【オンライン】206話:新しい開拓地(5)
後は鬼達に何をして貰うかを決めないといけない。
「鬼達には鉱山に行ってもらってはどうです? チームで行けば安全に石材や鉄などを採掘して来れると思いますよ。力もあり戦闘も熟せますから適任ではないかと」
説明書とモンスターデータを見てみると、彼等を向かわせているだけで道の下地が出来るみたいだ。コレで余ったゴーレムが鬼の集落から鉱山までの道を倍の速度で作る事が出来るようになる。
〈良いですね、ズナミをリーダーにして、採掘班と護衛隊で戦闘しながら行く感じでお願いしようかな。出来るかな?〉
鉄が手に入れば、今使っている農具や武器に防具と古いモノを新しく出来る。
鍛冶職人のタムさんにお願いすれば、良い道具が揃いそうだ。そのついでに荷車にスプリングを取り付けて貰おうかな。
ゲーム慣れしてないっていうのもあるんだろうけど、スズメちゃんが乗り物酔いしたのには驚いたな。道の舗装と馬車の揺れが少なくなれば、人の出入りも増えるだろうしね。
「スノー、思考中に悪いんだけどさ。一人の世界に入らないで、可愛さを振り撒かないでよ。ボクとしては見てて楽しいんだけどね、色々と複雑な気持ちになるから」
シュネーに頬を引っ張られて、やっと周りの様子に目がいった。
カミルさんはうっとりとした表情で愛でる様に僕を見ていて、ズナミは瞼をパチパチとさせ、僕と目が合うと慌てて視線を逸らされてしまった。
「それでは私は水路の方に取り掛かりますかね。水回りは私が責任をもってやっておきます。住宅地になる場所は決めて置いてくださいね」
それだけ言い終えると、カミルさんはエーコーさんに会いにいくのか森の方角に向かっていった。一人で大丈夫なのかな。
鼻歌を奏でながら、一人森の中へと消えていってしまった。
「それでは我も準備に取り掛かるゾ。戦闘が得意なモノ、採取や採掘が出来るモノを連れて鉱山に行ってみようと思う」
〈うん、よろしく。鉱山が情報や採掘できるアイテムなんかを教えてね〉
「分かった、集落の方はよろしく頼んダゾ」
石材が安定して手に入るようだったら、こっちの集落にもゴーレムを派遣して貰う。
「おぉ、やっとるな」
「爺殿でござらぬか、何ゆえコチラに⁉」
ダイチお爺ちゃんとハーナさんが揃って鬼の集落に顔を出した。
「な~に、畑仕事を手伝いにな。初めから作るっていうなら人では大いに越した事はないだろう。柵作りだってしなくちゃあならないし、耕すにしたって道具も揃えてやらんとな」
そう言ってダイチお爺ちゃんが取り出したのは、六角形で指先が少し入るくらいの穴が開いた網状のモノを見せてくれる。
干物なんかを干すのにも使いそうな板が付いているけど、何に使うんだろう。
「なにコレ?」
シュネーがツンツンと突きながら、二人に聞く。
「そいつで土を篩に掛けるんさ。スコップやシャベルで土をすくってぶつけてやれば、大きい石を取り除けるだろう」
「ふふ、畑は土作りからしっかりやってあげないとね。良いモノは出来ないからねぇ」
ハーナさんも楽しそうに笑って頷いている。
〈えっと、よろしくお願いします〉
こういうのはプロに任せるのが一番だ。しかもベテランという強すぎる助っ人だ。
「弟子たちにまだまだ教えないといけない事が多くてな~」
ダイチお爺ちゃんの言い方は何処か面倒というニュアンスが混じっていたけど、どう見ても教えるのが楽しくてしょうがないという感じが伝わってくる。
ウサギさん達もダイチお爺ちゃんが来てくれて嬉しそうにしている。
「ほれ、オメェさんらも何かやってみっか?」
遠巻きに見ていた鬼達に、ダイチお爺ちゃんが声を掛ける。
「しかし、自分らがソコに入ると土が……」
申し訳なさそうに一人の鬼が言うと。ダイチお爺ちゃんは顎に手を当てて考え始めた。
「そんじゃあ、別のやり方で育ててみっか? そっちはハーナが詳しいからのう」
「任せなさいな、ほれこっちにおいで、まずは鉢植えを用意しないとね~」
お爺ちゃん達による農業の授業が始まってしまった。
「本当に出来るのかな? 何を育てる気なんだろうね?」
「拙者に聞かないでほしいんだな」
〈イチゴかな、アレなら鉢植えでも育てられるし、階段状にすれば鬼達でも作れそう〉
鉢植えを使うって言ってたし、小さな果物か花を育てるんだろうと思う。
とにかくコレで、食料関係は安定して色々な種類が作られそうだ。
衣服に関してもケリアさんが作ってくれそうだし、問題はなさそうかな。
後は住処をどうするか……だね。
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