【オンライン】230話:恋のライバル認定(8)
「それじゃあ待っててね~」とギルドで別れ、僕等は先に転移でグランスコートに戻り待つこと五分もしないで、フー先輩とガウが現れた。
〈本当に早く着いたね〉
「ほぼ一直線に来たんだな」
何故かガウは少しだけ疲れた表情をしている。
「もう少し見て回ってきても良かったのに」
「牧場を見てから必要な道具を買う時に見て回ろうかなって思ってるから、今は良いかな」
今はティフォと遊ぶ時間が大事だと、遠回しに言っているみたいだけれど……ティフォはその意味には気付かない様子だった。もしくは、この後“二人っきり”でお買い物を楽しみたいってニュアンスも含ませていたかもしれない。
「それじゃあ早く鬼達の集落に行こうぜ」
「もう、ティーちゃんの意地悪」
フー先輩は少しだけ頬を膨らまし、拗ね気味にティフォを睨む。
「ティフォさんは残念さん?」
「そうね、アレは鈍感系ね。見た目はあんなに綺麗な人なのにね」
「我が兄……姉ながら恥ずかしい」
「ティフォっちだから仕方ないね」
まぁティフォだし、しょうがないね。皆に呆れられていたが、何故か一瞬だけフー先輩と目が合った気がした。……気のせいだとは、思うんだけどね。
〈牧場はどの辺にしようか? 何処か良さそうな場所ってあるのかな〉
「そうでござるな、ただ草原のど真ん中に作るよりも、森や岩場、川や水場が近くにあった方が良いんだな。育てるモンスターによっては住みやすい場所があるはずなんだな――」
それに、属性による育成効果も変わってくるらしい。
水場の近くなら、鍛える時に水の能力が上昇しやすいし、水技の訓練も出来る。風や水の能力では回復系や補助系統の技を覚えやすくなる。ちなみに草原は風という属性扱い。
森や岩場は、基礎パラメーターが主に上昇する。土系統。
高地や洞窟、火山などのホットスポットなんか特殊な技や魔法を覚える場所もある。
ギャザラーのポイント次第では、特殊フィールドを設ける事も可能らしい。
「フー先輩はどの辺が良いっていう希望はありますか?」
〈コレが鬼の集落地図です〉
「うん、ありがとうね~」
なぜだろう、フー先輩から僕に向けられる笑顔に違和感があるんだけど。
「そうね……この辺って大丈夫かしら?」
森よりではあるけれど、少し川と岩場が混じった場所がある。
ズナミを呼び、その場所について問題が無いかを聞く。
『誰も使っていない場所ダ、牧場にしても問題ないゾ』
〈ありがとうね。どうかな、この辺の暮らしは慣れてきたかな?〉
『あぁ、皆、優しい者達だ。問題ナク仲良くやれていると思うゾ』
前に見た時よりもしっかりとした服装で、イケメン度が増している気がする。
「これから此方でお世話になるフーと申します。ご指導のほどよろしくお願いします」
『自分も此処では新参者ダ。お互いに頑張ってロウ』
鬼の集落も徐々に活気が出来てきている。プレイヤーの人達もチラホラと居るみたいだし、村人との交流も盛んになってきたみたいだ。
お互いに畑の事で相談したり、力仕事は鬼達が積極的に手伝い。細かな作業なんかは村人達が助けてあげているみたいである。
「先ずは水場と……お風呂も作ってあげたいな。牧草は農家の人達から貰うとして――」
牧場地は僕の紹介である程度は手に入るから、ギルドで貰って来たのは訓練場とお風呂、道具小屋やエサ小屋なんかを貰ってきたらしい。
皆で草を刈って芝生を整え、川からお風呂場へと引っ張り、そこから浄水路に繋ぐ道を考えて繋げる。訓練場は川と岩場の近くに設置して、森へと出れる様に道も繋げた。
「初めはこんなものですかね」
一息ついて、しばらくティフォの頭の上で休む。
「も~、ボクの頭の上が開いてるでしょう」
〈いや、今は身の危険を感じるのでこっちで良いです〉
シュネーの頭の上に居ると、女子たちによる僕を可愛がる争奪戦が始まるのだ。
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