【オンライン】229話:恋のライバル認定(7)




 木の苗を買っていくにしても、荷馬車と馬はグランスコートにある。


〈転移で移動して、先に牧場の場所を決めておく?〉


「それはアリでなんだな。ギャザラーを初めから選択したという事は土地チケットをギルドに行けば、配布されるはずでござる」


「ちょっとら……ガウちゃん⁉」


 フー先輩はのんびりティフォと一緒に移動したかったのだろうけど、グランスコートまでの道はもうスズメちゃん達と通って来たばっかりだからね。


「大丈夫ですよ先輩、ギャザラーは常時、移動スピードが通常の倍で動けますから。下手な乗馬移動よりも速いですよ。それに【離脱】もしくは【逃亡】っていう逃げ足が速くなるスキルもありますから、4から5分くらいで付きますよ」


「もう~、そういう事じゃなくってね」


 ギルドの方へと案内しようとティフォが先頭を切って歩きだしてしまう。


「ティフォナ妃にそういう事を期待するだけ無駄なん――ぐふぁ⁉」


「ガウッち⁉」


 凄い、的確にティフォが気付かない瞬間を狙ってガウの脚を踏んで、脇腹に一発の肘鉄を食らわせ、さもガウが一人でに転んだ様に押し倒し、地面に転がした。


 合気道の様に流れる動きで、一瞬の出来事だった。


「何してんだガウ? ゲームですっ転ぶなんでお前らしくないな」


 声に驚いて振り返ったティフォには、ただガウが一人で転んだ様にしか見えていない。


「最初に感じた雰囲気は、偽物?」


 残念ながらムーンちゃん、フー先輩は猫を被っている訳じゃない、素でぽやぽやしてるんです。

 ただまぁ、中身は猫じゃあない事は……確かだとは思うけどね。


 そんな事を思っていると、ニッコリとした笑みを向けたまま僕の方を見て来た。


〈あの、なにか?〉

「ふふ、な~んにも」


 逆に何も言わないのが怖いんですけど。


「ん~、素でアレなんじゃないかな? だってアレのお姉さんだよ。普通の訳がないよ」


「サクラが正解ね。あの人は元からあんな感じだから驚くけど、基本的に自分の本性は隠そうともしないわよ。むしろ前面に押し出してくるから気を付けなさいよ」


 ただ、残念な事に好きな人には逆に素の自分を出すのがニガテみたいで、ティフォには未だに勘違いされたままである。


 ガウと同じで、やっぱり残念な所がある人だ。

 そう言う所を見ると、姉弟だなって思う。


「はぁ、もう良いわ。ガウちゃん牧場のチケットで良いのよね?」


「あってるんだな。場所はスノー姫が用意してくれるから問題なく確保できるんだな。案内は拙者がするから、移動には二分くらいは短縮できるでござるぞ」


「そう、それならさっさと済ませちゃいましょう」


 ティフォが関わらないとなると、あからさまにテンションが下がっている。


「これを機にして、ティフォナ妃も何かしらモンスターを増やしてみたらどうでござるか? そろそろ戦闘にも慣れてきたでござろう」


「それもそうだな、次こそは騎獣になりそうな大型種を探すぞ」


 足元に居たスパイクが何かショックを受けている。


「大丈夫だって、一番の相棒はお前だからさ。新しい仲間が出来るんだぞ」


 スパイクを抱き上げて、ティフォが優しく撫でながら言うとすぐに元気になり、体を擦りつけながら嬉しそうに鳴いている。


〈騎獣って言ってもさ、どんなモンスターと仲良くなる気なの?〉


 むしろ村に居るモンスターから選んであげた方が良いんじゃないかって思うんだけどな。ウサギさんとかハチさん達も虎視眈々と、ティフォの仲間になるチャンスを窺っているというよに、まぁこの会話をグランスコートでしていたら、モンスター達が挙ってアピールをしてくるだろう、そこから激戦が始まって格付けまで起こるんじゃないかと思う。


「ウルフなんかロマンだよな」


 そう言われて、思わず森を守護する大きな狼に乗る少女の映画を思い出した。


 でもティフォの事だし、また別のモンスターを仲間にしそうだ。それに加護の事もあるから、簡単には大型になるモンスターは懐かないだろうね。




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