【閑話】森の管理者達。
「さてボウガよ、献上してくれたコレの遊び方を我等に教えてもらおうかのう」
「教えるのは構いませんがね。自分はまだまだ駆け出しですよ。完璧に遊び方を把握している訳じゃあないんですが……それでも構いませんか?」
「構わんよ。駒の動かし方は大体だが覚えた。後は実際やりながらの方が覚えるじゃろう」
エーコーの肩には妖精達がしっかりと遊び方を覚えようと、盤上を真剣に見ている。
そしてこの場にはボウガやエーコーとさほど身長が変わらない女性も数人。
「何の用事で呼ばれたのかと思えば、遊びとは……ふむ、興味深い遊びね」
「どちらも良い音がするね……私は囲碁の方を覚える」
「あら、じゃあ将棋は私が担当ね」
エーコーにも劣らない美貌で、綺麗なお姉さんが数名が碁盤や将棋盤を撫でたり、駒を指先でクルクルと回しながら、しっかりと感触を楽しんでいる。
草葉の様な緑色の髪は、日の光で透けた感じの色合いで光り、サラサラな髪質をしながらもウェーブがかった長い髪をしている。
「トワちゃんは囲碁ね~」
「黒は私達、トワちゃんは白だからね」
村に良く遊びに来ている妖精達で、トワと仲の良い子達が囲碁の相手をしてくれる。
「お父さん……まだ妖精達だけなら緊張しないんだけど、流石にニュムペ様達はムリ⁉」
カッチカチに全身が硬直してしまっているトワは、必死にボウガを見て助けを求めるが、肝心のボウガ自身も、逃げられないと悟った顔でトワを見て首を振る。
「大丈夫だよ、ニュム様達は優しい姉妹だよ~」
「そうそう、二人なら大丈夫だよ」
「木を大事に使ってくれてるし、酷いことしないもんね」
どの道、妖精達に囲まれいる状況では逃げ場などない。
「面白そうじゃろう。お主らも覚えて我の相手をしてくれ」
「まぁ、楽しそうだし良いけど。エーコー様、偶には私達に木々や川の見回りを手伝ってくださいよ。最近はサボりがちですよ」
「一姉様が随分とまともな事を言ってます。明日は火の玉が空から降ってきますかね」
セミロングの活発そうな子がエーコー達をジト目で見る。
「はぁ、一姉がエーコー様と遊び惚けている未来が垣間見えます」
幼い見た目の子がため息をワザとらしく付きながら言う。
一姉とエーコーは気まずそうにしながらも、二人を少しだけ睨むとサッと顔を逸らして、トワと妖精達の囲碁に集中しだした。
「こほん。それよりエーコー様、本当に鬼達には何もなさらないのですか?」
「うむ、奴等には植林? なるものをさせるとスノーが言うておったからな」
「若木を植えていって、日の光なんかも考えながら育てるってヤツだよね」
「あぁそうだな。間引きで切る木は俺達が加工したり再利用したりするんだそうだ」
「なるほど、それなら良い循環が出来そうですね。無駄に木が切られないのなら私達が反対する理由はありませんね」
一姉と呼ばれたロングヘア―の子がパチパチとボウガと駒を動かしている盤面を見ながらも、チラッとエーコーの方を見て言う。
「管理する森の範囲はどうするの? 私達は手伝わないんですよね」
「私はまだ鬼達を信用できません。エーコー様が信頼している人間が関わっていても、私達は良く知りませんし……本当に、信用出来るんですか?」
二人は心配そうな顔でエーコーに目をやる。
周りに居る妖精達が得意げな顔をしながら、二人の前まで寄って来た。
「二姉、大丈夫だよ~。スノーは優しいし面白い子だよ」
「三ちゃん、森の被害を最小限に抑えられたのはスノーの御蔭だよ。信じてあげても大丈夫だと思うな」
「村に居る鬼達は良い奴ばっかりだぜ」
「二人は森の中に引きこもってるから知らないんだよ」
「良い子だから今度遊びに来た時にでも会ってみれば?」
花を植えたり、ウサギ達に負けたりしている姿のスノー達を見ている妖精達に何時の間にやら、どこか守ってあげたくなる存在として認識されていた。
妖精達に言い寄られてタジタジになっている二人を見て少しクスッと笑いながら、ボウガもエーコーも大丈夫そうだと、将棋の駒をお互いに動かし出す。
「ぬ? その駒は後ろには下がれないのか? それだと取られてしまうぞ?」
「良いんですよ、コレで」
「ぬぅ、小癪な」
エーコーは眉間にシワを寄せて、盤上と睨めっこしだす。
「ここ、かな?」
「あ~、石とられちゃった⁉」
「だからそっちに置いたらダメだって言ったのに~」
「囲んだら取られるんですね」
「こういう遊びを考える子達か~、確かに会ってみたいかも」
「そうです。今度、会いに行ってみますか。その時は森の管理を一姉様達に丸投げしてしまいましょう」
「さんせ~」
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