【オンライン】146話:イベント騒ぎは大騒ぎ
ティフォ達やケリアさん達が敵に突撃していき、前線を崩したと思ったらすぐに何かを放り投げ、敵全体を混乱状態にさせてしまった。
〈ねぇ、アレなに?〉
「え~っとね。資料によるとミカさん特性『怒りの晩酌香』だって。効果は『怒り』『酔い』状態の付与で赤い煙を吸い続けると、より効いてくるそうだよ」
〈その資料はいったい何処から?〉
「さっき貰ったの」
僕がボウガさん達と話している間にシュネーに渡したようだ。
〈ニンフィ、ちょっとだけ高く浮いて。周りの様子を見たいから〉
赤い煙が充満していて、まだハッキリとは見えない。
敵陣地がやけに騒がしくなっている様子は見て取れる。
〈ん~、双眼鏡とかあれば良いんだけど……流石に無いしな〉
そもそも望遠レンズとか作ってる人が居るのかな? 居るとしたらジャンシーズかな、アクセサリーって宝石とかの加工だろうし。
濃く舞っていた煙が晴れてくると、煙の中は大変な事になっていた。
小隊のリーダー格や護衛達が所かまわず暴れ回っていて、敵の陣形はガタガタだ。
赤い煙を怖がった魔法使いが風魔法で吹き飛ばそうとするが、逆に赤い煙の効果範囲を広げてしまっている。そのせいで余計な小鬼達まで巻き込まれている。
「コレってさ、足元を崩さなくても勝てるんじゃない?」
〈僕もそう思う……今回は挟み撃ちで終わらせよう〉
「使わないの? せっかく穴掘ったのに?」
〈有利なら手札を自ら捨てるのも勿体無いって。敵陣を完全に取れるっていう確証だってないんだ。もしかしたら、本陣のボスが強くって押し返されるって可能性もある〉
現に中隊規模の敵たちは考えて動いている様に見える。
何よりも、最初に集めた情報では人と同じく自陣を構築しているのだから、最低限の知識者が相手の仲間に居るか、そもそもボスが賢いかのどちらかだろう。
気になるのはエーコーさんが助けを必要としてるってことも含めれば、油断をして良い様な相手は無いことは確かだと思う。
〈錬金アイテムって、別に錬金術師しか使えないって訳じゃあないんだ〉
シュネーが人差し指を縦て、左右に振りながら首も一緒に横に振る。
……なんか妙に腹立たしいのは何故だろう。
「ノンノン、違うってさ。アライアンスパーティーだから、そのリーダー同士であるなら使用権限が仲間内で渡せるみたいよ。錬金アイテムは錬金術師が仲間に居ないと使えないってさ。補足説明にイラスト付きで書いてあるよ」
じゃんっと、何故かシュネーが誇らしげに見せてきたイラストは、シュネーのイラストで僕に説明をしている漫画が載っている。
少しだけミカさんの性格が分かった。
とりあえず、この説明書は丸めて捨てよう。
「あ、ダメだよ。渡さないからね」
僕が手を伸ばすと、サッと身を引いて躱されてしまう。
〈そいつを寄こしなさい〉
まぁ、実際に取れはしないのだけれどね。
現実だったら引っ手繰ってる所だが、此処では所有者が絶対の権限を持っている。つまり、いくらシュネーの持っているモノに手を出そうとしても、触れる事が出来ない。
「だ~め。コレはボクが貰ったモノなの。お姉ちゃんのモノを勝手にとっちゃあダメだよ」
〈お姉ちゃんとは認めてません〉
思わず舌打ちして、答えてしまった。
「もう、可愛くない舌打ちは禁止です」
可愛い舌打ちなんてないだろう。
〈エーコーさんミ、それにカさん、作戦に少し変更を加えます。地面の穴はそのままで、挟み撃ちだけで殲滅しましょう〉
パーティー内の通信で素早くチャットを送る。
『りょ~か~い。試作品として作ってみたけど、かなり良い感じのアイテムになったよ』
『確かに面白い効果の道具じゃな。こちらも了承した。アレならば足元から崩さんでも挟み撃ちだけで崩壊まで持っていけるじゃろう』
『出るタイミングは赤い煙が晴れてからね。あの様子だと数分は持ちそうだしね』
〈味方にも効果があるようなので、その辺は注意してくださいね〉
作った本人が居るんだから、そんなヘマはしないだろうけど。
『こっちからじゃ煙の晴れるタイミングが難しいから、スノーちゃん、悪いんだけど指示をよろしく』
〈煙の濃さからいって、あと四十秒は必要かと思います〉
シュネーと無駄なやり取りをしていても、まだ晴れる様子が無かったからね。
「それじゃあこっちも、そのタイミングで号令をかけるよ」
〈お願いね〉
「まっかせなさい」
楽しそうに飛び回りながら、今か今かと突撃の機会を待っているプレイヤーや魔物達の元へとシュネーが飛んでいった。
〈ティフォ。戻ってきたらすぐに運搬組に必要物資を工作班の所まで運ばせて〉
「了解、穴を崩さないって言うなら、大荷物を運んでも良いんだな?」
〈うん、問題ないよ。自陣構築の柵とかは早めに渡して欲しいけどね〉
森まで着いたら、そこでまた自陣の構築に防御に必要なトラップなんかも作らないと。
殲滅した場合は時間の猶予が大幅に出来る。
その時間を利用して、一気に泉まで進めたいところだ。
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