【オンライン】292話:勝負と試合と勝敗の価値(2)
「可愛いね~、お姉さん達と良い事をして見ない」
なんでそんな危ない勧誘みたいな言い方で近付いてくるんだ。
ショートカットのスポーツモデルみたいな女性が、両手の指を全んぶ動かしながら迫って来るものだから、ついつい身を縮めて逃げようとしてしまった。
「もうマリってはそんなことをしたら、こわがっちゃうでしょうが」
「フレンちゃん痛いよ~」
マリと呼ばれた子の後ろにいた巨乳のお姉さんがチョップをかましてくれて、怪しい手つきで近付いてきたマリさんの動きが止まる。
「スノーはデリケートなんでね。下手な絡み方は止めて下さいよ」
ティフォが僕とアイドル達との間に割って入ってきて、壁になる様に立ちはだかってくれたので、さらにホッとしてしまい、思わずスカートを掴んでしまう。
急に現れたティフォに、今度は男達が反応を示した。
「凄い可愛いじゃん。君もアイドルをやってみないよ」
不良っぽい青年が身を乗り出し、ティフォの体を上から下まで舐める様に見る。
「いや、興味ないんで良いです」
同じ男に妙な視線で見られたせいか、背筋から震えるように気持ち悪がっている。
そりゃあ、女の子として誘われちゃあ嫌だよね。見た目は女の子にしか見えないけど、やるならば格好の良い男性グループに誘われたいだろうにね。
「これまたあっさりとフラれたな。ギンはコレで何回目かね」
眼鏡は掛けていないが、ウルフヘアーの利発っぽい感じのお兄さんが笑いながら言う。
「ゲテクさんや、俺が誰彼構わずに言ってるみたいに言わないで欲しいんすけどね」
不良青年が睨みつけて言うが、ゲテクと呼ばれたウルフヘアーのお兄さんは全く気にせずに、軽く流してため息を付きながら、逆に鼻で笑い挑発するような笑みで見返している。
「ギンは顔が怖いんだからさ、そんな感じだと女の子が皆逃げちゃうよ」
「余計なお世話だ。コレでも人気は上位だろうが」
悪態を付きながらも、ちょっとショックを受けている感じが少しだけ見て取れる。
「でもティフォナちゃんなら歌も上手いし、家の妹と一緒にデビューって言うのはアリだと思うな~。私も楽しいことが増えるしね」
ニヤニヤとしながらお姉ちゃんが僕等を様子を窺いながら言う。
「声が綺麗だもんね~、歌ったら透き通った声音で心地良さそうだもん、シャープ先輩に上手いって言われてるならやっていけるんじゃない?」
「だよね~、キミもやってみなよ」
〈勧誘はもう良いんで、このお姉ちゃんをさっさと持ち帰ってください〉
「あ~ん、スノーがいけずだよ~」
頬を合わせてスリスリと動物みたいに擦り寄ってくる。
お姉ちゃんの顔に手を当てて突き放そうとしても、物凄い力で抱き着かれて全く離れない。コレが筋力値の差か……もどかしい。
「シャープ先輩のこんな姿は初めて見るな」
「家では何時もこうなんじゃないか。妹ちゃんを見ろ、物凄く慣れた感じでウザったそうにしているぞ。あのシャープ先輩に甘えられているというのに」
普段からお姉ちゃんはどういう接し方で、この人達と過ごしているんだろう。
なんか物凄く驚愕した顔で皆が見てるんだけど。
「はいはい、音姉ぇはお迎えに来た後輩さん達と自分のテリトリーに帰りましょうね~」
「あ~ん。まだ妹成分を補給できてないのに~」
子猫の首根っこを掴む様にして、お姉ちゃんを引き剥がしてくれる。
〈ふぅ、さっさと持って帰ってくださいね〉
ようやく解放されたが、お姉ちゃんはすぐにまた僕に抱き着こうとしてくる。
サッとティフォを盾にする様に後ろに隠れてやり過ごす。
「邪魔して悪かったすね。俺達は全力で潰しに行くんで、せいぜい頑張ってください」
「こっちに寝返った方が良かったって思わせてあげるからね。絶対に君達はアイドルをやった方が良いってことも分かると思うな~」
「泣かない様に、精々頑張って」
「勝たないと先輩達に死ぬほど扱かれるからな、下らない勝負だけど。全力で勝たせてもらうよ。悪く思わないでくれよな」
散々好き勝手なことを言って帰っていった。
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