【オンライン】198話:繋がった道と荷馬車(道中)




 中央都市ことピースガーデンとグランスコートの中間辺りで今現在、少しの休憩をしている。


〈ゆっくり歩いていこう〉

「そうだな、それが良いだろう」


 スズメちゃんとサクラちゃんが、荷馬車の揺れに耐えきれずに酔ってしまった。


「此処からなら地面もしっかりと舗装されているから歩きやすいしね」

「二人ともひ弱だね?」


 シュネーはあからさまに煽りで、ムーンから無意識だろう言葉のナイフが飛んでいった。酔って道橋で休んでいる二人は納得のいかない顔をしている。


「なんでリアルでひ弱なムーンに……無性に悔しいんだけど」

「こういう時に双子なのに違うって、納得できないよね。絶対にムーンの方がひ弱でしょ」


 普段からインドア派なムーンを見ている僕も、二人の気持ちは解る気がする。


「此処まで道が出来ていたのね~、ゴーレムちゃん達っては本当に働き者ね」


 もうイベントも終了して、またゴーレム達が道作りに励んでいる。

 パニアの力が届く様にと、点々と台座が置かれている。


 ただの台座ではなく、街灯の役割も果たしてくれる優れものだ。道全体を照らせる訳ではないけれど、道から外れないくらいの目印にはなる。


 ちなみに台座が魔物除けとして機能しているので、モンスターが舗装された道に湧くことはなく、安全に通れるようになっている。


 酔っていないティフォやガウは荷台に乗って、伸び伸びとしている。

 ムーンは僕の隣に座って、馬達の様子を楽しそうに見ているようだ。


 荷車を引いてくれる馬達はゆっくり移動するなら背中に乗れという感じで、僕の方とチラチラと見てくるので、少しだけ彼等に乗せて貰う事にした。


〈それじゃあゆっくり行こうね〉


 首水を撫でる様に軽く叩きながら、進む様に促してみる。


「はぁ、大分楽になった」

「アタシはまだダメ」


〈ニンフィ、揺らさない様に丁寧に運んであげて〉


 任せろという感じでサクラの元まで飛んでいき、乗りやすい様に地面スレスレで停滞しながら、自分に座らせると少しだけ浮いて、荷馬車の隣を水平移動していく。


「ふぁ~、ありがとう」


 動き出すと微かに感じるそよ風が心地良く、ゆっくり慎重に飛んでくれるからなのか浮遊感も無く、画面酔いも大丈夫そうだ。


「次は私だからね」


 まだ自力で歩けるスズメはケリアさんに見守られながら、ゆっくりと歩く。


「こう見ると随分と変わったのね~。道が出来るだけで景色も変わるのね」


 道にはモンスターが湧かないけれど、少し外れた草原地帯には普通に魔物達が居る。


「こうして移動していると、広い動物園の中を移動してるみたいなんだな」

「どちらかと言うと自然公園やアフリカの雨期で見れる動物?」


 分かるような分からないような。


 僕はそういった場所に行った事が無いから良く解らないんだよね。


 そうやって景色を楽しみながら移動していると、一体のゴーレムが僕等に近付いてきた。


『アルジよ、セキザイがタリナい。ホジュウしないと、ミチがツクレナイ』


〈そっか、もうそんなに減ってたんだね。帰ったらすぐに補充しとくよ〉


『ソレまで、ワレら、ドウスレバいい?』


〈村の人達を手伝って上げてよ。まだ家を建てるとか塀の建設とかあると思うから〉


『リョウカイ、した』


 隣をノシノシと歩いていたゴーレムが道脇に反れて、台座の近くで見守り像として動かなくなった。アレはいざという時の為に間隔を置いて設置してあるゴーレムだ。


 道に何らかのトラブルで入り込んだモンスターを処理する為に居る。舗装された道に悪さをしようとする人にもお仕置きも出来る代物だ。


「交代! 私もその子に乗ってみたい」

「ふぅ、しょうがないな~」


 しばらく休めたサクラが今度は歩いて、スズメがニンフィに乗る。


「モフモフだ~。雲に乗ってるみたいだね」

「だよね、乗ってるだけでもすっごい気持ち良いの」


 ニンフィは褒められて嬉しそうな顔をして、僕を見てくる。


 ただ、それを見ていた馬達が何故か対抗意識を燃やして、僕を揺らさなように気を使って進み始めた。後ろの荷馬車にも気を使いながらニンフィにも負けないと主張する。


〈ふふ、ありがとうね〉


 そんな馬達が可愛らしくて撫でながらお礼を言う。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る