【オンライン】168話:イベント騒ぎは大騒ぎ
初っ端から予想外なことが起こってしまい、僕等が手出しできない状況だ。小鬼達は窒息というダメージが継続的に入っているようだけれど、ボスはどういう訳かダメージが入っていない様子だった。
体力ゲージが減る様子が一切無いのだ。
〈なんでかな? 鬼のボスは息が吸えてるっていうことだと思うんだけど〉
「シュネーが戻ってくるまで待つしかないな」
頭の上がちょっとだけ寂しく思ってしまうのは、いっつもシュネーが乗っかっているせいだろう。妙に頭が軽くなっていて違和感が出始めている……慣れ過ぎたかな。
「大丈夫よスノーちゃん。別に戦闘をしに行ったんじゃないんだから」
ケリアさんに頭を撫でられてしまう。
〈べ、別に心配をしている訳じゃあないんですけど〉
「あらそうだったの、ふふ。ごめんなさいね」
僕の言葉はケリアさんには伝わっていない気がする。
だって彼は未だに頭を優しく撫でてくるのだから。
そんなに表情に出てたかな~、最近は何か簡単に表情に出る様になったのだろうか。
自分で顔を触って揉みながら、ポーカーフェイスを意識してみたが鏡も無いのでどうも上手くキリっとした顔になった気がしない。
「何やってんのさ、スノー?」
頭の上からシュネーが真顔で話しかけてきた。
〈……気にしないで〉
シュネーが来たって事はガウとアズミルもすぐに帰って来るだろう。
ミカさんは別のパーティーと連携を何時でも取れる様にする為に仲介役として、包囲している人達の元へと向かって貰っている。後はヴォルマインの人達に言伝も頼んだ。
〈それでどうだったの?〉
「まだ水は溜まり続けてるんだけどね、中隊のリーダー達は中央でアタフタしてたよ」
「それじゃあボスは何処に居るんだろうな」
「特別大きな鬼は見なかったのかしら?」
人差し指を顎に当てながら「ん~」とシュネーが塀の中を思い出しているようだけれど、横に首を振って思い当たらない様子だった。
「ただいま戻ったでござるよ」
「はぁはぁ、なんでその体系で私よりも早いのよ。ほんっと妙な感覚になるから止めて欲しいんだよね、せめて私の後ろを走りなさいよ。こっちがデブになったみたいな錯覚に陥るんだけどさ、これって私のせいなの? スピードってそんなに必要? タンクよねガウって」
速さに関してはケリアさんを優に超えるみたいだし、走って移動した場合はガウが手加減して走らない限りは遠ざかっていく一方だ。
あの真丸した体形が自分よりも速く走り去っていく姿は、女性にはかなりキツイという事が最近になってだが、僕も何となく分かってきてしまった。
「それで、どうだった?」
〈なんか鬼達もかなり戸惑っているのは分かるんだけど、それだけじゃあないよね?〉
「うむ、主な原因は群れのリーダー、つまりボスのいる大きな建物があるのでござるが……そこの扉が水圧で明かないみたいなんだな」
「水かさが腰以上もあるせいもあってか、鬼達はまともに動けない状態で助けようにも助けられないって感じでしたね。そろそろ痺れを切らして扉を叩き壊そうとするんじゃない」
アズミルが言い終わるくらいに、タイミング良く、ガツンガツンッ――‼というけたたましく何かを叩き壊そうとしている音が響いてくる。
「ほらね、アレで武器が消耗してくれれば儲けもんだね」
敵陣内でボスらしき鬼が怒りに満ちた叫び声が僕等の元まで響き渡る。
「うるさい⁉」
大きな太鼓の演奏を間近で聞いた時みたいに、音が体を振動させて抜けていく感覚が全身を襲っていく。そのせいで自分の体が強張っていくのが良く解る。
「あらまぁ、イヤなギアを使うじゃない……ちょ~っと耳を塞いでてね」
ケリアさんが僕等にウィンクをする。
皆が一斉に耳を塞いだのを確認すると、長く息を吸い込み始め。鬼のボスに負けぬ程の大声を敵陣に向かって叫び出した。
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