【オンライン】250話:ハロウィン(6)




「ねぇ、そんな仮装で良いのガウっち……」

「シュネー妃……そんな目で見ないで欲しいんだな。コレが最善の策なんでござるよ」


 ガウが選んだ仮装は豚の着ぐるみに入るという手段だった。


 マスコットキャラ的なデフォルメがされているので、確かに傍から見たら男一人のハーレムパーティーには見えないだろうけども、色々とかなぐり捨ててるね。


 ティフォが居る男が一人って訳じゃあないんだけど、どう見ても女の子だからな。


「皆が衣装を決めている間に周辺を見て回ったのでござるが、幽霊は一匹も見当たらないんだな。何かしらのヒントがあると思うのでござるが……全然わからないでござるよ」


「基本的にランダムで現れるらしいから、お祭りを楽しみながら探した方が精神的にも楽よ、血眼になって探してると逆に見つからないってさ」


「それはミカっちの仲間からの情報?」


「えぇ、一人は楽しんでて偶然見つけて、もう一人は色々な場所でお祭りの雰囲気を撮影してたら見つけたって報告があったわよ」


 物陰に隠れていた子供が居たらしい。


 もう一人は、少し高い建物の屋上に居た青年とスクリーンショットを撮った写真が一枚。

 やはりどちらも少しだけ透けて見える。


「普段も透けてるとは限らないのかな」


「町中で一緒になって楽しんでいるという事は、もしかしたら実体のあるゴースト系が徘徊している可能性もあるでござるな」


〈それって探しようがないんじゃ?〉


 村人もプレイヤーも仮装しているから、誰も彼もが違和感しかないきがする。


「お嬢ちゃん達、お一つどうだい?」


 四角いゼリーを爪楊枝で刺して、僕等に見せてくる。

 この屋台の主は村人みたいだ。プレイヤーのレーダーアイコンではない。


〈色々な色がありますね〉


「あぁ、色事に味が違うから気に入ったら買ってくれよな」


 とりあえず差し出された赤いブロックを選んで、一口だけ貰う。


「スノーの赤色は何味? ボクのはレモンだったよ」

〈イチゴだね〉

「透明感のある赤はリンゴみたいだぞ」

「以外に美味しいわね、グミというよりも心太に近くて食べやすい」


 つるんと喉を通っていくし、瑞々しいから喉越しも悪くない。


「ボックスで各種12個入りの一箱だよ」

〈……コレで買える分を家に送って欲しい、後二箱は持って帰る〉

「あいよ。ありがとうございます。スノー様ですね……ファーマーの?」

〈あい、そうです〉


 僕とシュネーを何度かキョロキョロと見て、次にいつも一緒に居るティフォに視線が向く。

 それで確信を持った様で何故か急にペコペコとお辞儀して、なんか知らないけどお礼を言われてサービスで一箱、ちょっと違う種類のモノを貰ってしまった。


「お店が出来たら今度買いに行くね~」

「は、はい。よろしくお願いします」


 他の皆も一箱は買って、ミカさんは僕と同じくらいの数を買っていた。


 屋台も食べ物だけでなく、マジックアイテムだったり、武器が売られていたりする。ウサギ達が農具を売ってる屋台に並んでいたのは驚いた。


 鍛冶屋のブルさんとタムさんが作った農具は特殊効果が高いから人気なのだそうだ。


〈……ん? あの屋台って何?〉


 事前に把握していない位置に屋台がある。

 紛れる感じで端っこの方にある屋台だが、その周りにある屋台も自分は設置していない。


「なんだ? 許可してない場所でやってる人が居るの?」


〈ティフォも見てたから知ってるでしょう?〉


 ずっと一緒に行動しているんだから覚えてるだろうと思って話を振ったのだが、首を傾げているだけ、ちゃんと把握はしていないらしい。


「良く覚えてるな。結構適当に並べてたと思ったけど」

〈あそこは人目に付かないし、何かあった時に対処も出来ないから設置何てしないよ〉

「警備員でも呼ぶ? ガウっちに任せればすぐに連れて来れるんじゃない?」

「この格好では走るスピードは半減でござるぞ」

「それでも私達の誰よりも速いから大丈夫でしょう」


「ん~、このメンバーなら何かあっても対処できるしさ、声かけてみようよ。念のためにガウが声を掛けてね、サポートはミカさんと自分が請け負うよ」


〈それじゃあ、ティフォとスパイクは何かあった時にすぐ動けるようにしといてね。僕とシュネーで逃げられても大丈夫なように足止めトラップを設置しとくから〉


 連携を決めて、警戒しながら謎の屋台へと近付いていく。



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