【オンライン】181話:イベント騒ぎは大騒ぎ(終了)



 周りの人達が一斉に抜刀して、僕や大鬼さんに対して敵意を向けてくる。


「とにかく、あのデカいのを倒すまで協力しようぜ」


 ネグがニヤつきながら悪い笑みを浮かべて僕を睨んでくる。


〈……どうしよう〉

「ボクに聞かないでよ」

「ガァウ」


 川の中心にいるせいで大鬼さんも身動きが取り難く、武器も流されてしまっている。


「今度は不意にはやられないぞ」

「良い男達に囲まれるのは悪い気はしないけど、ちょっとばかり不味いわね」


 ケリアさんが居る方ではヴォルマイン側から来た人達に囲まれていて、簡単には抜け出せそうにない。ミカさんとも分断されてしまっていて連携も取れないだろう。


「いや~、悪いエイタ。遅れて来ちゃったけどタイミング的にバッチリじゃね?」


「あ、あぁ。良いタイミングだよ」


 ネグ達がいるジャンシーズ側の方ではティフォや他の仲間達も居たけれど、先に死に戻りしていた仲間の一人がタイミング良くなかまを引き連れて来たせいで、形勢的には不利な状態になってしまっている。


 ヴォルマインとジャンシーズを合わせた数の半分くらいしか此方の味方は居ない、それに加えて川を境に分断されてしまっている。


「この人数差じゃあ勝負になんねぇだろう。さっさと降参しちまいな」


 ジリジリと少しづつ近付いてくる。


「ウゥ~、ガァアアアァアアァ‼」


 急に叫び出した大鬼さんの声にビックリしながらも、両手でしっかりと耳を塞いでいないと鼓膜が破れそうなほどだった。


「はっ、急にどうした――」


 ネグがそう口にしながら、飛び掛かろうとした時に地響きの様な物音が聞こえてきた。


「「ウガァアガアァ」」


 森の方から鬼達と彼等の陣地に残っていた仲間達が一斉にこっちに向かって走って来ていた。村の方からは戦闘蜂や精霊にウサギさん達。それに村人の方達が色んな農具や武器を手に持って大声を出しながら突っ込んできている。


「オラお前ら⁉ ウチ等の癒しになにをしとるんじゃあワレ~‼」

「我らのリーダーに手出しをしたらどうなるか、思い知らせてやるよ」


 何時も優しい笑顔で露店を開いている人が、鬼の形相で誰よりも速く走り先頭で皆を率いている。


「っち、こうなりゃあボスだけでもぶっ倒すぞ野郎ども!」


 ネグの慌てた掛け声に釣られる様にジャンシーズの人達が一斉に僕等に向かって飛び掛かってきた。それに釣られる感じでヴォルマイン側にも動きがあった。


「ま、待てお前等⁉」


 ティフォに好意を寄せているリーダーさんの掛け声を振り切って、焦ったようにネグの掛け声に合わせて飛び込んでいってしまった人達が大勢いた。


「ヤバいってスノー、どうしよう⁉」

〈どうも出来ないよ!〉


 未だにグランスコートで初めて会ったウサギさん達に勝った事が無いんだから、それよりも遥かに強いであろうプレイヤーの人達に勝てる訳が無い。


 ギュッと大鬼さんの横顔に抱き着く。


「よっと。簡単には行かせないんだな」


 何時の間にか起きていたガウが真下から飛び上がってきて、ネグ達の前に立ち塞がった。


「はっ! お前は逃げるしか能がないデブだろう。何が出来るって言うんだよ」


 ネグがガウを蹴とばそうとした瞬間に、体を回転させてネグの脚を掴んだ。


「その通り、拙者は逃げる事や避ける事に特化している。でもそれが弱いとは限らない」


 ニヤっと笑い、ネグをそのまま振り回して周りの人達にぶつける様に全員の態勢を崩しにかかった。


「このっ! 放せ⁉」

「仕方ないでござるな、流石に大剣の重さがあって疲れるんだな」


 言われた通りにガウがパッと手を離すと、殆どの人を巻き込んで川に落とした。


 大鬼さんも僕が顔に張り付いている事を確認すると、残った人達を狙って大きな手を広げて水の中に叩き落とした。


 ヴォルマイン側の人達はミカさんとケリアさんに叩き落とされていた。


 ネグが煽らなければ、二人を包囲しつつ此方に攻撃が届いたかもしれない。


「形勢逆転って所かしらね」

「お、俺達は別に敵対したかった訳ではない⁉」

「それは、貴方だけの意見では?」


 ミカさんに言われて、リーダーさんは何も言えなくなって俯いてしまった。


 ネグせいであっちこっちで小競り合いが発生していたが、森や村から駆け付けてくれた仲間達が集まった事で殆どの人達が散り散りに逃げて行った。


 モンスター達は逃がすまいと、鬼達と一緒に逃げたプレイヤー達を地の果てまで追いかけていった。戦利品という感じで食料や宝石をモンスター達が持ち帰ったとイベント終了後に少しだけ話に聞いた。




《ヴォルマインと【ティフロポディカス族】は敵対関係になりました。都市国家【ポディカス族の都市】への道は開かれましたが、全ての敵がアクティブ化、プレイヤーに対して襲い掛かって来る様になります》



《続いて、ジャンシーズと【セイレーン】も同様に敵対関係になります。都市国家【アトランティス】への道が開かれましたが、周辺に存在するモンスターは全てアクティブ化。プレイヤーに対して襲い掛かって来る様になります》



《最後に、フォレストヒルと【プネブマ】は関りを持たなかったため警戒(強)になります。都市国家への道は閉ざされたまま、周辺のモンスターはアクティブ化はしますが、積極的に戦いは仕掛けてきません》



 イベント終了の合図と共にプレイヤー達に対してアナウンスが流れた。




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