【閑話】決戦前夜の集団





 リアルの時間は深夜。


 ゲーム内も夜で中央大広場に作られたキャンプファイヤーを囲う十人は軽く超える集団が炎を中心にして丸く囲う様に座っている。


 村人がコッソリと他所からみると、謎の集団が儀式でもしている様に見える。


「最終決戦前夜。我々グランスコート陣営はどう動くべきだろうか、諸君の意見や考えを是非とも聞かせてくれ。あの女神達の笑顔を守る為に、皆の力を貸して欲しい」


「同時進行で、此処に集まれないメンバーには掲示板を通しての参加をしてもらっている」


「……一つ聞いて良いかな?」

「なんだ兄弟?」

「何でも聞け」


「なんで俺達が中心になってんだ? いつデスモスを作りやがった⁉」


 デスモスとはこのゲーム世界で何処に居ても会話が出来る特殊な称号アイテム。リアルでいうならサークル活動の印みたいなモノだろう。リーダーや服リーダーなどが、デスモスという宝石みたいな石を渡す事でメンバーと認められて、どんな場所に居ても携帯電話の様に話す事が出来る。


特殊な宝石で、契約者と権限者という立場の宝石は同じ印を持つ宝石を生み出す代物だ。そのため簡単には買えない程の金額で中央都市のギルドで売られている。


「ふっ、もちろん皆で出し合って買ったのだよ」


「お前が言うと誰かを脅して買ったみたいなんだよ、自分の顔を考えて発言しろよ!」


「まぁまぁ、露店三兄弟よ。今回の議題を進めよう」


「そうそう些細な事じゃない。そんな自分だけ知らなかったからって拗ねないの」

「ふふ、私はそのまま続けて貰っても構わないのよ。ぐふぅ、想像が捗るわね」


 ねっとりと絡みつくような視線を送られて、男三人はお互いに距離を開けて黙って座り始めた。その様子をみて少女が小さく舌打ちする。


「何時の間にか人数も結構な数ね」

「イベントから一気に増えましたからね」

「新参者の自分にはその辺は良く解らないですがね」


「だが君も選ばれた信頼できる仲間だ。スノー様にティフォナス様を見守りたいという心に偽りなどないのだろう」


「勿論ですよ! あの二人には何時も癒されてますからね」

「だが今回は一大事だぞ。何も考えずに突っ込んだ奴等のせいでな」


 一気に火を取り囲んでいるメンバー全員が炎に向かってブツブツと怨み辛みを言う。


「皆、落ち着くんだ!」

「はっ⁉ すまないリーダー。危なく闇に落ちる所だった」

「危なくコイツと同じ様な人間になる所だったわ。中二病は少なくて良いのに」

「我が同氏の悪口は言わぬことだな、お前もこちらに引き込んでやるぞ」


 黒い魔女っ娘の少女に、黒装束に身を包んだ数人が喧嘩というじゃれ合いを始めた。


「頼むからこれ以上は厄介なメンバーが増えない事を祈る……っていうか、変に濃いんだ此処に居るメンバー全員! もっとまともな格好をして来いよ」


「それよりもよ、マジでスノーちゃんやティフォナスちゃん達に頼り過ぎなのをどうにかしないとな、大人の面子も丸潰れだぞ。おんぶに抱っこされてちゃあデスモスを作った意味も無くなっちまうぜ。守られてるのが俺達だなんてよ」


 中年騎士の言葉で、今まで騒いでいた者達全員がピタッと静まり返った。


「村の防衛は最低限で良いんだよな?」

「任せてくれ、絶対にこの村には指一本も触れさせねぇ」


「攻めは僕のモグを使って見ないか? そこにウサギ達のリーダーが加われば鬼達の施設に潜り込めると思うんだけど」


「アンタの子ってモグラのモンスターだったわね」


「地中からの攻撃には制限が掛かるけど、相手陣地に侵入させるくらいな出来ると思うんだ……ただ、隠密系のスキルなんてないから、その部分をどうにかしないとだけど」


「木造の建物だよな、俺の子も連れて行ってあげてくれないか? ホワイトなら木造建築の床を食い破れると思うんだよな。流石にリアルみたいに基礎から作ってないと思うし」


「シロアリなんてよく仲間にするわね……まぁ、今回はかなり役に立ちそうだけど」

「昆虫を好きになれよ、益虫だって居るんだからさ。蜘蛛とかカッコイイだろう」

「お願い、それ以上は近付かないで。虫はダメなのよ」


「俺もお前には近づかないで欲しいがね、そいつ等は常に俺の子達を捕食対象にしか見てないんだよ、こえ~んだよ!」


 リーダーが咳払いして、二人の言い合いをすぐ止める。


「あとは森での戦いだ。何か良い案はないか?」


「昨日さ、地上波でやってた映画を見たんだけど、元軍人の暴れる感じのやつ」


「あ~、アレって森で色々と作って倒してたな」


「後は、丸太とか積み上げて転がすか?」


「採用で、とにかく俺達に出来る事をやっていこう」



 こうしてスノー達の居ない所で、大掛かりなトラップの計画が進んで行く。




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