【オンライン】148話:イベント騒ぎは大騒ぎ



 まだ水路は完成していないが、周りを守る為の塀は殆ど完成している。


「以外にも早く出来上がったな」


 後はしっかりと乾燥させて、仕上げの上塗りをしていくだけとなっている。

 魔法を使うとこうも早いとはね。

 インベントリもそうだけど、やっぱり使えると便利だ。

 現実でもあれば良いのにと思ってしまう。


「タムさんも協力してくれたし、何よりもエーコーさんが暴走したみたいだし」


 塀の支柱となる鉄の杭を作ってくれたのだ。

 御蔭でしっかりとして、防御力も高い塀が完成しつつある。


「草木も手入れして、見栄えの良い感じにするって息巻いてるからね」


 前に来た時は雑草なんか生え放題だったのが、今ではしっかりと草刈されて綺麗な庭が出来上がりつつある。水路をちょっと弄ってカーブなんか追加されてたりする。そこに石橋を掛けるとダイチお爺ちゃんが言い出して、エーコーさんを連れ立ってパニアに相談しに行ってしまった。


 ちなみに、泉の祠の横にパニアが能力を使える台座まで用意されている。

 コレはイーゴさんが森の魔物研究にと作ってくれたものだ。


 この辺りが自由に行き来が出来るようになれば、色々と捗るんだそうだ。


「なんで内装に着手するんだな。まだ戦いは終わっていないんだな」

〈一応は快適度って項目があるから、ソレが上がれば何かしらの恩恵はありそうだよ〉


 陣の快適度が上が今はグングンと上昇していって、現在のレベルは5になっている。


「爺ちゃん達が乗り気でさ、京に負けず劣らずのモノを造るって言ってるんだよね」

「この世界で枯山水庭園とか見れるかしらね」

「そのうち、此処に城が建ちそうで怖いんだな」

〈流石にそれは無いでしょう……ないよね?〉


 メニューを開き、チラッとだけ自陣の項目を覗き見ると、何時の間にやら《固定砲台の設置可能条件を取得》や《施設拡張機能条件をクリアー》などのメッセージが並んでいる。


 なんか途中からピコンピコンなっていると思ったら、コレの音だったらしい。


「俺に聞かないでくれ」


 ティフォに見せると、見たくないという様に視線を逸らされてしまった。


「ちょっと良いかい? 君達が此処のリーダーで合っているかな?」


 黒装束に身を包んだ男性が僕達に手を振りながら近寄ってくる。


「この人、誰?」


 顔だって半分隠れているんだから誰かなんて分かる訳がない。


〈知らない。リーダーではないですが、僕になります?〉

「疑問形にするな、お前だろうがよ」


 ティフォがすぐにツッコミを入れてくれる。


「あら、久しぶり……に、なるのかしらね」

「えぇ、ケリアが抜けてからは会っていませんからね」

「ケリアんの知り合い?」


 どうやらケリアさんの知り合いのようだ。


「ジャンシーズの攻略班、第二班の副リーダーでござるよ。面識は無いでござるがね」


 ガウは少し警戒をしながら、男性と僕等の間に立つ。


「良く知っているね。私の名前はゲンドウ、メイン職は忍者だ。よろしく」

「ボクはシュネー、こっちはスノー。よろしくね」

〈急にお姉さんぶるな〉

「ティフォナスって言います、テイマーです。よろしく」

「ガウでござるよ」


 其々の自己紹介が終わると、ケリアさんが一歩前に出て行く。


「私の紹介は必要ないわよね。それで、何しに来たのよ?」


「ちょっとばかり報告と言うか、警告というか……まぁ、ウチの若い馬鹿が暴走しそうなんでね。こちらに迷惑を掛けるだろうって話さ」


「はぁ、あの子はまだ懲りてないの? ちゃんと叱らないと駄目よ」

「……わかってはいるが、反発が強くてね。どうにもこうにも上手く回らないだよ」


 ばつが悪そうにしながらも、ケリアさんに申し訳ないと頭を下げている。


〈それで、迷惑って具体的に何をしてくるんですか?〉


 このままだと雰囲気も悪くなりそうだし、話しを進めよう。


「あ~、多分だが敵本陣でボス戦をしていると横から奪いに行くか、こっちに攻め入ってくると思うんだ。その辺は警戒をしておいた方が良いだろう」


「横槍か~、あるとは思っていだけど。実際にやられるとなると面倒だな」

「もうあの子は、そういう所をリーダー達に怒られたって言うのに、また同じことをする」

「面目ない」

〈え~っと、それだけですか?〉


 邪魔されるかなって考えは元々あったし、このイベントでそういう行為が禁止とは書かれて居なかったから、普通にしてくるものだと思っていたんだけれど、違うのかな。


「あ、あぁ。それだけだが……君達はあまり驚いた様子が無いな」


 何故か彼の方が驚いている。


「スノーが元々そういう事を込みで色々と考えてたから、かな?」

「そういや、そうだな」


 シュネーとティフォの言葉に、周りの視線が僕に集中しだした。


〈え、なに? 別に変じゃないよね〉


 周りの皆が少し首を傾げながら、相談しだした。


 ただ、ティフォだけが、

「いや、間違いじゃないけどな。変だとは思う」

 と、ハッキリと答えやがった。

 


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