材を地面に退いて思いのままに体を動かしている。


〈コレってさ、村人達の訓練みたいになってるけど……修行みたいな感じだよね?〉


「そうだな……多分だが、このイベントが終わったら住人達の大半が魔法やら、何かしらの技やらスキルやらが生えてるんじゃねかな」


「ある意味では、防衛や住民の質が上がるって事で良いのかな?」


「知識量もそれなりに上がりそうでござるな。教師達もこれから教えるであろう人達と交流が出来る。それに、多人数に対する教え方の知識と、トラブルの対策も見えてくるんじゃないかと思うんだな」


 僕等は見回りも兼ねて、ゆっくりと歩きながら舞台の上で風の魔法などで高く飛び上がり、空中でバランスを取りながら踊る様に、跳ねたり猫みたいにクルクルと回転したり。


 時には道具を使って、その輪っかの中心を潜ってみたりしている。


 誰もが空を泳ぐ様に移動しているが、誰もが空を飛んでいる訳ではなく、風魔法で足場を作って移動しているだけ。


 だから、ある程度の知識と魔法が使える人が居るだけで、誰もが空を駆ける事が出来る。身体能力高い青年が、近くで補助を借りてサーカス団の人と同じ様に空を移動していくのをみて、他の住人達もそれを楽しそうに見たり、恨めしそうに眺めたりしている。


 別の場所では、空中ブランコで遊ぶ人達もいる。


 安全性を考えて、広めのネットを張ってあり、浮遊のスキルがある妖怪達が補佐している。


〈よくやるね、アレって絶対に怖いよね〉


「そうかな? ボクなんかは常に飛んでるからさ、高い場所って慣れて来たんだけど」


〈それは飛べるからだろう。基本的には落ちるんだから、あのヒュンって落ちる感覚が怖いんじゃん。飛べるっていう安心感は無いんだよ〉


「それでも、あの子達はサーカス団の人達がやってた空中ブランコを楽しんでいるようだがな……確かに、俺もスノー側の意見に同意なんだけどさ」


「まぁまぁ、どこも盛り上がってる証拠なんだな。自分達がやってる訳じゃあないんだから、少しは落ち着くんだな」


〈一番人気はズナミとミスユ団長の所だね〉


「良いコンビネーションだし、華やかさも力強さもあるから、見栄えもバッチリだもんね」


 ズナミが力でミスユ団長を高く飛ばしたり、土魔法で作った大石をズナミが打ち上げて、花火の様に散らすと、それをミスユ団長が一瞬にして花にしたり。

 花びらにして周囲に舞い上げて、花吹雪で周囲を飾る。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る