【オフ】182話:乙女達の参戦と襲撃



 ズィミウルギアから戻る時は何時も琥珀が主体で起きるから、何時も目を覚ました時にはリビングで皆に囲まれている。


 はふっと小さな口が勝手に開き、欠伸が漏れ出てしまう。


「ふふ、遅いお目覚めね」


 母さんが茶化すように笑いながら言う。


「こんな時間までずっとやってたもんね。ズルいんだ」


 桜花ちゃんは僕にずっと構って貰えなかったからか、頬を膨らまして事あるごとに僕を突いたり、擽ってきたりと悪戯を仕掛けてくる。


「体の年齢的には私達と同じ? いやもうちょっと若い?」


 それに便乗して葉月ちゃんも桜花ちゃんと連携して僕を弄ってくる。


〈く、くすぐったいってば〉


 いつもは助けてくれるはずの小鳥ちゃんは、どういう訳か少し離れた位置でノートパソコンと睨めっこをしながら唸っている。


「今更グチグチ言ったってしょうがないでしょう。それよりもやっと私達も出来るようになるのよね。何か情報ってないの?」


 小鳥ちゃんが誰よりも興奮気味なようだけど、桜花ちゃんも葉月ちゃんも慣れた様子で総スルーして、僕に聞けという感じで盾にする様に突き出されてしまった。


「このゲームは情報が制限されてるから、ネットで探すよりも友達に口で聞いた方が早い」

「PⅤは見たんでしょう」


 僕等がイベントで走り回っている時に小出しで第一弾、第二弾と色々なpⅤ映像が公式から発表されていたらしく、そこには都市国家がチラッとだけ映ったりしていた。


〈僕の所は鬼達と同盟関係になったみたいだから、結構簡単に行き来出来るかもしれないね。あとコレって鬼人じゃない?〉


 イベント終了後に公式から流された映像では、角っぽいモノが額から出ている人が居た。捕らえた鬼を捕虜にして懐柔した奴等が変わった時の姿に似ている。魔物である彼等は緑の肌をしていたけれど、映像に映っている人は色白で綺麗な女性だ。


「ねぇねぇ、他には違う種族ってどんな感じなの?」


 小鳥ちゃんは僕の右腕に全身を押し付ける様に抱き着き、キラキラとした瞳を向けてくる。それを見ていた双子も次々と僕に引っ付いてきた。


「私も知りたいです」

「同じく?」


〈わ、分かったから。皆くっ付き過ぎだから!〉


 体を捻ったり無理やりに逃げようとしたけれど、どうやら彼女達よりも僕の力は弱いらしく、振りほどく事も出来なかった。


 仕方なく、僕はそのままで話を進めるほかないようだ。


〈僕等の居るグランスコートに居るのは、妖精にドワーフかな?〉


 大勢のNPCが引っ越して来ていたけれど、その全ては把握しきれていない。

 ボウガさんに聞けば色々と分かるかもしれないな。次にインしたら聞いてみよう。


「へ~、ドワーフも居るんだ……私達も使えるかな?」

〈確か種族変化はゲームを進めていかないと無理だったと思う〉


 説明書にそんな感じの事が記載されていた気がする。


「今の所、種族変化の方法は見つかってない?」


 僕の話を一番静かに聞いていた葉月ちゃんが顔を間近に近付けて聞いてくる。


〈う、うん。……あのね、近いってば〉


 危なくキスをする所だったじゃないか。


「……キスくらいなら良いよ?」


 じ~っと見つめられながら、そんな冗談を言われた。

 一瞬にして僕の頭に血が上っていき、顔が熱くなっていくのが良く解った。


「それじゃあ次は私でよろしく」


 桜花ちゃんが耳元で吐息交じりに、追撃してきた。


 熱量の限界を迎えた機械みたいに、ボフンと爆発して湯気を出しながら意識が朦朧として、カクッと力が抜けていった。




「ちょっとそういう抜け駆けは禁止でしょう。見なさいよ完全に気を失っちゃった」


 小鳥が翡翠と双子を離そうと躍起になっている。


「そうそう、もうちょっと翡翠はデリケートに扱ってよね」


「む~、琥珀が出て来ちゃったよ」


「まぁ今のは葉月が飛ばし過ぎだと思うな~」


「追撃を入れたアンタが言うな」


「家の子は何時もモテモテで羨ましいわね~。ほら皆も手を洗ってきなさい」


 メイドさんと執事さんが夜食を机の上に並べていく。




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