【オンライン】221話:鬼ごっこと修業のやり方(9)
「他の属性はどうやって覚えるの?」
シュネーは早く他の属性も使いたいみたいで、ティフォに擦り寄っていく。
「火だったらお湯を作る事で覚えられるぞ。ついでにゆで卵なんか作れば料理もついでに覚えられる。と言っても、あと一時間くらいは無理だろうけどな」
〈なんで?〉
「マジックポイントがゼロだからでござるよ。ゲーム時間で約一日くらいが自然回復の目安なんだな。もちろん早くにMPを回復する方法も色々とあるでござるが……今はマジックポーションなんて高価なモノはないんだな。それにスノー姫とシュネー妃はファーマーでござるから、自然回復速度の強化は装備依存になるんだな」
ガウの説明からすると、他の職業だったら自然回復も鍛えられるんだ。
「魔法を主体に使う人達は大体が精神強化を軸にゲームをプレイしてるんだぜ」
ティフォが自慢げに言う。
「サクラはそっち系の職業?」
「そうだね、ムーンもこっちよりだよね」
「正確には違うのよ。スズメちゃんは……置いておいて、ムーンちゃんは持久力を鍛えた方が良いわよ。魔力よりも集中力や持久力を伸ばすと、技の連射や精度、威力なんかも上がるのよ~。連続技や組み合わせなんかでも同じね」
前衛が肉体強化がメイン、後衛が精神力という事になる。
ただ、その中間がムーンちゃんみたいな職業で、精神力寄りではあるものの、実際に鍛えるのは持久力がメインらしい。
「なんで私は横に置かれたのでしょうか?」
スズメちゃんが手を上げて半目になりがら僕等を見てくる。
「お前の場合は力と持久力をメインに上げていれば良いだろう。言うなれば中距離アタッカーっていう感じの立ち位置じゃないか?」
「絶対に魔力なんて上げないでほしいんだな、酷い未来が一瞬だけ垣間見えたんだな」
「え~、ド派手な大技で一発逆転が楽しいんじゃない」
そんなスズメちゃんの言葉を聞いて、ティフォとガウは顔色が悪くなっていく。
「スズメは最終的に魔弓を目指すんだもんね?」
表情は変わらないけど、声のトーンは何処か楽し気にいうムーンちゃんが言う。それを聞いてしまった二人は更に顔色を青くしていった。
「さて、少し休憩したら次は麻雀牌を作るぞ。ちなみに土魔法の習得な」
僕等が少し休憩している間に、ボウガさん達や妖精達がある程度の作業を進めておいてくれるそうだ。木や竹を牌の大きさくらいに切り分けてくれる手筈になっている。
僕等がやるのは研磨の作業で、やり方は風の習得をした時と大体は同じだ。
三脚だった場所が、研磨作業をする器に変わるだけである。
「また、黙々と作業するんだね」
さっきまでの元気は何処に行ったのか、シュネーが急に死んだ目に早変わり。
〈僕は割と好きだけど?〉
「私も……好きかな?」
ムーンちゃんも黙々と作業するのは嫌いじゃないらしい。
ただ、彼女の場合は誰よりも速くにマスターして終わりそうな気がするけどね。
「まぁ、皆でお喋りしながらやっていれば早く終わるでしょう」
「お姉ちゃん以外が教えてくれるんなら、もう何でも良いや」
「使える魔法があるだけでも色々と便利でござるからな、拙者は最後まで付き合うでござるよ。大丈夫、逃げたりしないんだな」
休憩と称して、次にログインして来ないなんて事をしたら、後が怖いからだろう。
〈僕等を巻き込む為に色々と考えたね。ティフォ〉
「当たり前だ。俺一人でやってられるかよ。手伝わせる口実に修行を混ぜれば、お前らを逃がさないで済むからな。損な話じゃあ無ければ乗って来るだろう」
ドヤ顔で言われるとちょっとムカつくけど、確かに面白い趣向ではある。
僕が言い返せないのを見ると、ティフォは更に上機嫌になっていく。
ゲームの事になると、どうして言い返せないんだろう。リアルの方なら僕の方が何時も優位な立ち位置だというのに、ちょっと悔しいな。
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